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17話 ヒロインちゃんと『片想い』

生徒会の勧誘を引き受けて、生徒会室を後にした私はすぐにモカちゃんに連絡をした。

モカちゃんは寮で待っているらしい、部屋の番号を聞いてみると私の部屋の隣だった。1度自分の部屋に戻って鞄を置いてから、モカちゃんの部屋に向かう。ノックするとニマニマと笑みを浮かべたモカちゃんが出迎えてくれた。


おぉう、なんだそのにまにましたお顔は。可愛いのになんか残念な美少女になってるよ?凄く可愛いのに。


部屋の中に通されると座布団を薦められたので座る、折り畳みのテーブルを取り出したモカちゃんが可愛いカップにペットボトルのお茶を注いでくれた。ついでにスナック菓子やチョコ菓子も出してくれた。食べながら気楽に話そうという事らしい。

「じゃあ、早速なんだけどハルがこの世界に来た話を聞かせてほしいな」

私は頷くと、猫をもふろうと決心したら自称天使に出会い天使のミスでこの世界に転生したこと、ゲームの知識などは全く無いけれどここが学園物の乙女ゲームの世界で私が悪役令嬢ポジション(破滅エンドあり)であることは理解していると告げた。


「成る程ね、あの発光人間が無責任なのが良くわかったわ…おかしいと思ったの。私の好きな乙女ゲームのキャラたちはこんな獣人モドキじゃなかったから。しかも設定も微妙に違うし…」

モカちゃんは頭を抱えて深くため息をつく。

「モカちゃんはここがどんな世界か知ってるんだよね?」

「知ってる、というか好きな乙女ゲームだったから分かるよ。何回もプレイしたし、発光人間にこの世界に転生したいって希望した位だから」

獣耳ついてるとは思わなかったけど、と付け加え苦笑する。


モカちゃん曰く、この世界は学園を舞台にした乙女ゲームでそれに私の希望した猫を攻略するゲーム『もふもふパラダイス』の要素が加わり、獣耳やらの設定が生まれてしまったと言う。

ヒロインはモカちゃん。勉学が非常に優秀で特待としてちょっとランクのいい学園に入学した庶民という設定だ。

設定とゲームの内容を説明しながら私にも分かりやすいように、ノートに書き出してくれた。



『攻略対象キャラ

ソラ…同級生、不良ツンデレ。悪役令嬢の義理の弟

虎太郎…先輩、インテリ優男。生徒会副会長

クロ…先輩、生徒会長、学園の王子様的存在。

ミケ…同級生、明るいムードメーカー枠。


サブキャラ

ハル…ヒロインのライバル兼悪役令嬢』



書き出してもらった内容をみて驚いた。ほぼ知り合いである。

「モカちゃん…私、モカちゃんの邪魔したりしないから!寧ろ応援するから!だから破滅エンドだけは勘弁を!」

両手を合わせて頭を下げるとモカちゃんはクスクス笑う。

「せっかくハルと友達になれたんだし、私も望まないから大丈夫!……でも、あの…」

不意に視線を落として頬を赤らめたかと思うと逆に頭を下げられた。

「ミケくんと…両思いになれるように協力してほしいの!」

頬を染めたその姿はまさに恋する乙女。つまり、攻略したいってことかな?

可愛い!可愛い過ぎる!でもモカちゃん……ごめん。

私、その人知らない!

「ミケくんとは……?」

「ハルの弟くんと同じクラスになる子なんだ……その、何て言うか…元々キャラとして推しっていうのもあったんだけど…」


詳しく聞くところによると。

元々ゲームキャラとしてミケくんが推しだったモカちゃん。1度会ってみたくて、入学前に会いに行ったそうです。そしたらミケくんが泣いてるところを見てしまい、その泣き顔に惚れてしまったとのこと。


「ゲームの中でしかみたこと無いミケくんはいつも元気で明るくて。泣いてる所なんかみたことなくてさ、実際ミケくんの泣き顔見たら…ギャップ萌えとか色々、とにかく…凄く牽かれて……気が付いたらキャラクターとかじゃなくて本気で好きになってた」

そう言ってモカちゃんは頬を染める。

「今日、木から落ちたのも弟くんと出会うことによってミケくんのイベントが発生するからなんだ」

あぁ、なるほど…それで上から落っこちたのね…。

「わかった、モカちゃん!私、モカちゃんの恋、応援するわ!」

手をぎゅっと握ってじっと見つめるとモカちゃんは嬉しそうに微笑みながらありがとうと呟いた。恋する乙女はめっちゃ可愛いです。


「でも、あの…ハル…私…可愛いって思われるような性格してないの」


はい?モカちゃんは充分可愛いのに。何を言い出す。1度自分の事を見直してみるといいよ?


モカちゃんの言葉に私は首を傾げる。

「今はゲームのヒロイン、『モカ』の姿だし…『モカ』として生きてきたからイベントを起こすにも、攻略するにも間違えない自信がある。でも…私はミケくんに、ちゃんと『私』を見て欲しくて…。でもそれだと、自分に自信が無いの…私、前世からあんまり女子力とかないし…」

カッコ悪いよね、とモカちゃんは苦笑する。そんなこと無いとブンブン首を横に振った。

私は最初から『ハル』じゃなくて私として振る舞ってきた。元々キャラクターを知らなかったから、と言うのもあるけれど。だからモカちゃんの気持ちを理解するのは難しい。でも想いは伝わった。


そうか、モカちゃんは本当に…ミケくんが大好きなんだ。

一方的に知っているゲームキャラクターのミケくんじゃなくて、ミケくんという『現実の人』を好きになった。だから自分もゲームのヒロインじゃなく『現実の自分』として見てもらいたいと、そう言うことか。


そんな風に悩んでいるモカちゃんはやっぱり凄く可愛いと思う。

「まずはミケくんと少しずつ近づいていくことが一番の近道じゃないかな。大丈夫、モカちゃんは可愛いよ、私が男なら口説きたいもん!」

モカちゃんの手を握ったまま真剣に告げるとふっと微笑まれる。

「ありがとう……ハル、やっぱり私の攻略対象にならない?」

「私ルートの友情エンドなら、もう攻略済みだよ」

どや顔で返すと、モカちゃんが笑い出す。それにつられて私も笑顔になれた。


こうして私の学園生活は、ヒロインと友達になるというイベントを経て開始されたのだった。







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