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詩集 碧い鳥

イブの日にツリーを捨てました

作者: 紀 希枝

イブの日に

ツリーを捨てました


金のモールに全身を巻かれた

紙でできた葉を持つツリーでした

銀のモールに紛れて

パステルカラーのクーゲルが揺れてました

ツリーの天辺には

金色の星が立っていました

緑の枝と緑の葉に埋もれながら

赤いサンタがいくつもぶら下がっていました


私が生まれる前からこの家にあり

普段は蔵のタンスの上に立っています

町が赤と緑で飾られる頃

私がサンタさんに手紙を出す頃

母屋の居間にやってきます

私によって飾り立てられます


居間に立つそれは

小さなツリーでした

まだ八つだった私は

ツリーの天辺に簡単に星をさせました

まだ九つだった私は

ツリーにかぶさっている袋を簡単に外せました

まだ十だった私は

ツリーを居間へと簡単に一人で運べました

今の私の腰ほどにもない

とても小さなツリーでした


このツリーは

橙色の光に包まれた居間で

家族の談笑を全身に浴びて

美味しい料理の匂いを嗅いで

幼い私に遊ばれていたのです

何度も何度も飾り直されて

欲しいものが書かれた短冊をこっそりと吊るされて

クリスマスの朝には

私の欲しくなかったプレゼントを足元に置いて

起きてきた私のふくれっ面を迎えていたのです



私が中学生になった頃から

ツリーは一年中蔵にいました


光のささないせまい蔵で

なんの物音もしない静かな蔵で

風も吹かない暗い蔵で

タンスの上で立ち続けていたのです


もう二度と来ないクリスマスを

そうとは知らず待っていたのでしょうか

もう二度と来ないクリスマスを

そうと察して諦めていたのでしょうか

どちらなのか私には分かりません

ただ

随分と久しぶりに日の光を浴びたツリーは

作り物なのに

何故だか生きているようでした


私と両親は蔵の掃除を終えた後

ツリーを解体しました

小さなツリーを

幼い時の私と同じ背丈のツリーを

のこぎりで分けました

茶色い植木鉢ではなく

三つに開いたツリーの足から

せーのでツリーを引き抜きました

分解されたツリーは

燃えるゴミの袋に収まりました

もう大人になった私は

片手でそれを持ち上げて

玄関の前に置きました


クリスマスではなく燃えるゴミの日を待って

居間ではなく玄関の外で

装飾を外されてビニル袋に包まれたツリーは

立つことなく横たわっています


イブの日に

ツリーを捨てました

拙作をお読みくださり、ありがとうございます。


批評批判大歓迎です。もっと私自身の思い描く世界を表現したいので、感想酷評、友人への紹介も期待しています。


長編の作品を幾つか載せる予定ですが、いずれもまだ修正中ですので先は長そうです。

少なくとも月に一度は、短編や童話や詩を載せるつもりなので、気が向いたらお読みください。


繰り返しますが、本当にありがとうございます。

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