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妖怪事件と銃少女  作者: 黒炎 ルカ
ラルーの後の行動記録。
8/11

ラルー、白面金毛九尾の狐と遭遇!バトルだぜ!




どこまでも、どこまでも

広大で、美しい光景の中を私は・・・。


落ちていた。


嗚呼、私は・・・。復讐を果たし、生きる目的を失った為に

唯一の友人を残して自ら命を絶った。

自殺だ。

死んだのだ。


「壮大だな・・・。ここは・・・。

天国か?地獄か?」


なんとなく、私は呟く。

美しい黄金の大空を落ち行く私の目には

その光景が天国か地獄か解らなかった。


「ここは天国でなければ地獄でもないわ。」


だが・・・。

落下してゆく私の身体がふわりと落下速度を落とし、

宙を浮かぶ。

そして目の前に、本当にすぐ目の前に

鼻と鼻が当たりそうな程、近くにヤツは狂気の笑みを浮かべて

そこにいた。


「毎回思うのだが、本当にお前は過剰に近いな・・・!

離れてくれ。」


「あら?悪いかしら?

人間なんて久しいからついつい・・・。」


「人間が久しいなんて言うヤツは恐らく私の知識上

お前が初めてだ。」


「アハハッ、そして血の匂いに飢えているというヤツも私で初めて?」


「・・・。お前・・・血に飢えている・・・?」


「ええ、とても!」


目の前のヤツを私はすぐに押し返す。

やたら近くにいたのは私の首に噛み付こうとしていたから・・・!?

そう思うと恐ろしくて恐ろしくて・・・。

だって・・・。つまりはずっとコイツに狙われていたっていう事なのだろう!?

いや・・・。本当。コイツだけは馴れ合いたくない・・・!


「ひどいなぁ・・・!

私だって貴女を救う為に色々と頑張ったんだから、

少しくらいは血をくれてもいいでしょう?」


「イ・ヤ・だ!

本当に有り得ない!お前!

あと、私を救う為に頑張ったというのはどう言う事だ!?」


「何でそんなにブチ切れるの!?

少しは私の言い訳くらい聞いて頂戴な!?」


独特的な喋り口調でツッコミを入れるラルー。

本当に・・・。何なんだコイツ・・・。


「解った解った。

落ち着くからまずは説明してくれ!」


私は降参のポーズを取る。

散々、怖い思いをさせられたのでこの態度は自殺行為に等しい。

だが、私はもう死んでいるので問題はないだろう。

死人を二度、殺すヤツなんていないはず。


「あ、ここに・・・。」


「本当に何なんだお前!!?」


「アハハ!“覚”を気絶させたあと読心能力をコピーしたのさ!」


「やっぱりアレはお前が犯人か!!」


「yes!その通り!」


やたらハイテンションなラルー。

もう嫌だコイツ。

死人を二度、殺すらしいし・・・!


「まぁまぁ・・・。パーバションさんや、

リラックスリラックス・・・。

説明するからさ・・・?」


「・・・。」


「何で!?そんな疑いの目で睨むの!?」


「・・・。何時までたっても説明しないからだ。」


「ああもう!!解ったよ!ちゃんと説明する!」


ラルーは指をパチン、と鳴らすと

黄金の大空にガラスのテーブルと椅子が現れる。


「まぁ、掛けて頂戴。」


ラルーはニッコリ微笑み、椅子に

優雅な仕草で手のひらを向ける。

突然、軽そうな雰囲気から優雅で威厳のある雰囲気に豹変したラルーに

戸惑いながらも私はその椅子に座る。


「貴女は自殺をし、死んだ。

その後、貴女は天国に行くと思う?地獄に行くと思う?」


「・・・。地獄に行くのか。」


「・・・。悪いけど、そうよ。

自殺者は問答無用に地獄に行くシステムなの・・・。」


「では、これから私は地獄に行くのか・・・。」


「いいえ、そんな事はないわ。」


「・・・え・・・?」


「私は貴女とちょっとした契約を交わしたの、

貴女に蝶亡を殺すチャンスを与える代わりに

死後の貴女の魂を私のグリモワールに契約するとね?」


「蝶亡を殺すチャンス・・・?

