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20話 男装フラグが立ちました

「話を戻すぞ。新入生歓迎会だが生徒会で新入生に楽しんで貰うための催しを短時間で行う、時間にして10分から15分程度だ。それについて何か案があれば出して欲しい、いくつか考えてみたがあまりしっくり来なくてな」

プリントに目を通すと生徒会の出し物の欄に寸劇、クイズ大会など箇条書きでかれている。クイズ大会とか…発想が可愛いとか思ってしまった。

他にも催しがあるようで、上級生による部活紹介も組み込まれている。


「あの…」


挙手して声をあげたモカちゃんに視線が集まる。

「仮装して歌を披露するのはどうでしょうか?」

「……歌、ですか?」

虎太郎くんが不思議そうに首を傾げる。あ、その顔イケメンです、ごちそうさまです。お耳も一緒にこてんとなっております。もう、可愛い!

「はい。歌を覚えるのは個人で出来ますから時間がなくてもなんとかなるかと。ただ歌だけですとインパクトに欠けます、かといって寸劇では台詞覚えや小道具の準備も必要で時間が足りなくなると思うんです。だから掛け合わせてインパクトを与えられるように、仮装して歌はどうかなと」

「歌、か…」

クロくんが腕を組んで考え込む。するとミケくんがしゅたっと手を上げた。

「会長、女の子2人に仮装してもらってダンスとかしてもらってさ。オレたちで歌ってみるとかどう?足りないところは声楽部とかに声かけて協力して貰ってさ」

「…そうか、確かに女性の方が仮装すれば華やかになりそうだな。よしそれでいこう。声楽部には僕から声をかけてみる」


まさかの採用。


女性は仮装って、つまり私とモカちゃんが仮装ってことだよね……?

全校生徒の前で!?しかもダンスってあれですか、西洋辺りの重たそうなドレス着て踊るあれ!?いやいやいや、無理があるって!ねぇモカちゃ…………モカちゃんのお目目がめっちゃキラキラしてます!こっち向いて「頑張ろうね」と期待に満ちた眼差しをしております!

この子乗り気だわ!ごめん、モカちゃん…さすがに全校生徒の前で羞恥プレイは……………………………やります。やるからそんながっかりしたような悲しげなお顔しないで!あぁっ!もふもふなお耳が、お耳がしょんぼりお耳にっ!もふもふさせてっ!


モカちゃんがやる気だったのと、私がお断り出来なかったこともあり仮装してダンスという羞恥プレイを全校生徒の前で行うことになりました。

ダンス練習する暇があるなら寸劇でもよかったじゃん!とか思ったけど皆がなんか盛り上がってたから水をさせなかった…。


「次に交流会の打ち合わせだな。日にちは今週末、土曜にするか」

そう言いながらクロくんは水族館のパンフレットを配った。小型のもので小さな鞄にも入るタイプだ。

「男は男子寮のエントランスで待ち合わせだな、家の車を呼んで女性2人を寮まで迎えにいく。そのまま水族館、という流れでどうだろうか?」

クロくんの提案に異論は無いようだ。


まさかの車呼ぶのね。てっきり電車でいくと思っていたけど……。


忘れていたが私達はそれなりにお金持ちのお家の子供である。これが当たり前なのかもしれない。


それからある程度の集合時間も決まったのでパンフレットに書き込む。その後、話題は再び新入生歓迎会の出し物へと移った。

「モカちゃんは仮装、何かしたいのあるの?」

ミケくんが首を傾げてモカちゃんに尋ねる。


おぉ、共通の話題が!モカちゃんもミケくんと話すとほんわかオーラが出てとても嬉しそうです。恋する乙女は可愛い!


「…笑われちゃうかもしれないけど、ドレスとか着てみたいなって」

「……ドレスじゃ木には登れないだろ」

ボソッと呟いたソラの足をテーブルの下で思い切り踏んづけてやった。

「いっ…!?」

涙目になり私を睨むソラ。余計なこと言わないの!と視線を送ると思い切り目を反らされた。

「モカちゃんなら似合いそうだね」

「そうだと嬉しいな」

そう言いながら笑い合ってる2人を私はほっこりと見つめる。

「あ、ならハルちゃんが男装すればダンスしても違和感無いかもね」

ほっこりしてたらいつの間にか私に話をふられました。


男装……?つまり、ダンスするにはモカちゃんが女役だから私が男役として男装する必要があると…?

うわぁ、マジですか…うわぁ……………めっちゃ楽しそう!コスプレとか興味あったんだよね!

男装=コスプレじゃないことは分かってるけど、一回やってみたかったの!!ありがとうミケくん、口実をくれて。私、やります!


「モカちゃんの相手が私に勤まるかわからないけど、精一杯格好よくなれるように頑張るわ」

「ありがとう、ハル!」

「がんばれー!」

そう言って微笑むミケくんとモカちゃん。残り3人はなんとも微妙な表情をしていた。

「…ハルが、男装?」

「可愛らしい格好をされるよりいいのだろうか…」

「またハルは何でそう斜め上な思考してんだよ…」


私に男装できるかとか思ってるんでしょ?やってやるんだから!みとれるような男装をしてやろうじゃないの!

そう気合いを入れて私は拳を握った。


その後はいくつか生徒会の仕事内容を確認して解散となった。一緒に帰ろうかとモカちゃんに声をかけようとしたが私よりミケくんの方が早かった。

「モカちゃん、ダンスを披露するにしても何の曲がいいとかあると思うから教えてもらえない?」

「も、もちろん!」

モカちゃん喜んでます。


ここは大人しく引き下がるのが正解ですね!ふふん、空気読んじゃいますよ!

曲決めの内容は後でモカちゃんに確認するとしよう。

私はそっと鞄を抱えると席から立ち上がり、そそくさと生徒会室を後にした。



「ハル、ちょっと待って」

昇降口に来た辺りで呼び止められ、振り返ると虎太郎くんが追い掛けてきた。

どうしたのかと首を傾げると虎太郎くんは一緒に帰ろうと誘ってくれる。男子寮と女子寮まで道はほぼ同じだ、断る理由もないので了承した。隣に並んでとことこと歩く。


「まさか仮装してダンスすることになるなんて思わなかったね」

「秋葉さんの発想は面白いな」

新入生歓迎会の話をすれば苦笑が返ってくる。確かに私もその発想はなかった。

「でもモカちゃん楽しそうだったわ、ミケくんも結構乗り気だったみたいだし」

「ハルは楽しみ?」

「人前でダンスなんてしたこと無いから不安はあるけど、初めての事に挑戦するのは少し楽しみ」

「物事を楽しめるのはハルの良いところだと思う」

「そうかしら?普通だと思うけど」

「嫌々やる人に比べたら、楽しみを見つけて取り組もうとするハルは凄い」

素直に誉められてなんとなく嬉しいようなくすぐったいような気持ちになる。

「おだてても何も出ないよ?」

照れ隠しにそう告げるとくすりと笑われた。

「それは残念だ」

「何か欲しかったの?」

そう尋ねながら、あめ玉くらいならあるだろうとポケットを探る。


「ハルとの時間が欲しい」

その言葉に私は硬直した。





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