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第127話 蒼き流星SPTレイズナー その2 意味不明、再入力ドウゾ編

 レイズナー語りも続いてしまいましたが、そんなに多く語ることはないかと思います。


 その中で、特に語っておきたいということのひとつとして、AIがあります。レイズナーのメインコンピュータ「レイ」は対話入力が可能なAIです。レイズナーのコクピットには、操縦桿、ペダル、スイッチのような通常のインターフェースも存在していますが、主人公エイジがレイに口頭で命令を下して操縦することもあります。


 その際に、きちんとレイが理解できる内容だった場合は「レディ」と返答があって命令に従うのですが、感情的な内容だとか曖昧な内容だった場合「意味不明、再入力ドウゾ」という冷たい答えが返ってきます。


 レイの話し方は片言で、リアルタイム当時のコンピュータ音声のイメージとして一般的なものでした。トランスフォーマーのサウンドウェーブも、同じような感じの話し方をしていたということは前に書きました。コンピュータというのは無感情に話すものだという固定観念があったのだと思います。


 それから三十年以上たった2018年になってみると、SiriなどというAIがスマホやタブレットにまで搭載されていて、あの当時のレイやサウンドウェーブより、よっぽど流暢に「何かご用でしょうか?」と問い、音声での命令に的確に応対しています。こんな現実を見ると、つくづく二十一世紀に生きているのだなあと感心してしまいます。


 もっとも、レイズナーの設定年台は1996年。そう、今から実に二十二年も前なんです。マクロスの2009年より更に前という。


 そして、1985年当時に描かれた十一年後の近未来は、わずか六年で現実がSFを追い越してしまいました。レイズナーの世界では、ソ連が存在し、東西冷戦が続いていたのです。しかし、我々の現実世界においては1991年にソ連は崩壊してしまいました。


 その一方で、レイズナーの世界では人類は火星まで有人宇宙飛行を行っていました。それも、ティーンエイジャーの少年少女が参加できる状態だったのです。現実の2018年では、国際宇宙ステーションにすら子供が行くことはできません。


 アニメ版の『キャプテン・フューチャー』のキャッチフレーズに「時は未来、所は宇宙!」というのがありましたが、1970年代から80年代半ばのSFにおいては、未来=宇宙でした。日本のアニメでは『宇宙戦艦ヤマト』しかり『銀河鉄道999』しかり。そして『機動戦士ガンダム』もまた、地球が舞台になることも多かったですが、基本は宇宙が舞台でした。海外SF映画においても『スター・ウォーズ』があり、『スター・トレック』がリバイバルしていました。TVゲームだって『ギャラクシアン』も『スターフォース』も『グラディウス』も『R・TYPE』も宇宙が舞台でした。


 しかしながら、こうした宇宙への憧れ、未来は宇宙と共にあるというようなSFは、アニメや映画も含めて、これ以降どんどん減っていきます。いや、SFというジャンル自体がじわじわと衰退していったと言ってもいいでしょう。


 今、「なろう」のSFジャンルは明確に過疎ジャンルです。「カクヨム」では少しはマシかもしれませんが、カクヨムコンで「現代ファンタジー」と統合されてしまう程度の扱いしかされていません。


 現実においても宇宙への憧れなどは、たまに「はやぶさ帰還騒動」みたいに突然変異的に巻き起こることはありますが、60年代のアポロ月着陸への熱狂や、80年代のスペースシャトル初飛行時の注目度のようなものは、今ではすっかり無くなってしまっています。


 そう考えると、レイズナーというのは、まだ宇宙に憧れがあった時代の作品なのだなあと、今更ながらにしみじみと思うのです。その一方で、それが既に時代とズレ出していたのか、とも思えたりもするのですが。


 さて、AIに話を戻しますと、実はレイズナーには隠しAIの「フォロン」というのも積まれていました。これがレイズナーの機体を守るために勝手にV-MAXを発動して、そのためにエイジの姉ジュリアの婚約者でエイジ自身も尊敬するゲイル先輩を戦死させてしまいます。このフォロンとの対決が前半の重要なドラマのひとつになっていました。


 フォロンはレイと違って話し方も流暢で、人間の感情も理解しています。かなり高度なAIと言えるでしょう。こんな優秀なAIを作れるのに、何でレイみたいに融通の利かないAIの方が標準装備なのかとも思うのですが、フォロンまで行ってしまうと逆にフランケンシュタインコンプレックスの対象となって、恐れられるのかもしれません。


 フランケンシュタインコンプレックスといえば、レイズナーの敵ロボとして非常に秀逸だったのがスカルガンナーです。こいつはSPTではなく(テラー)(ストライカー)という無人機だったりします。


 こいつ、対人掃討用の自律型ロボでして、頭部からレーザーセンサーみたいなのを照射して人間を探し、見つけると問答無用でぶっ殺します。人型をしていますが、無人機だけあって耐久性も高く、体の一部が破壊されても平然と稼働を続けて人間を殺そうとします。


 その不気味さと容赦の無さは、ある意味で自律型AI搭載ロボの恐ろしさを非常によく表していたと思います。それこそ、フランケンシュタインの怪物的というか、ある意味ゾンビ的でもあったりします。


 また、これの準同型機にターミネーターポリスというのが居ます。そう、このスカルガンナーの怖さは、初代のターミネーターと通じるものがあるので、この準同型機の名前からしても、モデルはターミネーターなんじゃないかなと思います。


 そういえば『ターミネーター』はもちろん、『2001年宇宙の旅』や『新造人間キャシャーン』あたりでもモチーフになっていた「人工知能・ロボットの反乱」というテーマも最近見なくなったなあ。


 レイズナーというのは、そういう意味で良くも悪くも「80年代」的なテーマがいろいろと盛り込まれているのだなあと、改めて思ったりしたのでした。


 さて、レイズナーについては、そんなに多くは語らないと言いつつも、もう少しだけ語りたいと思います。

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