グリモワール・・・?」


思えば、私は銃による戦法に依存している。

そんな私が、突然、足元に落ちている針を使おうなんて思うのは不自然だ。

しかも蝶亡は動けなかったみたいだったし・・・。


そういえば最後の時、蝶亡は私の眼を見て驚いていた・・・。

関連があるのか・・・?


「ええ、関連はありまくり。」


「・・・。もはや便利だな。その読心術。」


「能力よ! 能 力 !」


せっかくカリスマがにじみ出てきたのに・・・。

台無し。


「・・・。ごめん。

まぁ、何はともあれ、貴女は私の下僕。

だから地獄に行かない代わりに私にこき使われる事になったわ。」


「え、私は何をさせられる・・・?」


「さぁ・・・?その時の都合にもよるからねぇー?」


「・・・。一体・・・。お前は何者だ・・・?」


「・・・。私は“この秘密は死ぬまで隠す”って言ったわ・・・?

そして、貴女はもう死んでいる。だから特別に教えてあげる。」


ラルーは目をつむるとゆっくりクルクルと回り始める。

彼女が着ている紅いドレスのスカートが綺麗に広がる。

・・・。紅ドレス・・・?

ここでやっと私は気が付いた。

蝶亡は“紅ドレスの女”その単語だけでそれがラルーだと特定した。

つまりは紅ドレスに何か意味があるという事なのか・・・?


「・・・。やっと、気付いた。」


ラルーはポツリと呟くと薄目を開いて、回るのを止める。

そしてクスクスと笑い出す。

蝶亡だとひたすら気味が悪かったがラルーだとよく似合う・・・。


「サンジェルマン伯爵を知っているわよね・・・?

あー、別に知り合いか?って事じゃなくて

どういう人物か知っているかって事だからね?」


「あぁ、知っている。

歴史にはあまり大きく取り上げられないが、

その不思議な人物像や謎に満ちたベールは実に興味深い物がある。」


「じゃ、“サンジェルマン伯爵=チュイルリー宮殿の赤い男”説は

知っているかしら?」


「・・・。都市伝説程度の認識で知っているが・・・・。」


「OK!!」


「!?」


もうヤダ。このハイテンションなラルー。

こういう時の空気くらい呼んでくれ・・・!!


「・・・。分かったわ・・・。

こほん。」


咳払いをするとラルーは両手を広げる。

なんか悪役みたいだな・・・。


「神からの使命を携え、世の運命を導くもの・・・。

それこそが紅い服の存在の意味・・・。

それを今まで行っていたのはサンジェルマン伯爵だったのだけど、

今回は私の力試しとして私が紅い服の代理人を務めたの。」


世の運命・・・?かなり壮大な話のようだ・・・。

この光景のように・・・・。

私は辺りの黄金の大空を見渡す。


「ここが気になるのかしら・・・?」


悪戯に微笑むラルー。

様になるな・・・。


「ここは神の世界と人の世界の狭間の世界。

あ、宇宙と宇宙の狭間ではないわよ?

そこらへんはお間違いなく~。」


「・・・。」


「使命を帯びて私は蝶亡に契約を持ちかけた。

けれどその契約を蝶亡は破った。だからその後始末として蝶亡に与えた力を

取り返した・・・。という訳。分かったかしら?」


「・・・分かったが・・・・。」


「あら?何かご不満の御様子。

まぁ、何が不満かなんて・・・察しがつくわ。」


「・・・。」


私の不満・・・。

それは・・・。私の死後、エヴがどうなったかが・・・気になるのだ。


「私の後を追って・・・。自殺はしていないのだろうな・・・?」


「・・・。死者の特権よ・・・。

見なさい。」


「え・・・?」


ラルーは手をパンと叩くと辺りの黄金の大空が消失し、真っ暗になる。

何が起きたのだ!?

私は驚いて勢いよく立ち上がる。

そのせいでガラスの椅子は後ろに倒れて粉々にいとも簡単に砕ける。


「・・・。身体で弁償してもらうわ・・・。」


ラルーの嫌な声が聞こえる・・・。

やっちまった・・・。私は何をされるのだろう・・・?

