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プロローグ

青い鳥と時の預言者が連載します。最終章突入となります。親父と旅をしてい青い鳥、教会のトップ聖焔、そして、変異を持つモノ。この話の核心に迫って行くので、お付き合いお願いします

 一帯が火の海と化していた。そこにはたくさんの屍。その中に一つ見える人影。黒い髪と黒い瞳を持った青年。

 彼の視線が俺に向く。絶望と憎悪が交じり合った瞳。そこから流れる一筋の涙。

 君は俺に何を伝えようとしているの?どうしたら、君を救えるの?

 俺はそう叫ぶけど、その人影は火の中へと消えて行った。


「―――ル、アル、大丈夫か?」

 聞き覚えのある声が聴こえてくる。目を擦って、周りを見ると、さっきの光景ではなく、見慣れた部屋だった。知らないうちに、首にしているネックレスを掴んでいた。無意識だと思うが、彼女に助けを求めていたようだ。

 俺を呼んだ方を見ると、赤色の髪に、青い瞳をした男性がいた。

「………聖焔セラフィム。おはよう」

「おはよう、じゃない。お前の世話を任せた精霊がお前の様子がおかしいと連絡してから、飛んで来たんだ」

「それは悪いことしたね。そう言えば、俺、どれくらい寝てた?」

 俺がそう言うと、彼は溜息を吐く。

「………2週間ほどだそうだ」

「そうなんだ。今回は短かったね」

 いつもなら、一カ月くらい寝ていることもよくある。

「普通から考えれば、2週間は長い。仮死魔法を掛けていなければ、お前は死んでいる」

 彼はそう言う。俺の体質は普通と違う。俺が一度寝てしまえば、いつ起きるか分からない。その為、俺が眠る時は彼に仮死魔法を掛けて貰っている。

「まだ死神は俺を連れて行ってくれないみたいだね」

「めったなことを言うな。そんなことがあったら、一大事だ」

 彼は真剣な眼差しで俺を見る。他の人達は替えがきくけど、俺はきかない。そう、いろいろな人から言われているけど、他の人たちだって、替えのないたった一つの命だから。

「ベッドから出してもらえなければ、そう思ってしまうよ」

 俺の身体は弱い。だから、ベッドから出してもらえない。調子が良くても、教会の中しか出歩かせてもらえない。そう言えば、トニーはどうしているだろうか?あの子はよく俺の話を聞いてくれる。

「まあ、調子はどうだ?」

 何処か悪いところがあるのなら、診てやるが?と、彼は言う。

「今日は比較的にいいかも。そう言えば、聖焔、俺と同い年頃で、黒髪黒眼の少年に心覚えない?」

 俺があの夢を見たと言う事は近い将来起きることと言っていい。俺の見立てでは凄い腕を持つ魔法使い。そう、目の前にいる彼に匹敵するくらいの。

「………黒髪黒眼、か。東方の国でも排除されたから、黒髪黒眼の純血はほとんどいないんじゃないか?いや、待て。一人いる。確か、黒犬は黒髪黒眼だったな」

 確か、お前より一つ下だったな、と彼は言う。

「………黒犬?」

 そう言えば、トニーが話してくれた魔法使いがそんな名前だったような気がする。ライセンスを最年少でとった魔法使いだと。その黒犬が凄い魔法使いとは言え、聖焔セラフィムほどの腕は持っているとは思えない。だけど、彼に会ってみないと、分からない。

「………黒犬が夢に出てきたのか?」

「夢に出てきたのが黒犬と言う少年か分からないけど、黒髪黒眼の少年は出てきた」

「どんな内容だ?」

「断片的にしか見ていないから、良く分からない」

「………会ってみないと、分からないか。だが、黒犬を呼べば、あの子が付いてくるだろう」

 彼はそんなことを言う。彼が言う“あの子”。彼の大切な人で、俺の大切な人。

「それなら、彼の所に連れていってくれていいよ。今は比較的体調がいいから、無理さえしなければ、大丈夫」

「………そうか。なら、あいつの家に送る。体調が悪くなったら、黒髪黒眼の大男に言えばいい。奴なら、どうにかしてくれるだろう」

「黒髪黒眼の大男?もしかして、   さんを奪い合った恋敵手の人?」

 昔、彼女が嬉しそうな様子を見せて、話してくれたことがある。誰も愛してくれなかった自分を愛してくれた人がいる、と。一人は彼で、もう一人は黒髪の剣士だ、と。彼は誰よりも強く、優しく、そして、不器用な人だった、と。

