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22話 ガチャ運はそこそこ

コタローくんには近いうちに倍返しすると心に決めて次の売り場へと向かう。


コミックコーナーです!じゃじゃん!

見たこと無い二次元たちが私を誘っております、この絵柄凄く好み!

おおぉ!乙女ゲームのアンソロジーコミックがあるじゃないですか!!くっそ、どいつもこいつも私を誘惑しおってからにっ…

自分で稼いでたら大人買いするレベルでヤバい。

ここは萌えに満ちている、魔の巣窟だ!

大判コミックもあるね。愛蔵版とか完全版とか……お値段が眩しいよ。


気になるものを片っ端から見ていたら、ちらりと見えたものに思わず硬直する。

見えたのは………………腐人向けの…薄い本……。


「ハル?どうかした?」

足を止めた私を心配して虎太郎くんが声をかけてくる。その腕をがしっと掴むと脱兎の如く売り場を後にした。


あれはコタローくんに見せちゃいけない!駄目なヤツだ!!


少年向けのコミック売り場まで逃げてようやく虎太郎くんの腕を離した。

「どうかしたのか?具合でも…」

「大丈夫!ちょっとこっちに気になるものがあったからつい、ごめんね」

心配している虎太郎くんに笑いかけると安堵したように頭を撫でられる。

「そうか、なら良いんだ」


安定の優しさ。

コタローくんの半分は優しさで出来ているようです、残りはもふもふですね、わかります。


「ところで、虎太郎くんはこういうお店…退屈だったり、居づらくない?」

少し冷静になったところで尋ねてみる。私は前世からがっつり染まったオタクだから癒し成分を吸収できるが、ゲームや漫画に興味の無さそうな虎太郎くんは退屈ではないだろうか?


一般の人からしてみればこういったアニメショップは、変人や残念な人たちが行く怖くて怪しい店と思われることが多い。


漫画だけが好きならまだしもこういった何処からどうみてもオタク、という雰囲気のお店は昔ひっそりと営業していたものだ。

舞台とかミュージカルとか2.5次元と呼ばれるものが普及し、スマホで簡単にゲームや二次元に触れられるようになった今でこそ、当たり前のようにメディアにも取り上げられるが昔はひっそりと誰にも迷惑をかけないように同族と内輪で楽しんだものだ。

有名になったり、取り上げられるのが悪いことだとは思わないけれど…線引きが曖昧になってしまうと一般の人たちに迷惑をかけてしまうこともある。それはよくない。

一般の人に迷惑をかけるようなことが起こると活動やイベントが無くなってしまうこともある。



嫌々付き合ってくれているようには見えないけれど…、どうなんだろう。


虎太郎くんは暫し考えた後、何故か私の頭を撫でた。


今日めっちゃ撫でられてる気がするのは気のせいかな?


「私は楽しいよ、ハルがどんなものを好きなのか知りたいし。好きなものを目の前にして喜んでいるハルを見るのは楽しいから」


紳士かよ。


すれ違った女の子達が「彼氏理解あって羨ましい!」「ちょ、リアルイケメンか!」とか小声で言ってるのが聞こえた。


彼氏じゃないから!うちの元執事がイケメンで紳士なだけだから…ってただのハイスペックじゃねぇか!



「あ……りがとう…?」

何と言えば良いかわからず、とりあえず礼を述べたら疑問系になってしまった。

「どういたしまして」

くすりと笑うと虎太郎くんは私の手を引いて次は何処にいこうか、とエスコートしてくれようとする。お耳が嬉しそうにパタパタしております。


紳士わんこ!可愛い!!


あまり長居しても夜遅くなってしまうので、最後にガチャガチャを見て帰ることにした。



そしてガチャガチャの前に戻ってきてからそろそろ5分たちますよ…

まだこの子たちをお迎えするか、決まらないのよ。どうしてくれよう。

固定の推しが居ない場合、こういう時に凄く困ります。

いっそやらないって手段も………いや、ないわ。

ここで逃したらいつまた遭遇できるかわからないのに見過ごすわけにはいかない!グッズとの出会いは一期一会なんだから!

次来た時に、と思ってるとあっという間に猛者に駆逐されてしまうのよ!後悔しても遅いんだから!


お財布の中の小銭を確認する。


2回…ガチャれる…、ガチャれてしまう……。よし、ここまで来たら覚悟を決めよう。

唸れ、私の左手ええぇ!!


ガチャン……ころん。

ガチャン…ころん。


ふっ………私は勝利した。

いや、元から箱推しだから誰が出ても良かったんだよ。

結果は、メインキャラとサポートの女の子キャラが出ました!

勝利です!てってれー!


カプセルは持って帰るとかさばるので回収ボックスにいれて、中身だけを鞄にしまう。

次はモカちゃんも連れて来よう、乙女ゲーマーだし、きっと語れる。寧ろ語りたい。


「今日はありがとう、コタローくん。ここに来られて良かったわ」

お店を出て改めて虎太郎くんに礼を言う。


本当に良かった。萌えて燃えた。


「ハルが喜んでくれたなら何よりだ」

そう言ってくれる虎太郎くんは本当に出来た人だと思う。


2人で寮に向かって歩きながら話す。

「お店があるのも知らなかったし、いろんなものを見られて楽しかったわ。でも、ソラに言ったら呆れそうだから内緒にして欲しいな」

苦笑浮かべながらそう告げると虎太郎くんは楽しそうに笑う。

「呆れているソラが目に浮かぶな」


確かに「ハルは本当にそういうの好きだよな…」と言いそうなソラの呆れ顔が思い浮かぶ。


「うん、だから内緒」

「わかった、その代わりまた一緒に出掛けてくれないか?」

虎太郎くんの言葉に私は深く考えずに頷く。

「もちろん、こうして放課後に友達と出掛けるのは楽しいもの」

「友達、か…。ハル、私はデートのつもりだよ」

「………………え?」


今なんとおっしゃいました?

デート?

デートってあれですか、リア充が手を繋いで歩いたりイチャイチャしながら買い物したり、時々こっぱずかしい行動を人前で恥じらいもなく行うという……たまに通行の邪魔になっていて、時と場所を考えろとツッコミたくなるあの……?


「デート、だよ」


繰り返される言葉を私の脳みそが噛み砕きました。

バリィ、ムシャムシャ…ごっくん。げふ。

飲み込みました。



理解すると共に、頬と耳が熱くなっていく。

「わ、私なんてコタローくんのデート相手には相応しくないと思う…ん、だっ、けどっ…」

言葉にすると声が段々と小さくなっていく。

「ハルはそのままで充分魅力的だよ」

そういって虎太郎くんはまた私の頭を優しく撫でる。


そこからの記憶はない。

いくつか言葉を交わした気がするが、気が付いたら寮の自分の部屋のドアに頭を打ち付けていました。

タイミングよく帰って来たモカちゃんが止めてくれなかったら、私の額にこぶが出来ていたと思う。


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