私は額に手を当て、眉間にシワが寄るのを抑える。

嗚呼、頭痛が・・・。


「・・・。パーバション様・・・。何故・・・?

幸せを見失ったのですか・・・?」


「!!?」


だが、聞きなれたあの懐かしい声を聞いて私は咄嗟に振り返る。


そこには・・・。


私がいた・・・。


いや・・・・正確には・・・・。死んだ私の遺体だ・・・・。


それをエヴが抱きしめ、泣いていた・・・・。


静かに、いつも無表情なエヴは顔を酷く歪ませ、悲しみをあらわにしていた。


「い、一体・・・これは・・・?」


私は傍らにいるラルーに聞く。


「貴女が死んだその後の様子よ。

あっちの人間にはこちらの姿も声も届かない。

こちらだけがあっちを一方的に見ていて、干渉は何も出来ないわ・・・。」


静かにそれだけ語るとラルーは私の肩に手を置く。


「私は貴女の嘆きを聞くくらいなら、出来るから。

素直に叫べばいいわ。もうそれくらいしか貴女には出来ないから・・・。」


ラルーの、そんな残酷な通告を受けて私は・・・。

膝から崩れた。力が抜けたのだ、突然・・・。




「貴女にはもっと、もっと生きて欲しかった・・・。

色んな冒険をして、お互いに守りあって・・・。

私達なら無敵なのに・・・。貴女は死んでいかれた・・・。

何故・・・?まだ幸せになれる余地はあったのに・・・・。

私はもう・・・。貴女の心を理解出来ません・・・。手を焼かせすぎです・・・。

・・・。望むままに生きなさい・・・?ひどいですよ・・・!」


エヴは膝の上に私の遺体の頭を乗せ、

泣きながらその悲しみの言葉を投げかける。


「それじゃあ・・・。貴女の後を追う事も出来ない・・・!!」


「ッ・・・!!」


やはり、エヴは私の後を追う気でいる・・・!


「でも・・・!でも・・・!

死ねないですよ・・・!だって・・・!

貴女が私に、“望むままに生きなさい”なんて言ってくれたせいで・・・!

あああああぁぁぁぁぁ!!!

何故!!何故、私は貴女を止められなかった!!?

大嫌いです・・・!!何よりも守りたいパーバション様を死なせた私が!

何よりも、大嫌いッ・・・!!」


後悔の叫びだ・・・。

エヴは初めて、感情をあらわにして、叫んでいた・・・。

こんなエヴ・・・。見た事がない・・・!!


「エヴは・・・!

エヴは、大丈夫なのか・・・!?」


私は、ラルーに聞く。

どうせ、コイツには全てが分かっているのだから・・・。


「・・・。大丈夫よ。

少なくとも、エヴは貴女より強いわ。

だから後に彼女は貴女の後を継いで、たくましくその人生を全うするわ。

ちなみに、貴女の代わりに貴女の武勇伝を彼女が書いて、

本として出版します。」


「・・・。

あとのことは余計だッ・・・!」


私はもうめちゃくちゃに泣いていた。

ああ、後悔だ。

もっと、生きれば良かった。

エヴは・・・こんなにも私を慕って、こんなにも私の死に嘆いているなんて、

もっと生きて、それを確認すれば良かった・・・!


「・・・。

死んでから後悔するのは・・・。

最悪のパターンね・・・。本当、これだから人間は浅はかなのよ・・・。」


「うるさい・・・。クソウ・・・・。」


「・・・。私は後にどうなるかを知っていた。

だからいい感じに貴女を利用した。

そんな私をどう思う?」


「・・・。最悪のクズ・・・。」


「蝶亡より?」


「アイツはまだ筋が通ってたよ・・・。

お前は文字通り、最初から最後までワケの解らん不審者だ・・・!!」


「そうかい、そうかい。

それでも、もし私がいなければ貴女は蝶亡に一生、復讐を果たせぬまま、

人間らしく愚かに朽ち果ててたわ。

だから少しくらいは私に感謝なさい。」


「誰がお前なんかに感謝するか・・・!!」


私は涙を浮かべたままムカつくラルーを睨む。

全く意味はないのだろう・・・。

だが、気がすまない・・・!