「………そんなことはどうでもいいだろ。黒犬の所に行く前に、念のために、医者に診てもらえ」

 彼はそう言って、部屋を出ようとするけど、思いだしたような様子で、こちらを見て、

帝王キュリオテテスの話だと、黒犬の料理は絶品らしいから、思う存分堪能するといい」

「それは楽しみだね」

 教会の食事は質素なものばかりなので、それは楽しみだ。

「それと、あの子を……、いや、何でもない。とにかく、楽しんで来い」

 彼はそう言って、姿を消す。

 俺は青い鳥と呼ばれる少女に会ったことがある。と言っても、十年前も前のことだ。

 黒犬の件はとにかく、あの子に再会するのは楽しみだ。


***

「―――やはり、白蛇さんはいい人です」

 青髪青眼の少女、自称・幸せを運ぶ鳥、他称・不幸を運ぶ鳥の青い鳥が満足そうな様子を見せる。

 ライセンス試験の同期であり、いつもお世話になっている国立病院の医者である白髪変人〈白蛇と言うらしい〉に、お茶しないかと誘われ、国立図書館に用があったので、了承したら、何故か、青い鳥も付いてきた。彼と宮廷魔法使いの時の世話役(兼監視役)の紅蓮さん(実は炎精さん。カニスのお仲間。エイル三世陛下と教会と秘密裏に結んだ協定により、しばらく、城で働けることになったそうだ。その代わりに、エイル三世陛下達も教会から幾つか押し付けられたそうだが、彼曰く、ほとんどがクリアしているので問題ないとのこと。紅蓮さんが男爵になったことと、黒龍さんに今まで以上にしごかれている以外はあまり変わっていないようだ。平和を愛するらしい本人から言わせれば、激変だろうが)を入れた四人で、お茶をしていた。

 魔法使い同士による意見交換するべきではない、と言う人もいるが、それによって、新たな見方ができることもあるので、その意見には反対だ。紅蓮さんも彼も、魔法使いとしては一流なので、そう言った人達から意見交換できるのはいい(そうでなければ、俺は彼の誘いに乗らない)。

 一方、魔法使いでも何でもない青い鳥は一人置いてきぼりになったかと言うと、そうではなく、知識は並みの魔法使い以上なので、話には付いていっている。

 青い鳥にゾッコンラヴな彼は青い鳥の分を奢ると言ったわけだが、青い鳥さんの辞書には遠慮と言う文字はないので、好きなだけ頼んでいた。帰り際に、彼が涙をぬぐっていたように見えたのは気のせいではないだろう。

「あの変人がいい人だろうと、悪い人だろうと、関係ないが、夕飯食べられなくても知らないからな」

「そこは大丈夫です。甘いものは別腹ですから、夕ご飯が入る胃袋とは別の胃袋の中に入ります」

「もしそれが本当なら、貴女はすでに人を捨てていますよね?」

 胃袋を二つ持つ人間など存在しない。

「そんなことはどうでもいい話です。今日は貴方の家族とハクにお土産を買いました。喜んでくれると、嬉しいです」

「それを払ったのは白髪変人だけどな」

 俺の家族は5人家族だ。ご飯時は、それプラス、青い鳥と、日中預かっている黒龍さんの養女であるハクの七人が集まる。まともな会話ができるのは俺と上の弟のエンだけで、それを除いた家族内の会話は脱線しまくり、青い鳥を加えると、迷宮入りし、そこにハクを加えると、カオスになる。

 これ以上の状況になることはないと思うが、どうなるか想像もできない。

「ただいま帰りました。お土産を持ってきました。絶品ケーキです」

 青い鳥は我が家のようにごく自然と俺の家に入り、リビングに入る。すると、一仕事を終えた親父とお袋、二人の弟に、ハクに………。誰だ、この人は?

 弟達と一緒に遊んでいるプラチナブロンドの青年。年齢は俺と同い年くらいで、背も同じくらい。俺の記憶にはない人物である。お袋か、親父の知り合いか?

「あらあら、お兄ちゃん、お帰りなさい。お友達が来ているわよ」

 お袋の呑気な声が聴こえてくる。おいおい、俺は彼と友達どころか、知り合いでもないぞ。

「黒犬、こんにちは」

 彼は律儀に挨拶してくるが、俺と彼は初対面だ。俺が忘れているだけで、実は一度会ったことがあるのかもしれない。俺はそう思い、青い鳥を見ると、

「………」

 青い鳥は青い鳥で、信じられないと言う様子をしている。彼はお前の知り合いか?

「青い鳥。久しぶりだね」

 彼は青い鳥に笑顔を見せる。

「………はい、お久しぶりです。ですが、何故、貴方が」

「積もる話はたくさんあるけど、場所を移して、話さない?俺の恥ずかしい話とか、されるのは少し嫌だから」

 彼はニッコリと笑顔を浮かべる。

「………青い鳥、この方はどう言った関係だ」

 俺は耳元で囁くと、

「………十年前、コンビクトで遊んだことのある方です」

 帝王達や再生人形以外にも、コンビクトにオトモダチがいたのか?コンビクト?

