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14話 明日から本気出す

虎太郎くんが入学してからそろそろ1年だ、いよいよ明日には私とソラも学園への入学を控えている。もちろん2人とも寮に入る予定なので両親はここ何日か目を赤くしている。そして何でもないことで泣き出す。『こんなに大きくなって…』『子供の成長は早いもので…』とか目を潤ませながら呟いている。全くもってうっとおしいけれど、それも親の愛だからしかたない、うん。


コタローくんと会えるの、楽しみだな…あ、クロくんにも会えるかな?


半分不安だけれど、半分楽しみで。私はなかなか眠れず明かりを消したベッドの上でごろんごろんしていた。でも何か忘れてる気がするんだよねぇ……。

寮に荷物はもう送ってあるし、制服も鞄も指定靴も準備したし。貴重品は鞄にいれていけば良いし…

ちなみに学園の制服だがシックなブレザータイプだ。前世でセーラー服しか着れなかった私としては、とても新鮮で嬉しい。制服を購入してからソラと試着したけれど、ソラの制服姿も凄く似合っていた。


あ、そうだスマートフォン忘れないようにしないと。

私は枕元にあるスマホを確認する。入学祝いにソラと色違いのお揃いで買ってもらった最新機種だ。自宅と両親、ソラの連絡先は登録済である。虎太郎くんのアドレスはまだない。1年前に見送ってから会えていなかったので、学園で再会できたら聞いてみよう。

ちなみに私のスマホには無料プレイ可能の乙女ゲームアプリがいくつか、既にダウンロードしてある。本当に文明の利器と言うものはありがたい。


ゲーム機とソフトも持っていきたいけど…無くしたら困るから持っていくのはやめよう。スマホアプリで充分楽しめるから、これは家に帰ってきた時に…………。


机の中にゲーム機をしまおうと部屋の明かりをつけてその違和感に動きを止める。その瞬間、自分が何を忘れていたのか思い出した。


そういや、この世界って学園物の乙女ゲーム…だっけ?で、私は…悪役令嬢(破滅エンドあり)だったような……

ヤッベエエェ!すっかり、すっかり忘れてた!なんも対策してない!明日から学園生活が始まるんだよね!?なんで忘れてたの私の馬鹿あぁぁ!!

乙女ゲームプレイしてる場合じゃねぇわ!!対策たてろよ自分!


クッションを抱えてベッドの上でゴロゴロ転がる。

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ………べちゃっ。

ベッドから落ちた。痛い。


仕方ない……もう迫ってしまったものは巻き戻せないのだから。

兎に角、悪役令嬢にならないように…こう、優しく明るく接しておけば……いい、よね。うん、そう言うことにしよう明日から頑張る。

私はそう何度も自分に言い聞かせるとモゾモゾとベッドに潜り込んだ。










△△


さて、いよいよ入学式当日です。当日が来てしまいましたよ……。

あっちももふもふ、こっちももふもふな猫やら犬のお耳を生やした若人が続々と登校している。流石に1人じゃなくてよかったと隣のソラに話し掛けた。

「なんか緊張するわね……人も多いし、コタローくんに会えると良いな」

「嫌でも顔見れるだろ。虎太郎のヤツ、生徒会で副会長してるみたいだからな」

その言葉に思わず足を止める。

「なんでソラがそれを知ってるの?」

「前にたまたま会った時、連絡先交換したもん」

こちらを振り返りどや顔するソラたん。


くそ、「もん」とか可愛い。相変わらず可愛いなうちの弟は。見た目が段々可愛いからイケメンにチェンジしても本当に可愛い。周りを見れば少し離れたところを歩く女の子達が頬を赤らめてソラを見ているのが目に入る。


どーだ!うちの弟は。イケメンでツンデレでもふ5つ星で可愛いんだぞ!ふふん。めっちゃ優良物件なんだからね!


自然と私も嬉しくなるので内心でめっちゃ自慢しておく。身内が良く思われるのは嬉しい。

ってそうじゃなかった。コタローくんの連絡先私も知りたい!

「私にも教えてくれればよかったのに!」

「いやー、それは虎太郎が実際に会った時の楽しみだって言ってたぞ。だからもう少し待っとけって」

ソラが何故か少しニヤニヤしながら私の方を見てくる。意味が分からなくて首を傾げると苦笑いされた。

「それ、どういう意味――」

私が言いかけた時だった。


「きゃっ!」

「ぐえっ」


上から猫が……違う、可愛い女の子が降ってきた。ソラの上に。

いたた、と可愛らしく腰を擦る女の子の下敷きにされるソラ。

「いつまで乗ってんだ、さっさと降りろ!」

「ひゃっ、ごめんなさい!」

ソラの声に女の子はびくんと震えては慌ててソラから降りる。

「何なんだよ…ったく」

文句を言いながら立ち上がると女の子はペコペコ頭を下げて謝る。

「す、すみません…ちょっと木の上に登ったら落ちてしまって…」

「はぁ…?馬鹿じゃねぇの」

「こら!女の子にそんなこと言っちゃ駄目でしょ、ソラ!」

軽く嗜めるとソラはふんっとそっぽを向く。全く、いくつになっても可愛い…じゃない、生意気なんだから。

「うちの弟がごめんね、大丈夫?」

女の子のピシッとした制服を見るに新入生だろうか?


猫耳は茶色く、ミルクティ色のゆるふわウェーブの髪を肩まで伸ばしている、いかにも守ってあげたいと思うような可憐な女の子だ。

友達になれないかな、なんて少し期待しながら話し掛けると女の子は驚いた様に目を見開いて私を見る。

「え…弟?貴方もしかして…伊集院、ハル…」

「そうだけど…何処かで会ったことあるかしら?」

「どうして…このイベントでハルは出てこないのに…」

彼女がぽつりと呟いた言葉に今度は私が驚く。


そうか、これはソラとの出会いイベントなのか…と言うことはソラは攻略対象者の1人、そしてそれを知ってるこの子は―――。


「ちょっと貴女!少し付き合ってちょうだい!確認したいことがあるの!」

「へ?」

私は女の子の腕をがっしり掴むと人気のな居場所へと走り出す。

「おい、ハル!どこ行くんだよ!」

「大丈夫!入学式には間に合うようにするから!!」

呼び止めようとするソラを振り切って私は校舎の裏まで思いっきり走った。





校舎の裏側、新入生の喧騒がどこか別世界に聞こえる場所に私達2人はいる。

私につれてこられた女の子はぷるぷるしている。そのお耳、是非とももふらせてください!っじゃない!

言葉を必死で飲み込む。

「さっきのイベントってどういう意味が聞いてもいいかしら」

私の言葉に女の子はびくんと身を縮ませる。


うわぁ、今の私、悪役っぽい!可愛い女の子呼び出して問い詰めるなんて。しかもこの子めっちゃ怯えてるじゃん…ごめん、ごめんねぇ…。私の方が居たたまれなくなってしまう…。


「私そんな事…言ってませんけど…」

「確かに聞いたわ。私の耳は飾りでなくってよ」

うわ、この言い方さらに悪役っぽい!語尾に『ですわ』とか『でしてよ』とかつけてみようか。

いや、止めとこう、調子に乗ると駄目なやつだ!



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