18話 恋バナって青春ぽくないですか?
次の日の放課後、私とモカちゃんは生徒会室にいた。
モカちゃんのゲーム知識によると、ミケくんはソラに誘われて生徒会に入ることになるらしい。少しでもモカちゃんとミケくんに接点を持たせるために、虎太郎くんにモカちゃんを生徒会役員として推薦しようと思い、つれてきていた。
「モカちゃんは優秀だし、生徒会の人材としてぴったりだと思うの」
虎太郎くんの淹れてくれた紅茶を飲みながら生徒会長のクロくんにそう告げる。もちろんモカちゃんの片想いは話していない、モカちゃんがどれだけ優秀で生徒会に必要な人材かアピールしただけだ。
私達が来たときに、生徒会室にいたメンバーはクロくんと虎太郎くんの2人だった。
「僕は良いと思うが、虎太郎はどうだ?」
そう言ったのはクロくん。
彼もたった1年でイケメンに成長しておりましたよ。男の子って成長早いよねえ…身長とかぐんぐん伸びるの羨ましい。コタローくんと並ぶと背景に優雅な華が咲いて見えます。眩しいです…さすが攻略対象者!
虎太郎くんから話を聞いて、入学前に会ったのが私だと言うことが分かったらしく再会するなりハグされました…コタローくんが凄い勢いでひっぺがしたけど。
「私も同感です、歓迎しますよ。秋葉さん」
「あ、ありがとうございます」
安心したように微笑み頭を下げるモカちゃん、今はヒロインモードなのか少し儚げな雰囲気を出しておられます。
イケメンな素顔モードも可愛いけどね。これでとりあえず1歩、ミケくんに近付けたはずだ!これから同じ生徒会としていくらでもミケくんにアピールするチャンスはあるだろうし、私は全力でサポートするから!
「では後日、生徒会全員で顔合わせをしよう。秋葉さん、ハル、連絡先を教えてくれるかい?」
クロくんに促されるまま私達はスマホを取り出して連絡先を交換する。
前に1回会ったからかなぁ、クロくんがすごいフレンドリーと言うか…さらりと呼び捨てにされました。嫌ではない、こう…生徒会活動とかも青春してるって感じで嬉しい…。
学校で青春を謳歌するのは初めてだったりするので、こうして知り合いや友達が増えるのは嬉しく思う。
クロくんに生徒会への入会を許可してもらった私達はその日はそのまま帰ることになった。残念ながらモカちゃんの想い人、ミケくんには会えなかった…
虎太郎くんが職員室に寄ってから帰ると言うので、昇降口までクロくん、モカちゃん、私の3人で歩く。するとモカちゃんのスマホが鳴り出した。
「ごめん、親から電話来たみたい。うちの親、話が長いから先に帰ってて」
そう言ってモカちゃんは道の隅に向かい、通話を始めた。「お母さん、私は大丈夫だから」「友達もできたから」「ちゃんと食べてるよ」と言った声が聞こえてくる。何処の親も子供が心配なんだなぁとついほっこりしてしまう。
軽くモカちゃんに手を振って寮までの道を歩くと、ふと隣を歩いていたクロくんが足を止めた。
「以前ハルに言われたように、両親と話し合ってみたら意外と話を聞いてもらえたんだ。今は、うまくいっている。あの時はありがとう」
振り返ると微笑みを浮かべたクロくんから礼を言われる。一瞬、そんなこと言ったっけ?と思ったけれど初対面の時に言ってました。私の記憶力の悪さよ…。
「あら、頑張ったのはクロくん…いえ、生徒会長ですよ。私は思ったことを言っただけです」
つい虎太郎くんと同じように話し掛けて慌てて言い直す。そう言えばクロくんは上級生でした。上級生にタメ口とか生意気認定されてしまう……。
「敬語じゃなくても構わない、僕はハルとはまず友達になりたい。友達同士で敬語は使わないと虎太郎から聞いたんだ、だから普通に話してくれないか」
「…クロくんがそれでいいのなら…」
私がそう言うとクロくんは嬉しそうに笑って頷いた。
「ところで……その、ハル。好意を持っている相手は居るのか?」
唐突に質問されて私の脳は理解するまで数秒かかる。
あれか、友達の友達とも仲良くしたいってことかな?だから好意を持っている人を教えてほしいと。
え、クロくん友達少ないの!?それは…うん、寂しいよね!わかる、分かるよその辛さは!
私も経験あるもん…あれは、うん…ボッチは本当に切ない…
とまぁ、それはさておき。
クロくんにはそんな思いしてほしくない…だから友達の輪を広げるお手伝いならいくらでもしますよ!
「私が好意的に思っているのはソラはもちろん、コタローくんにモカちゃん、クロくんだってそうよ。皆いい人たちだもの。だからクロくんも皆と仲良くなれると思うわ!」
私が微笑みそう告げるとクロくんは頭を抱えてしまった。
おうふ、違った!?
「そうではないんだ、その…想いを寄せる相手…つまりハルには好きな人は居ないのか、という意味で」
あー、なるほど。そっちか、恋バナってヤツですね?いやぁ、青春だねぇ。
「いないわね」
モカちゃんなら絶賛青春謳歌中だけどな!と心の中で付け加える。
「そうなのか?」
「えぇ、現実では考えたこともないもの」
私がそう告げるとクロくんは小さくガッツポーズする。
はて、なんのガッツポーズだろう?
「そういうクロくんはどうなの?」
モカちゃんのように誰か好きな人がいて、協力して欲しいと言うことなのだろうかと首を傾げる。するとクロくんは頬を赤く染め目をそらした。
「………いる、出来ればお付き合いしたいと思っているんだ」
あらあら、まぁまぁ…可愛いなこのにゃんこ。照れて猫耳がプルプルしてますよ。つい親戚のおばちゃんよろしくお節介を焼きたくなる。とは言え当人の問題なので私は何もしないけど。
「そうなの?もし何か相談とかあれば友達として助言や一緒に悩んだり出きるわよ」
私がそう言って微笑むとクロくんは助かる、と笑ってくれた。
私の周りは青春を謳歌する人たちが多いようで何よりです!
……ちょっとだけ、ほんのちょびっとだけど……羨ましいなぁなんて思ってみたり。




