2話
1歳ごろから意識があり、以前生きていたという記憶のようなものはあって、転生ってやつをしたのかなあ、なんては思っていた。だけど、ただかつて生きていてそのときのわずかな記憶のようなものがあるだけで、ここがどんな世界かなんてわからなかった。
しかし、3歳になってしばらくしてから、父親が元服後の名前は家基だといっているのを聞いたとき何かがはじけたように『歴史』を思い出した。家基ってまさか「幻の11代将軍」徳川家基か
将軍(最初は王族か貴族と思っていたが)の息子だからか後宮(大奥)にいて男はほぼみないし、侍女たちは若様とよぶし父親のことは上様と呼んでいるから、名前が分からなかった。
でも竹千代って呼ばれるたびに何か引っかかってる気がしたし、親父の話に「とのものかみ」っていう単語もどっかで聞いたことがあるような気はしていたんだよな。
今、考えれば竹千代といえば徳川家康の幼名でそのほかにも何人か歴代将軍の中には竹千代を名乗った奴がいたんだよなあ。そして「とのものかみ」とはおそらく旗本から大名、そして老中にまでまり、収賄政治家のイメージが強い田沼主殿頭意次のことだろう。
田沼意次、将軍の側近として権勢をにぎった汚職政治家と思われているが、最近はそれは間違っているのではないか、なんて言われているようだが、それは今の俺にとってはどうでもいいことだ。なんせ彼、田沼意次が俺、徳川家基の暗殺を命じたのではないかという説があるからだ。