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33話 サポート役が私の仕事

モカちゃんが買い物に出てすぐ、私はファンクラブを取り仕切る4人へと一斉送信でメールを送った。

詳しい内容を伏せて、モカちゃんの良いところを教えたい人がいるから、ファンクラブの皆の意見を聞かせてほしいと。


返事を待っていると着信が入る。

仕事が早すぎると思いながら出てみれば電話の相手はソラだった。


『ミケから話は聞いた。無理矢理見合させられる事になって、学園に戻ってくるのも難しいみたいだ』

「モカちゃんも同じ事を聞いたって言ってたわ。それでね、モカちゃんをお見合い会場へ乗り込ませることにしたの!」

『………………は?』

たっぷり間を開けてソラが戸惑ったような声を上げた。

『ハル、お前バカなのか?バカだったな、うん、知ってた』


おい、まて、弟よ。お姉ちゃん怒りますよ!?

勝手に自己完結しないで!ちゃんと考えあっての事だもん!


「ミケくんのご両親に、モカちゃんをプレゼンするの。認めてもらう……にはまだ難しいかもしれないけど、お見合いを中止…ううん、延期にすることくらいは出来ると思うの。延期になったら、後はモカちゃんの本気次第だから」

『…なんだよ、それ。手ぇ貸すなら最後まであいつらの為に動いてやるべきじゃないのか?』

「それじゃ意味が無いって事、ソラなら分かるでしょう」

そう問いかけると電話の向こうは黙り混む、分かった上で私に問い掛けたのだろう。


「…これはモカちゃんの問題よ。モカちゃんが乗り越えるべきイベ……、壁なの。私たちが出来るのは場外での手助けと応援、戦場で戦うのはモカちゃん本人よ」

『……ハル、お前ゲームのやり過ぎ。なんだよ、戦場って』

「あら、間違ってないと思うけど?」


私の中でモカちゃんは財閥の家という敵地に戦いを挑みに行く戦士なのだ。

だから表現としては間違っていない。


「…それに、仮に私たちが最後まで手を貸してしまってはモカちゃん自身が認めてもらえない。それじゃ本末転倒だわ」

『………わぁーったよ』

深いため息と共に言葉が吐き出される。

『なら、俺は何をすれば良い。友達の…ミケの為に何が出来る?』

「お見合いの日程の確認。それとミケくんがモカちゃんを諦めないように、励まして欲しいの。これは貴方にしか出来ない事よ…モカちゃんはこれからミケくんを取り戻す為に頑張るの、まだ諦めてない。だからミケくんが諦めないように、支えて」

『……そんな事でいいのか』

「あら、人の心を動かすのって一番難しいのよ?」

『分かった分かった、ミケの事は任された。…そっちは頼んだからな』

「もちろん」


そう告げると電話の向こうで笑う気配がした。

お見合いの日取り等は詳しく聞き出して連絡すると告げられ、通話が切れる。


同時にファンクラブの取り仕切り役、タマちゃんからメールが届く。

『モカ様の良いところをお纏めしたものが出来上がりましたので、明日学校でお渡しします、楽しみにしててくださいね!』

という内容だ。


仕事早いわ…この短時間でファンクラブ会員達から情報を得てそれを纏める事ができたとか優秀すぎる。

優秀すぎてちょっと怖い。きっとタマちゃんは敵に回してはいけない部類の人間だ。


ふと時計を見れば門限までもう時間があまりない。

門限を越えると、寮の正面玄関と裏口には鍵がかかる。

そうなるとモカちゃんが戻ってこれなくなってしまう、私は電話帳を開くとモカちゃんの番号を呼び出してコール音を鳴らした。







△△


翌朝、ミケくんは登校してこなかった。

学園には体調不良のため休むという連絡が行ったらしい。


ミケくんは今、実家に囚われているのかもしれない。まさに囚われのお姫様だ。


「見合いは明日だ」


放課後の校舎裏。

滅多に生徒が足を踏み入れないその場所で、顔を付き合わせるのは私とソラ、モカちゃんの3人。


「明日……、か」

モカちゃんが噛み締めるように呟く。

「明日の昼、老舗料亭の個室でやるそうだ。そこまでの足は確保した。秋葉、感謝しろよ」


さすがです、ソラたん。私の弟は仕事が出来る子です。一言多いのとふんぞり返ることがなければ100点でした!


「うん、感謝してるよ。弟くん」

にっこり笑いながら、そう述べたモカちゃんにソラは目を見開く。

「…へぇ、素直だな」

「大事な人を取り戻すためなら私個人のプライドなんて要らないもの」


そう告げたモカちゃんの瞳は闘志に燃えているように見えた。

「で、お見合いに乗り込む時の装備は私が朝から準備する。それとこれはタマちゃん達から纏めてもらったモカちゃん自身のプレゼン内容ね」

そう言いながら鞄からA4用紙に纏められた冊子を取り出す。

「この内容でミケくんのご両親に売り込むの。自分は息子さんに相応しい女ですって」

「ミケ自身も援護するっていってる」

「………ミケくん、が?」

ソラの言葉にモカちゃんが目を見開く。

「ただ女からの助けを待ってるような弱いやつじゃないからな、あいつは」

きっと、ミケくんがそう思えるようにソラが何かしら言葉をかけてくれたのだろう。

「…………ありがとう」

ぎゅっと手のひらを握り締めてモカちゃんは呟く。

「まだお礼を言うには早いよ、モカちゃん。私たちが出来るのはサポートだもの、実際にミケくんのご両親と戦うのは貴女一人だから」

「…うん、頑張る……頑張ってミケくんを取り戻す!」


そういってモカちゃんは拳を高く突き上げた。




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