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妖怪事件と銃少女  作者: 黒炎 ルカ
パーバションの報告
3/11

化け猫と遭遇。

覚の戦いで謎の勝利をした・・・。

あれは戦いとしては成立しているのか解らないが、

とりあえず戦いとする。

その後、私はエヴと共に古い町の捜索を続けた。


あの謎の勝利のワケが知りたい所だが、

手がかりになりそうな物は何もない為、全く解らない。


「パーバション様。

何かを感じましたでしょうか?」


「ああ、

確かに感じる。あの時の恐怖をな・・・。

場所は・・・。あの大きな屋敷、と言った所か・・・。」


私は川の向こうの方に見える立派な古屋敷を指差して言う。

蝶亡に初めて遭遇したとき、私は未だかつてない恐怖を覚えた。

それは今もなお変わらない。

その為なのか、蝶亡が近くにいるとあの時の恐怖心を強く、

鮮明に思い出す・・・。


紅ドレスの女との戦いの時、

私になら蝶亡を見つけられると言ったのは、

この事からである。


「・・・。ほう、オマエ達が蝶亡様に害なす人間か」


「何者だ?」


不意に、声をかけられ私は銃を取り出す。


「まさか、覚のヤツを気絶させる人間がいるなんて夢にも

思わなかったんだにゃ、

さすがは蝶亡様に害なす人間、てトコだにゃ、

本当に只者じゃない、だから、わたしゃ、オマエ達を

殺しに来たのにゃ。それで蝶亡様を守るんだにゃ・・・。」


川の向こうに古屋敷があるため、橋を渡らなければならない。

だが、よりにもよって、ソイツは橋の上で待ち構えていた。


「・・・。にゃーにゃー、うるさいなお前。」


「そりゃ、そうだにゃ、わたしゃ、

化け猫なんだからにゃ~?」


「化け猫か、やたらに妖怪によく遭遇するな・・・。

ではあの紅ドレスの女も妖怪か・・・?」


「紅ドレスの女~?

誰それ、わたしゃ、そんな奴、全く知らないにゃ?」


「・・・。どうやらあの紅ドレスの女は嘘をついてなかったようだ。」


「その紅ドレスの女とやら、どうしたんだにゃ?」


「突然、消えた。

最後まで正体不明のままで、わけがわからないヤツだった。

それに言っておくが、覚も私が気絶させたんではなく、

勝手に発狂して気絶したんだ。」


私は何か誤解をされているようだったので、

誤解を解くために真実を伝える。

別に本当の事を知られてもさほど問題はない。

どうせ、コイツを殺すんだから。


だが、私の言葉を聞いて、

その化け猫は大きく目を見開いて、明らかに驚いていた。

胸ほどの長さの黒い髪に

黄金の瞳はまさに猫らしい出で立ちであったが、

そんな出で立ちで人間らしく驚かれるとは、人間臭いな・・・。


「覚が勝手に発狂して気絶した・・・?

どう言う事だにゃ!アイツは色んな人間の心を見てきたんだから、

発狂なんてするはずがないんだ!」


「発狂するはずがない・・・?

では、どういう場合であれば発狂する?」


「え、そんなの・・・。

本当に狂っているヤツの心を見た時・・・?

いや、違う。

ただ狂っているだけじゃなくて、

酷く心を病んで、心を壊して、それでいて激しすぎる感情を持って、

狂っていたら・・・。覚のヤツでも発狂するんじゃない・・・?」


「そんな奴、現実にいると思うか?」


「・・・。いないと思う。」


「じゃ、どうやったら覚は発狂するんだ?」


「これくらいしか知らないにゃ!!

もしかして、アンタがこのトンデモナイ狂人じゃないの!?」


「・・・!!」


心辺りがあってしまった。

私は狂っていないつもりだったが・・・。


覚は私に言っていた。

“蝶亡様を殺したら自殺するなんて矛盾している”

・・・。私は・・・。狂っているのか・・・?


「パーバション様は狂ってなどおりません!

もちろん、私も狂っていません。

もう、この際、覚が何故、発狂したなんてどうでもいいでしょう?

