第16話 超電磁マシーン ボルテスV(1977-78年)
長浜ロボットロマン第二作、ボルテスVの登場です。リアルタイムで見ていました。再放送も見ています。スパロボでは『新スーパーロボット大戦』のみと、私が遊んでいた頃のスパロボでは不遇でしたが、印象には残っています。二次資料での言及も豊富であり、いろいろと記憶がある作品です。
ボルテスは、前作コンV、次作ダイモスと合わせて俗に長浜ロボットロマン三部作と言われていますが、私は本作こそ一番のロマン作だと思っています。コンVについては既に取り上げていますが、ドラマ的には大将軍ガルーダがらみ、それも中盤のクライマックスが一番の盛り上がりで、ほかはロボットアニメのパターンの域を超えていませんでした。また、次作ダイモスについてはダイモスを扱う回で詳しく後述しますが、「ロミオとジュリエット」モチーフであるものの、それをロボットアニメとして生かし切れているかというと、多少の疑義があります。
そんな中で、ボルテスVはこの時代のロボットアニメでなせる限りのドラマを打ち立てることに成功した作品だと私は思っています。ただし、それは視聴率的にも、玩具販売的にも、失敗の道であったことも事実です。
しかしながら、その屍の上に後に続くドラマ重視のロボットアニメたちが栄光の歴史を築いていったのです。のちに続く数々の名作の礎になったと私は思っています。ボルテスが地ならしをしたからこそ、ガンダムは最終的な成功を得られたのだと、私は思います。
歴史に例えるなら、ボルテスは平将門です。将門が目指した関東の独立は挫折しましたが、それはのちの世に源頼朝による鎌倉幕府として結実します。ボルテス将門は、間違いなくガンダム頼朝が築いたドラマ重視ロボットアニメの先駆者なのです。
さて、そのストーリー面に触れる前に、まずはロボとしての魅力を語ることにいたしましょう。
デザイン的には、コンバトラーをよりリファインした感じです。変形合体はコンVを踏襲していますが、改良されて無理がなくなりました。また、顔のデザインなど、イマイチ野暮ったい感があったコンVに比べて、洗練されています。
そして、ボルテスの最もエポックメイキングだったところは、初めて必殺技として剣を使ったことです。「天空剣Vの字切り」こそ、栄えある初の剣技系必殺技であり、これ以降のスーパー系ロボットの大半は、「○○剣××切り」を必殺技として持つようになります。ビジュアル的にも、胸のW字の飾りが外れて柄となり、そこから柄と刃が伸びて剣となるという男心をくすぐるギミックを持ち、さらに相手を袈裟切りに斬り下ろして、最下点で握り替えて斜めに斬り上げ、Vの字を描いて倒す、それも敵ロボの爆発後はその斬撃のラインがVの字の炎として残るという、非常に絵になるフィニッシュ技です。
また、中盤でのパワーアップというと次作ダイモスの必殺技のバージョンアップが有名ですが、実は本作で既に導入されており、敵が装甲を強化して天空剣が通じなくなったあと、超電磁ボールによって敵の装甲を弱体化させてから必殺技につなぐという必殺技コンボが後半には導入されています。
なお、通常武器として「超電磁コマ」がありますが、さすがにコマを武器にしてるロボはほかに居ません(笑)。
それから、よくある「なんで敵は長々とやっている合体の邪魔をしないのか」というツッコみに対しては、実は既に本作で合体妨害作戦が実施されていたりします。それで合体ができなくなったことに対して、敵の合体妨害に耐えられる編隊飛行を組む特訓をすることで、合体妨害を打ち破って合体するというストーリーが展開されているのです。
ボルテスの基地は、大鳥島ビッグファルコンという鳥を模した形の基地なのですが、これが何と終盤に別のソーラーバードという機体と合体して、ソーラーファルコンという恒星間航行可能な宇宙船になります。これで侵略者の母星であるボアザン星に逆侵攻するというストーリーは、前作コンVの急転直下の終わり方と違い、非常に納得のいくものがありました。
ドラマ重視のストーリーは、非常にハードな展開で、味方の重要キャラがバンバン死にます。第2話でボルテスの開発者のひとりでもある主人公たち剛三兄弟の母親が死亡。同じく開発者のひとりで、初期の司令官役の博士も途中で戦死。さらにヒロインの父親である地球防衛軍長官まで戦死と、主人公たちの肉親やら親代わりの人が死にまくります。
