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35.シェリルの取り越し苦労

 シェリルとジェイミーが小屋に戻ると、中はもぬけの殻だった。森の中に隠れていた少女たちの話によると、シェリルたちが戻ってくる少し前、オスカーとマックス、フローラの三人が小屋に戻ってきたらしい。そして縛られていた男たちを連れてそのままどこかへ逃げてしまったという。


 少女たちはというと、巧みに森のなかに隠れていたおかげで全員無事だった。オスカーたちが先に戻ってきたため、シェリルとジェイミーのことをずいぶんと心配していたようだ。だから皆、二人の帰りをとても喜んだ。


 しかし、いつまでも喜んでいるわけにはいかない。メリンダの元へ戻らなければならないのだ。馬小屋の中にいた馬はオスカーたちが連れていったらしく、一同は徒歩で骸骨が転がっている森を抜けなければならなかった。幸運にも森の地図が小屋の中に残っていたので、地図を頼りになんとか森を脱出し、メリンダが待つ宿にたどり着いた。


 突然姿を消したシェリルとジェイミーを案じていたメリンダは、少女たちを連れて戻ってきた二人を見てそれはそれは喜んだ。これにて一件落着という空気が漂うなか、ジェイミーは宿に頼んで軍の本部に使いを送った。このまま少女たちを神殿に帰すわけにはいかないので、本部からの返事を待って、明日にでも彼女たちを本部に連れていくことにしたのである。少女たちもメリンダも大人しく本部に付いていくことを了承した。


 ひとまず、今日のところは全員宿に泊まることになる。少女たちは怖い思いをしたからか、メリンダから片時も離れようとせず、全員メリンダの部屋に行ってしまった。となると自分はジェイミーの部屋に行くべきだろうと謎の発想でもって、シェリルはジェイミーの部屋に押しかけた。ジェイミーは特に嫌がることなくシェリルを部屋に入れてくれた。テーブルを挟んで、二人は向かい合い腰かける。


 しばしの沈黙のあと、シェリルは眉をひそめた。気まずい。空気が重い。恐らく自分が奴隷であることがバレたからである。別に隠していたわけではないのだが、積極的に知られたくもなかった。バレて困ることは特にない。それでもジェイミーに知られたのはなんとなく嫌だし、恥ずかしかった。


「ジェイミー」

「……なに?」

「烙印を見るの、初めてだったの?」


 シェリルの疑問に、ジェイミーは困ったように頬をかいた。


「いや、見たことあるよ。舞踏会とかにたまにいるんだ。外国から来た客が連れてくることがあって……」

「じゃあ、驚かない?」


 ジェイミーは少し考え込んだあと、苦笑混じりに言った。


「驚いたよ」


 シェリルはうつむいて自分の両手を見つめる。それから意を決して顔を上げた。


「まだ友だちでいてくれる?」


 ジェイミーは目を見開く。


「友だち?」

「友だち」


 シェリルが頷いて見せると、ジェイミーの表情がゆるんだ。それと同時に、シェリルの肩の力も抜けた。

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