落ち葉
風が落ち葉を舞いあげ、長く黒い髪を揺らす
石畳の上を行く下駄の音が暖かな音を響かせる
秋の寒空の中まっすぐに伸びた背筋は美しいシルエットを作り出す
白い肌に赤い唇
声をかけられてにこりと微笑むと口元が優しそうな曲線を描く
路地に入り、しばらく行くと、彼女はふと空を見上げる
思わずこの瞬間を切り取りたくなる
はらはらと落ちてきたまだ少し緑の残る赤い葉をそっと受け止め
満面の笑みでこちらを振り返る
…君!見て、綺麗な落ち葉だよ
あの時のことがいつまでも忘れられない
僕はあの日、彼女に恋をした
憂いを帯びたような目も、心から笑う笑顔も
悲しんで流す涙も、怒りを纏ってまっすぐ見つめる視線も
全部、全部が好きなのだと思った
告白すると決めたその日に
彼女の想い人の存在を知った
堪えても堪えきれない悔しさと情けなさと諦めの感情が
僕の心をせめぎあう
それでも。
なにも言わないで終わっては、前に進めないから。
好きです
大きな声はだせなかった。言い終わってすぐに目をそらしてしまった。でも、伝えた。
ごめんなさい、ありがとう
泣き笑いの表情で、僕をまっすぐみた彼女は、あの時と同じくらい綺麗で
僕の頬をつーっと涙が流れたけれど
特別な彼女を少しだけ見ることができた気がした