チクショウ、イヤミのつもりか・・・!


「まぁ、とにかく、これ以上はもういいでしょう?

じゃ、私の世界へようこそ・・・。」


ニッコリと、妖しい笑みを浮かべてヤツはどこからともなく分厚い本を

手にする。それが話に聞く、グリモワールか・・・・?

そうか・・・。私はまだ・・・。終わらないのか・・・?


それを最後に、私の意識は現世から完全に消えた。

消えて、ヤツの世界・・・。

つまりはヤツの・・・グリモワールの世界に、

私は閉じ込められたのだった・・・。











・・・・・





「全く・・・人間はなんて愚かなのでしょう?

自分の都合のいいように自らの記憶さえも改変し、

自分の都合が悪い時は暴走するのでしょう・・・?」


私は手にしたグリモワールを開いて、

パーバション・C・リネル・クネクションのページを開く。

そこにこう書かれていた。


“パーバション・C・リネル・クネクション”

種族 人間(死者)

年齢 15歳

性別 女

身長 152センチ

体重 43キロ

既に死亡済。


その射撃技術は同年代の人間の中ではトップクラスの実力を誇る。

けれども主に狙う敵は人外。

故にその高い実力はほとんど意味を成さない。

復讐に人生を捧げ、復讐を果たした後、自殺。

生きる目的を見失った結果と思われる。

死者といえど人間。その姿は生前を保ったままなので

人間に対する囮や潜入には役に立つだろう。




彼女がいかに単なる駒でしかないかがよく書かれている。

一体、何のために彼女は生まれ、

何のために死んでいったか・・・。

そう考えると、

どれだけ人間は下らない存在かとことん思い知らされるわ・・・。


「はぁ・・・。」


私はため息をついてパタンとグリモワールを閉じた・・・。

未だに泣いて、パーバションの死体を抱きしめるエヴを横目に見て

私は馬鹿らしくなった。


「・・・憂鬱だわ・・・。」


私は指をパチンと鳴らす。

すると辺りはその姿を変える。


一面、雪景色。

真っ白だ。

ここは・・・日本かしら?


雪の中、楽しそうに、走り回っている子供がいる・・・。

・・・ここは・・・パーバションの子供時代だ。

私は気まぐれに、事の残酷な真実を確認しようと思い、

彼女の過去を覗かせてもらったのだ。


一面の雪に子供のパーバションは目を輝かせ、

雪の上にわざと倒れる。

彼女は・・・日本に旅行に来ているようだ・・・。


「ねぇ・・・。アナタ・・・。」


そこで、長い、黒髪の少女が雪の上に倒れているパーバションに話しかける。

紫と紅のオッドアイ・・・。

子供の蝶亡・・・のようね・・・。


「なぁに?」


パーバションは呑気に蝶亡に答える。

蝶亡からは殺気を感じる・・・。

でも、子供のパーバションは全く気付かないようだ・・・。


「こんな所で転んでいたら・・・。良くないモノが来て、

食べちゃうヨ・・・?」


蝶亡は目を見開いて、精一杯にパーバションを脅す。


「良くないモノ・・・?

なら私と遊ぼ!!」


「・・・え・・・?」


だが突然、パーバションは立ち上がると蝶亡の手を掴む。


「お父さん、言ってた!

楽しそうにしてると良くないモノは寄り付けなくなるって!

だから一緒に楽しく遊べたら良くないモノは来ないよ!」


「・・・!!私と・・・遊ぶ・・・?」


「うん!」


そう言って、パーバションは蝶亡の手を取ったまま走り出す。

それに蝶亡も一緒に走り出す。

・・・。そうか、蝶亡が言っていた最初に襲った子供って・・・。

パーバションだったのか・・・。

やたら蝶亡がパーバションに情を移しすぎていたのはこのせい・・・。


気が付けば、パーバションと蝶亡は楽しそうに子供らしく

雪で遊んでいた・・・。

妖怪の蝶亡がまるで、“雪ん子”のよう・・・。


「これから、この子達が殺し合うなんて・・・。

残酷極まりないわ・・・。

これだから人間は愚かなのよ・・・。」


私はその場を退いた。

これ以上は耐えられなかった。

だってあまりにも、残酷過ぎる・・・!