「ちょっと待て。それなら、教会関係者か?この方」

「恐らくは」

「恐らくとは曖昧だな。お前らしくないな」

 青い鳥さんの情報網は凄い。こいつに取って来ることができない情報はないと思う位に。

「はい。私は彼と一度しか会ったことはありません。それに、彼の情報は何も取って来れなかったので。もしかしたら、彼の情報は故意に隠されたものかもしれませんが」

 こいつは意味深なことを言い、親父の方を見る。

「ゲンおじさん、ケーキは七つしか買っていないので、ゲンおじさんは遠慮してくれますか?」

 こいつは申し訳ない様子と言うよりも、当然と言わんばかりの様子を見せる。普通、遠慮するのは親父ではなくて、お前だろ。もしくは、俺か。話によると、俺のお客様らしいから。

「………別に構わない」

 親父はと言うと、仕方がないという表情を浮かべる。親父は駄々を捏ねるほど、大人気ないことはしない。

「そうですか。では、貴方の部屋で話します。彼は恥ずかしいお話を人に聞かれたくないようなので、ゲンおじさん、見張りよろしくお願いします」

 こいつはそう言うと、ケーキを三つ持って、俺の部屋へと向かう。すると、彼はニコニコ表情を変えず、付いていく。

「おいおい、やけに親父に当たるな」

 何故だか知らないが、こいつは親父に対して怒っている。親父は何をした?

「ゲンおじさんも共犯ですから、当たり前です」

「親父も共犯?」

 この状況を作ったのは親父らしい。しかも、協力者がまだいるらしい。

「あの人は私の知らないところで、暗躍するのが大好きのようです」

 こいつにしては、珍しく、愚痴をこぼす。

「彼、それくらいしかすることがないから、仕方がないと思うよ」

 彼は同意するように言う。

―お昼寝しているうちに、凄い状況になっているね―

 我が家のマスコットであるブタとウサギの合いの子のスノウがオレの頭上に現れる。こいつは俺の頭上がとても気に入っているらしい。俺の頭はこいつのお気に入りスポットだ。

「………本物の精霊だ。彼の精霊と違って、実体できるんだね。本物は違うんだね」

 彼は俺の頭にいるスノウを撫でる。

―あんな偽物と一緒にされるのは心外だよ―

 スノウは不機嫌そうに言う。

「俺としては、彼らにはお世話になっているから、文句はないけど、できることなら、一緒に寝てくれる子が良かったよ」

 彼はスノウを羨ましそうに見る。確かに、スノウの毛はふさふさで、さわり心地触り心地はいい。抱き枕にしたら、気持ちよく眠れるかもしれない。ただし、本人は嫌がると思うが。

 ちょっと待て。この方、スノウと会話が成り立っていなかったか?

 一方、青い鳥は俺の心情など気にせず自分の部屋かのように、俺の部屋に入り、

「狭い部屋ですが、好きに寛いで下さい」

「狭くて悪かったな」

 俺は不満そうに青い鳥を見るが、本人は気にせず、机の上にケーキを置く。スノウはそのケーキを見て、尻尾を振る。期待しているようだが、お前の分はないぞ。とは言っても、こいつはそう言っても諦めないだろうし、俺は喫茶店でそのケーキを思う存分堪能したので、あげるか。

 俺は床に置いてやると、こいつは頭から降りて、そのケーキを夢中に食べる。

「………あんたは青い鳥に用が会って来たんだと思うが、その前に自己紹介してもらっていいか?」

 青い鳥は彼のことを知っているようだが、俺は知らない。

「そうだね。最初にあったら、自己紹介だね。俺は………名前を名乗るのもいいけど、今回はこっちで名乗ろうかな。執行者の末席を務めさせてもらっている時の預言者と申します。お見知り置きを、青い鳥に、黒犬」

 彼はそう言って、ニコリと笑う。俺は青い鳥を見る。あいつは予想していたようで、驚いた様子は見せていない。

 おいおい、青い鳥さん。新手の執行者ですか。貴方は何人と知り合えば、気が済むんですか?

「みんなはアルと呼んでいるから、そっちで呼んで欲しいな。それと、誤解しているみたいだから言っておくけど、青い鳥にではなく、君に会いに来たんだ。青い鳥にも会いたかったけど」

 夢に出て来たのはやっぱり君だったんだね、と彼は悲しそうな表情を浮かべる。彼は何を言っているのか分からないが、その表情だけはとても印象に残った。

 そして、今回も、青い鳥は知らないうちに、不幸を振り撒いていく。

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