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25話 もふ7つ星!?

イグアナは子供達に触られても微動だにしない。そっと手を伸ばして触れてみると皮膚は固かった。感触は革製のバックと言えば的確に伝わるかもしれない。


「…暴れたり、しないか?」

「大人しいから大丈夫よ」

そういうとソラはそろりそろりと手を伸ばしてイグアナに触れた。さわさわと興味深そうに撫で続ける。


…感触が気に入ったのかな…?


ソラは暫く撫でると満足そうに手を離した。

「大したことなかったな」

「……ソラ、それならあれも触れるか?」

満足げに頷いたソラに虎太郎くんが声をかける。指差す先にいたのは触れあいプールのナマコだった。


「無理」

即答でした。


「クロ、触ってみますか?」

標的がソラからクロくんになったようです。気のせいか虎太郎くんが楽しそうに見える。


コタローくん、どんだけナマコ触らせたいの…?


「どれだ?」

「あのナマコです」


おっとクロくん意外にも乗り気です。


躊躇いなくプールに手を突っ込んでナマコに触れている。強者だ。

「おぉ……!」

何処か嬉しそうな声をあげているので、もしかしたら好きなのかもしれない。虎太郎くんは期待した反応を見られなかったのか少し残念そうだ。

触れあいプールで他の生き物たちを眺めていると、ミケくんとモカちゃんが満足げな顔をして追い付いてきた。


「深海生物めっちゃ格好良かった」

「ねっ!タカアシガニとかかっこよかったし、シンカイウリクラゲは凄く可愛かった!」

「確かにあれは可愛かったなっ!でもメンダコも捨てがたいっ…」

「うん、可愛さで言うと負けてないよね!」


モカちゃん、もうそれ素だよね…?ヒロイン設定何処に落としてきたの!?


「…ミケ、深海生物とか好きだったんだな」

「うん、めっちゃ好きー!かっこよくない?」

ミケくんはにっこり微笑んで首を傾げる。ソラは真顔で首を横に振った。

「俺には分からない」

そっかー、と残念そうに肩を落とすミケくん。耳もへちょっと垂れております。


可愛いわん………にゃんこ!


「モカちゃんも深海の生き物好きなんだ?」

「うん!楽しかったし、何時間でもいれると思う」

そこまで!?と思ったのは私だけでなくソラも同じだったらしい。頬が引きつっている。

「よし、じゃあ次に行くか。迷子になるなよ?」

クロくんを先頭に皆がぞろぞろと後をついていく。まるで引率の先生だ。


クロ先生に連れられてやって来た次のブースは水中トンネルだった。

上と左右が水槽で囲まれているため、魚を下からも見ることができる。

下から見上げる水面はキラキラと光って床や壁に反射していた。

真上をエイが泳いでいくのを見送り、ゆっくりと魚たちを眺めて歩いていると思い切り人にぶつかってしまった。

「わっ…、ごめんなさい!」

慌てて謝ればそれはクロくんだった。

「いや、大丈夫だ。ハルは平気か?」

「平気。次は気を付ける」

「そうした方がいい、転んで怪我したりしたら大変だからな」

軽く注意されて素直に頷く。


自分の不注意で誰かに怪我させたりしたら、大変だもんね…気を付けよう。


暫く進んでいくと水中トンネルを抜けたその先にはレストランがあり魚をモチーフにしたメニューのサンプルが並んでいる。

「少し早いですが、混雑する前に昼食にしますか?」

「そうだな、座れる場所を探すか」

虎太郎くんの提案に6人で座れる場所を探して椅子に腰を掛ける。


然り気無くミケくんの隣にモカちゃんが座れるように気を回した私を褒めて欲しい!

というかずっと深海生物トークしてるからその気遣い要らなかったかもしれないけどな!


そんなことを思いながらも、皆でわいわいと話ながら食べる昼食はとても楽しかった。

食事を終えた私たちは休憩も取りながら午後はのんびりと水族館の館内を回る。モカちゃんとミケくんは深海生物が余程気に入ったらしく、お土産まで深海生物グッズを買うつもりらしい。売店でお土産を選ぶ姿は微笑ましく見える。


私も皆で遊びに来た記念に、何か買っていこうかな…。


売店を端からゆっくり眺めていく。キーホルダーやパズル、記念葉書にぬいぐるみ、魚の形をしたクッキーや焼き印のついたお饅頭等がある中でとても心引かれるものを見つけた。アザラシのぬいぐるみだ。


このアザラシ、ただのぬいぐるみではない。

机に飾れるサイズで愛らしく何気なく撫でてみたらふわりとした手触り、そして軽く押してみれば手を包み込むように優しく沈む、中には芯が入っているらしく自立も可能…。

こんな愛らしいもふもふぬいぐるみ……いや、もふぐるみは買うしかない!

もふもふで、ふかふかで可愛くて…これはもふ5つ星…いや、もふ7つ星!奇跡のもふもふだ!こんな至高のもふもふに出会ったことはない!


私がもふもふアザラシを堪能しているとソラが手元を覗き込んで苦笑浮かべた。

「ハルは本当にもふもふしたのか好きだな」

「好き、大好き!もふもふは癒しだもん」

「へぇ、ハルはそんなにもふもふしたものが好きなのか」

私たちの会話を聞いていたのかクロくんがクスクス笑っている。

「そうなんですよ、うちのハルは小さいころからもふもふ言ってます」

「もふもふが鳴き声みたいな言い方しないで」

「間違ってないだろ?」

「違うー!」

ぺしぺしとソラを叩くと再びクロくんに笑われた。


その後、無事にもふ7つ星アザラシを買うことができました!こんなところでこんな素晴らしいもふを手にすることができるとは!




△△

楽しい時間が過ぎるのはあっという間でもう夕方だ。

寮にも門限がある、夜九時までに戻らないと門を閉められてしまう為そろそろ戻ろうかというクロくんに引率され、迎えの車に乗り込んだ。


モカちゃんをちらりと見れば、思ったよりもミケくんと距離が縮まったようで嬉しそうな笑顔を浮かべている。

私としても奇跡のもふ7つ星に巡り会えたのでかなり満足だ。

女子寮の前で男性陣と別れ、モカちゃんと2人で自室へと戻る。

「モカちゃん、今日はどうだった?」

隣を歩きながら尋ねるとモカちゃんは嬉しそうに微笑む。

「すっごく楽しかった!ゲームでは水族館で交流会イベントなんてなかったから、どうなるか不安ではあったんだけど…ミケくんとも話せたし楽しかったわ」

「モカちゃんほぼ素で話してたけど、ミケくんも楽しそうだったもんね」

「うん、『私』のままでもミケくんに嫌われない事が分かったから良かった!」

部屋の前までくるとモカちゃんにぎゅっと手を握られた。

「今日はコーディネートしてくれてありがとう、ハル。借りた服は洗濯して返すから!」

「私の方で洗濯するから気にしなくていいんだよ?」

「ううん、そこは礼儀として綺麗にして返させて」

その言葉にさすがしっかりしてるなぁなんて感想を抱きながら頷く。

嬉しそうに手を振って部屋の中に入るモカちゃんを見届けてから私も自分の部屋へと戻った。




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