パーバション様・・・!」


だが、エヴは大声で私に問いかけた。


「・・・!あ、あぁ、そうだ。

今はお前、化け猫と戦うのだからな・・・。」


「ふーん、ま、わたしゃ、

頭は良くないから、蝶亡様に聞けば分かる問題なのにゃ、

今はオマエ達の首を持ち帰るのがわたしゃの仕事なんだにゃ。」


化け猫は橋の上で構え、私達を待つ。

私達は橋の上に移動する。


「さぁ、始めようか。」


「わたしゃに勝てなけりゃ、蝶亡様の御目にかかることは・・・。

ないのにゃ・・・・!!」


その瞬間、化け猫は走り出す、

速い。

気付けばもう後ろにいた。

幸いにも先に反応したエヴが蹴りを入れ、

化け猫が橋の手すりの部分にジャンプをして飛び乗る。

驚くべき身体能力だな・・・。


私は銃口を化け猫に向け、発砲した。

それを猫はジャンプして避けようとするが・・・。

弾丸は化け猫の足を撃ち抜いた。


「え・・・?火・・・?」


そして猫は橋の下に落ちてしまった。


私はすぐに橋の下を見た。

化け猫の影が沈んでいくのが見える・・・。


「もしや・・・。

あの化け猫は銃を知らなかったんじゃ・・・?」


仮にも妖怪とはいえ化け猫は猫だ。

生きている動物だ。

銃の恐ろしさを知っているから大抵の動物は銃口を向けられると、

逃げるのだ。

だが、アイツは逃げなかった。

銃を向けられても、避ける自信に満ちた表情を浮かべていた。


「・・・。この町には長らく人は立ち入ってません。

そもそも、ここは日本です。だから・・・。

銃を知り得るのは・・・。難しいと思います・・・。」


「・・・。そうか・・・。だとしたら、

今の化け猫は・・・。哀れだったな・・・・。」


「・・・。」


影が見えなくなるまで私達はただジッと、

止まっていた。

エヴも私も、何も言わなかった。

ただただ、哀れとしか思えなかった・・・。














・・・



わたしゃ、蝶亡様を守る為にあの真っ黒な人間と戦ったのにゃ、

怖い、なんて感じる前に全部が終わってしまったのにゃ、

あの黒い物から小さな矢を放たれるだけだと思ったのがいけなかったんだ。

あれは火の矢、光りのように早く、燃え盛る炎のように全てを壊す。

それを甘く見たわたしゃ、足を貫かれて、落ちちゃった。

痛い、って感じる前に、冷たいって感じたんだにゃ・・・。


深い深い川の水は当然、冷たいにゃ、

雪女は冷たいけど、まだあの人のほうが暖かい。

だって、川の冷たさは無情に非情に冷たいんだにゃ。

だから水は嫌い。


もう、蝶亡様になんて謝ればいいんだろ・・・?

馬鹿だな、わたしゃ・・・。

蝶亡様はとても素晴らしい御方。

きっと愚かなわたしゃを許してしまうんだにゃ。

それで、わたしゃに必要な強さをくれるんだにゃ。


でも・・・。川の底まで沈んだら・・・。

助かりようもないのにゃ・・・。

足を貫かれて、泳げない、

川の冷たさに、先の戦いの恐怖に、足の痛みに、

わたしゃの足は震えて、動かないのにゃ・・・。


これから・・・。どうしよう・・・?


「なら、私と来る?」


え・・・・?空耳が聞こえたのにゃ・・・。

どれだけ、わたしゃ、参っているんだにゃ・・・?


「空耳じゃ、ないよ。

私が覚を発狂させて気絶させた張本人の、

紅ドレスの女よ。」


「紅・・・。ドレ・・・す・・・?」


水の中、口から空気の泡がぶくぶくと立って、

苦しいのを我慢して、声に答える。


「そう。

私の名前はラルー。

ずっと独りで、これからもずっと生きていくの、

でも、いい加減、独りは辛いから、

私と来てくれないかしら?」


独り・・・?

ラルーと名乗る、正体不明の声は怪しいと思った。

けど、わたしゃには、冷たい川の中、これからもずっと

もがき苦しむなんて、あまりにも恐ろしくて・・・。

そんな怪しい声にすがってしまう程、追い詰められていたのにゃ・・・。


「わた、しゃ・・・。行く・・・。

だから・・・。た・・すけ、て・・・・。」


その時、ほのかに暖かい手が、私の手を掴んだのを感じ、

安如に意識を手放したのにゃ・・・。


後にもこの決断は間違いではなかったとわたしゃ思う。

確かに、ラルーはとても怖い人だけど、

あの人は限りなく優しい人でもあることを、

わたしゃ、知っているのにゃ・・・。

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