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異世界キコウと英雄譚  作者: 黒井青色
プロローグ
1/1

プロローグ/ある少年の挽歌

 初めに色彩が消えた。――それはさながら血が足りない脳のように。

 そして光が消えて。――それは意識が飛ぶ直前にも似た。

 何も見えない。

 ここで終わりか――と、そんな風に悟った。

 自分が生きて観測し、積み上げてきた世界を、諦めるときが来た。

 ここで消える自らと、自分が内包していた世界。

 きっと誰もが大事に抱えていたであろう、それを。

 だって、ヒトはそもそも主観世界をしか生きることができない。

 それがここで、潰える。

 漆を塗ったような艶とは明確な差異を持つ、すべてを飲み込む穴を覗くような、ただ何もない、ただ何もないだけ(・・・・・・・・)の、世界の終わりのような暗黒の中で。

 終わることを、悟った。

 それでも。それでも、それがとても悔しくて。怖くて。狂いそうだと。そう感じた。

 意識が薄れゆくときにも似た世界の中で。

 死に瀕したような景色の中で。

 すべて消えゆく時の中で。

 「光あれ」、と。

 深淵を覗いた哲学者の辞世の言のように、あるいは皮肉か、創世を告げる神の御言葉のように。

 録音した自分の声のような、聴き慣れた歌を音程を下げて歌うような、声を枯らした友人の声のような、振り絞って出した声のような――よく知っているようで知らないような、そんな声を、聞いた。

 その言葉を引き金に、かろうじて残っていた意識が漂白される。

 五感は総てまっさらに還り、自我が白光に溶けた。

 そして、五感ではないどこかで。何か大事な、自分が自分であった所以が、自分の存在というべきモノが、生命の本質たるナニカが、弾けて飛び散るのを識った。





――――――――――――そんな風に、ある命が散った。






――――――――――ある一人が見ていた世界は消えた。







――――――――かくてある少年の生は終わり。







――――――ある一つの世界が潰えた。













――――はずだった。

































 少年は、見知らぬ新天地で目を覚ます。

 ここから、物語が始まる。

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