・・・・・










現在に戻ると、そこにはもうエヴはいなかった。

どうやらエヴはパーバションの遺体を持って、帰っていってしまったようだ。


「・・・。まぁ・・・。都合が、いいわ。」


私はポツリと呟く。

さて、あともう一匹くらい、妖怪と契約を結びたいのだけれど・・・。



「クス・・・。

今宵の最後の契約者は誰かい?


“雪女”・・・?

冷たくて儚すぎるから、触れやしない!


“塗壁”・・・?

戦いには全く向いてやしない!


“覚”・・・?

その眼は我が既に手に入れて、役に立ちやしない!


・・・。なら残されるは・・・。

“白面金毛九尾の狐”・・・・!!


さぁ、さぁ、

狐はどこだい?


さぁ、さぁ、

尾を出せ、火を吹け、コンと鳴け!


我にその力を見せつけ、その姿を現せ、

我は逃げも隠れもしないから、堂々と襲いに来るがいい!


今宵の最後の契約を成そうか・・・。

悲しい悲しい夢に微睡ろうか・・・。


ゆらりらゆらゆらり、ひらりらひらひらり、

ドロリドロドロリ・・・。


今宵、流れるは狐の血?

承諾の鳴き声?結末は狐のみが決める・・・。」


私は歌いながら、不気味な古屋敷を歩き回る。

この歌は今、なんとなく思い浮かべた単語で歌ったモノなので、

歌詞やテンポはめちゃくちゃだ。

まぁ、いいだろう。

どうせ聞いてるのは妖怪だけだから。


上手く行けばこれを聞いた“白面金毛九尾の狐”が出てくれるかもだし。


「すっごく綺麗な歌声なのに、

散々な内容だな?蝶亡様を死に導いたのはお前か・・・?」


「あら、出てきてくれたようね、

“白面金毛九尾の狐”・・・。」


パーバションに取り憑いていた時の、

金髪の女の姿で現れると思ったら、

人間くらいの大きさの大きな狐の姿で現れた。


「・・・。ええ、蝶亡を死に導いたのは私よ。」


「・・・。そうか。

あんな素晴らしい方に・・・・一体、何の怨みがあって・・・?」


「怨み?確かにいっぱい怨みを抱いているけれど、

それは蝶亡に対するモノではないわ。

彼女に対して抱いている感情はない。

完全な無関心よ。」


「・・・!!

あれだけの方を見て、無関心・・・?」


狐は驚く。

妖怪はいいわね・・・。

長い間生きているから、周りの誰かが死ぬ事に慣れている。

だから、死んでも無駄に暴れたりはしない。

至って冷静なままだ。


「・・・。お前・・・。

許さない・・・!!」


「と、この狐は例外だった模様!!」


狐は九つの尾を広げ、低い体制を取ると、

風の妖術で突風を引き起こす。

私は吹き飛ばされそうになるが、必死に堪える。

これは・・・ちょっとヤバイかも・・・!!


私は咄嗟に氷の弓矢を造り出し、矢を狐に放つ。

風を真正面に受けている為、矢は風を受け流す形でそのまま狐を襲う。

よし、まず私の読みは正解した・・・!

これに狐はどうする・・・?


狐は氷の矢を目前で狐火を使って溶かし、

その殺傷能力を消す。

チッ・・・。氷を何で、私はセレクトしたんだ・・・!?


私は召喚魔法で剣を召喚する。

中世のナイトが装備した物だ・・・!


「西洋かぶれしてるな・・・!

人間・・・!!」


「私を・・・・人間と一緒にするな・・・!!

私は、吸血鬼だ!!」


「吸血鬼・・・・?

クッ、アハハハッッ・・・!!

私を笑わすな!吸血鬼なんているワケがない!