さらに、後任司令官として来た博士が鬼教官タイプで、初登場の頃は、正直言ってダンガードのキャプテン・ダンなんかより、よっぽど嫌いなタイプでした。まあ、こういうタイプはのちになると人間味が出てきたりするのはパターンではあるんですが(笑)。
さて、主人公のボルテスチームは、前作コンVと同じく「ガッチャマンフォーマット」の五人組ですが、うち三人が実の兄弟で、それにライバルとヒロインが入るという珍しいパターンです。そして、この三人、父も母も同じなのに全然似ていないという、ザビ家も真っ青な家族だったりします(笑)。
ところが、こいつらには、さらにひとりの異母兄がいます。本作の最大のドラマ要員にして、美形悪役の中の美形悪役、まさにザ・美形悪役というべき男、プリンス・ハイネルその人なのです。
このハイネルこそ、ボルテスのドラマの鍵を握る男です。地球人を下等生物と見下しているので、序盤は普通に悪役しています。しかし、叔父である皇帝に疎まれており、陰謀で失脚させられそうになったりします。このあたり、敵側もしっかりドラマを描くというコンセプトが明確であり、ハイネルの場合は側近のカザリーンとの関係もガルーダとミーア以上に深く描かれ、また部下との関係なども忠実な部下がいる一方で、ハイネルを失脚させようとしている者もいるなど、複雑化しています。
さて、主人公と敵司令官が兄弟ということは、つまり主人公たちが敵であるボアザン星人の血を引いているということです。このことは中盤に明らかになり、それまで一緒に戦っていたビッグファルコンの隊員たちにまで「異星人め!」とか罵られて殴られたりするというシビアなドラマが展開されます。最終的には仲間として再び受け入れられますが、このあたりの展開は再放送で見ても結構きつい感じです。子供が見るのやめてもしょうがないかなあという所なんですが、そういうドラマをあえて描いたチャレンジ精神には拍手を送りたいところです。
なお、この主人公たちの父親がボアザン星人であるという秘密が明かされる回は、一度もロボによる戦闘が無いという、ロボットアニメ史上において非常に画期的な回であり、長浜監督はじめスタッフはクビを覚悟で作った……というのはのちに二次資料で読んで知ったことで、リアルタイムでは見てたかどうかすら覚えていません(笑)。ただ、ストーリーの展開は分かってたんで、たぶん見てたんだろうとは思いますが、特にロボが出てこないことを不満に思ったような記憶もないので、フツーに「ああ、そういう話なのね」と思って見てたんでしょう(笑)。
敵側のドラマがしっかり描かれているので、ハイネルと主人公たちが兄弟だというのが最終回に明かされても唐突感はありませんでした。そのことと皇帝の醜態でそれまで信じていた世界を崩されたハイネルは、父を呼びながら炎の中に消えていきます。悪役でありながら、ある意味ドラマ部分のもうひとりの主人公として描かれているように思えました。
前作コンVと違って、ボアザン星の腐敗した支配体制は、ボルテスの逆侵攻と共に起きた奴隷の反乱によって崩壊します。皇帝やハイネルの死も描かれ、コンVのような唐突感はなく、物語としてしっかり終わります。
ロボットアニメとしてしっかりとしたドラマを描いた本作は、やはりのちに続くドラマ重視のロボットアニメたちの先駆者として画期的な作品だったと言えるでしょう。
……ところで、何でか知りませんが、第5話の「戦艦三笠が危機を呼ぶ」ってサブタイトル、妙に記憶に残ってるんですよね(笑)。吉岡平も『鉄甲巨兵SOME-LINE』でパロってたんですが、何か妙にインパクトのあるサブタイトルなんだよなあ。あ、もちろん、拙作でもパクりました(笑)。
あ、そうそう、玩具については、変形合体しない小さい超合金を持ってました。その分、プロポーションは合体するDX版より良かった気はします。一応、胸の飾りが取れて、それに刃と柄を付ける形で天空剣も再現できたし。あと何か知りませんがコンVのグランダッシャーみたいな形とれるようになってたな。まあ、何のかんの言っても、本心では合体するDX版の方が欲しかったんですけど(笑)。