1話
俺は今、前髪をそられて月代にされている。
いわゆる、元服式というやつだ。てっきり烏帽子親から烏帽子をつけられるのだと思っていたが、それは戦国時代までで江戸時代は月代にするだけですませるようだ。
さて、なぜ俺が元服式などというものをやらされているのか疑問に思うかもしれない。この平成の世で元服式などやる地域があるのかと。
現在でも、通過儀礼のような民俗学的行事が残っている地域があるかもしれないし、ほぼすべての人が経験してるであろう七五三もそういった通過儀礼である。しかし、それらの行事も最近では、村おこしの祭りのようになっていたりするだろうし、わざわざ髪を剃って髷を結うような元服式を行っている地域はないはずだ。
では、どうしてそのようなものをおこなっているのか。その答えは簡単だ。
俺が江戸時代のある人物になってしまったからだ。いわゆる転生というものである。
まさか最近はやりの転生というやつを自分が経験するとは思わなかったが、その転生先の人物が大問題だ。その人物というのが江戸幕府第10代将軍徳川家治の嫡男徳川家基だ。
将軍の息子で次期将軍確定なら人生勝ち組確定と考えるかもしれない。確かに家柄を見れば、小作人の貧乏百姓や食い詰め浪人の子供よりはましかもしれない。しかしこの徳川家基という人物、わずか18歳で死んでしまっているのだ。しかも数え年だから満年齢は16歳。
そして、その死因の原因っていうのが暗殺ではないかといわれている。
なんとかそれまでに暗殺を回避しないと、若死にしてしまう。
今は明和3年、西暦でいうと1766年。そしてタイムリミットは安永8年、西暦1779年2月24日だ。
あと13年のあいだに対策を練らないと・・・・・・
時代考証などで間違っていることがあるかもしれませんが、素人の書いたものなので勘弁願います。
指摘していただければなおしていきます