それに、お前は人間の匂いがするからな!!」


「妖怪のお前が言うな!

吸血鬼はちゃんと存在してる!!

あと、人間の匂い。どうやったら取れる!!?」


「私に聞くな!!?」


私は剣で狐に斬りかかる。

本物のナイトさんが見たら鼻で笑いそうな程、下手くそで腰が入ってない

全く剣術を心得てない私である。


「・・・。下手くそ。」


西洋かぶれに慣れていない狐にさえ鼻で笑われた。

でも否定出来ない・・・!!

なんなんだ、この悔しさ・・・!!


「いずれは誰かに剣術をレクチャーしてもらう予定なのさ!!」


「つまり、今は素人以下の腕という事か?」


「もう好きなだけ、なじれ!!

私を好きなだけなじって気が済んだら私と契約しろ!!」


「顔真っ赤にして言うな。

それだけ気にしてたらそもそも剣術で私に挑むな。

あと、契約しろと言われても、内容を全然詳しく話してないから

その話に乗ろうにも乗れん。

まぁ、よほどの事がない限り、そもそも人間の頼みなんて聞いてやらないが。」


狐は簡単に私がヤケっぱちに振り回す剣を避ける。


「アハハハ・・・。一理あるねぇ~。狐さん?」


「図に乗るな人間。」


「だから私は吸血鬼!」


狐の一言でブチギレ。

私、剣に炎を纏わせて炎の剣を創りだすと適当に振り回す。

さすがに下手くそでも、炎の剣そのものは十分、脅威でしょう?

狐さ~ん?


だが、狐、ひょいひょいと炎の剣を飛び越えて避ける。

なん・・・・だと・・・・!?

マジか・・・!!


「ねぇねぇ!!

狐さん!!取引をしようか!!」


「取引か?内容によるが聞くだけなら聞いてやろう。」


「もし、この勝負で私が勝てたら狐さん。

私と契約を交わして頂戴な!!

その代わり、狐さんが私を負かしたら好きにしていいわ!!」


「ほう・・・?

何をされても文句はないな・・・?」


「ええ、文句はないわ!!」


「例え、生きたまま食われてもか?」


「・・・ええ、いいわ!!

焼くなり食うなり煮るなり、外で干して食うなり。

好きになさい!!」


「例が具体的だな・・・。まぁいいだろう!!」


狐は軽やかに私に向かって駆け寄って来る。

すぐに殺す気かしら・・・?

でも、舐めないで!!


狐が私に飛びかかったその瞬間、

私は鎖を力で操り、空中の狐を一気に縛り上げた。


「!!?何だこれは・・・!!」


「鎖よ、く・さ・り。

私はまだ殺すとかバトルとか全然やった事のない、

ド素人だけど、鎖を操る事だけは経験者なの。

だから、鎖の迷路に狐さんを迷わせたり、

この通り縛り上げたり、

そういうのだけは出来るわ。」


「・・・!!」


「狐さん、貴女の負けよ。

だから約束は守って頂戴。

約束を今更、破るのはとってもダサいと思うわよ・・・?」


「・・・。私も・・・同じ事を思う・・・。

約束は・・・守ろう・・・・。」


狐は諦めたのか、

今まで必死にもがいていたが

もがくのを止める。

理解のいい人で良かった・・・。

ま、人じゃないけど。


「じゃ、契約は成立。

仲良く、しましょう?」


「・・・。仲良くなれるとは到底思わないが・・・。」


「さぁ・・・?

どうなるかしら・・・?」


私は狐の頭を撫でる。

・・・最高の撫でごごち。

なんだこれ、めっちゃ“もふもふ”なんですけど!?

しかも、暖かい。

ひぇ~。これが動物のぬくもりか・・・!!


「・・・。」


狐は黙って目をつむり、

気持ちよさそうにする。

ふっ・・・。

腐ってもイヌ科に変わりはないようだ・・・。


さて・・・。次は・・・。

サンジェルマンに報告か・・・。

・・・怒られそうな感じですが、大丈夫・・・かな・・・?

次はサンジェルマン伯爵が登場致します。

実在の歴史の人物です!

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