紅ドレスの正体不明女と遭遇。
妖しげに揺らめく柳。
非常に妖しげで人間の魂のように揺れる。
ユラユラ、ユラユラ・・・。
嗚呼、正に私が日本に対して抱くイメージ通りだ。
「ここで間違いないのだな?」
「はい、間違いございません。パーバション様。」
私は傍らに立つ戦友に尋ねる。
彼女は私のサポートを務めるている。
エヴンという黒い長髪の青の瞳を持つ女だ。
「それにしても、随分ここは古めかしい町並みだな。」
「はい、ここはなんでも、侍三百人斬りのあった土地で、
この町並みを壊そうとすると必ず悲劇が起こるため、数百年ほどずっと放置されている。
非常にいわく付きの場所です。」
「いわく付き・・・。フッ、だったら幽霊に出くわすかもな?」
私は人一人もいない暗い砂利道を進む。
私の名前はパーバション・C・リネル・クネクション。
パーバションと呼ばれている。
私はある国のある組織に所属している。
主な私の仕事は俗に言う“化け物退治”
未知の生物の捕獲を行う者達の実験が失敗したら、
その未知の生物を始末するのが私の仕事だ。
そして、今回も実験が失敗した化け物を始末する為に
わざわざ日本に赴いたという事だ。
「・・・!ぱ、パーバション様・・・。」
「エヴ、どうした?」
私はエヴンの事をエヴという。
こっちのほうが呼びやすいからだ。
「その、赤い・・・。」
「・・・?」
「紅いドレスを着た女が・・・!」
「!?」
エヴの指刺す方向を私は見る、
そしてその姿を目に捉えた。
彩りの少ないこの白黒の町の中だと、彩りというものは
非常に美しく見える。だからなのか、
私はその正体不明のモノを見て、息を飲んでしまった。
色鮮やかな赤のドレス。
肩の部分の袖は膨らんでいて、赤い袖は手首ほどの長さ、
胸の所では茶色の細いリボンが縦に交差に編まれてリボン結びにされている。
赤いスカートにはフリルが裾にあしらわれ、いいデザインだと思う。
膝ほどの長さのスカートから伸びる白い足・・・。
細いその足には不似合いな大きな黒いブーツを履いていて、
細い足が尚更細く見える。
そして・・・。
風にふわりと流れる長い美しい白い髪・・・。
暗闇の中、妖しげに輝く赤い瞳・・・。
あまりにも現実離れした美しさがそこにはあった。
「噂をすればなんとやら・・・。
幽霊でしょうか・・・。」
エヴは冷静に言う。
一見、声だけ聞いているとエヴは非常に焦っているように聞こえるだろうが、
その顔を見ると冷静そのものだ。
「だが、思ったより綺麗すぎる幽霊だな・・・。
それに、こんな和風の場所にあんな西洋かぶれの出で立ちをした
女の霊が出るとは・・・。少し妙に思う。だが・・・。
アイツが今回のターゲットだというのなら、納得がいく。
エヴ、始末をしようか。」
「はい。」
私はエヴの返事を聞き、川の向こうでゆっくりと歩いている女の方へ向かう為、
近くの橋を渡る。
「あらあら・・・。
私に何の用かしら?」
だが、そんな声と共に突如、赤いドレスの女が私の目の前に現れる。
鼻と鼻が当たりそうな程、すぐ目の前に・・・!
驚いた私はすぐ後ろに後退する。
「お前か・・・。実験に失敗し暴走を始めた化け物は・・・。」
「実験・・・?失敗、してないと思うわ?」
実験に失敗した化け物は暴走を始める。
だから殺さなければならない。
「残念だな、失敗しているのだ。
だから私が来た。」
「・・・。貴女・・・。色々、勘違いしていると思うわ。
だから・・・。貴女の名前を教えて頂戴?」
「ふん、教えてやるものか、
ある化け物の報告によれば名前を知っただけでその人物を
殺害する事が可能な化け物がいると聞いたからな。」
「・・・。じゃ、どうするつもり?」
「もちろん、お前を殺す。ただそれだけだ。」
私はポケットの中の銃に手をかけ、女の返事を待つ。
「・・・。そう、なら、殺し合いましょう?」
すると、女は口を酷く歪ませ狂気的な笑みを作る。
それを合図に私はポケットの銃を取り出し、女に向かって発砲した。
だが、それよりも早く女は弾丸を避ける。
早い・・・。人間にはやはり不可能な速さだ・・・。
「所で聞くけれど、貴女達、蝶亡という女を知っているかしら?」
追撃のようにエヴが女を蹴る。
それでもそれさえも女は避ける。
「蝶亡か・・・?
何故、お前が知っている!!」
「ええ、私はその女を探してここを彷徨っているの。
教えてもらえると助かるわ。」
女は攻撃をしようとしたのか、私の目前に現れる。
それに反応した私は銃口を女の頭に突き付ける。
それに私も女も動きを止める。
今、引き金を引けば女を殺せる。
だが、それよりも先に女は私を殺すかも知れない・・・。
緊張が走る。
「・・・。蝶亡の事は知っている。
だが、私は蝶亡の今の居場所を知らない。」
「・・・。そう?じゃ・・・。」
「その前に!」
「・・・?何かしら?」
「お前、何故、蝶亡を知っている。
蝶亡の情報は今、重要最高機密に指定されている。
それを、どうやって知り得た?」
「蝶亡本人に契約を持ちかけられたのよ。」
「!?どう言う事だ・・・!!」
「クスッ・・・。貴女達、もしや、
パーバション・C・リネル・クネクションと
エヴンでしょう?」
な・・・。名前がバレている・・・!?
この女は何者だ・・・!
例え化け物だとしても、こういった情報が知れるはずがない・・・!
「なぁーんだ、そんな顔をするって事は本人で間違いない、
って事ね・・・。だったら、殺すのは止めたわ。」
「は・・・?」
「だって、貴女を殺したら彼に叱られるわ。」
「彼とは誰だ!?」
「・・・。サンジェルマン伯爵・・・。」
「・・・。嘘だろう?」
「嘘だと思うのなら嘘だと思いなさい。
どちらにせよ私は貴女を殺さない。」
もはや目の前の人物が正体不明そのものと化した。
「は、はぁ・・・。
お前は何者だ?」
「私は赤い服の人ですよ。
うん、彼の代理人って事よ。」
「・・・。お前・・・。今回のターゲットじゃないのか?」
「ええ、そうよ。私はただ蝶亡に用があるだけよ。」
「ここに蝶亡がいるのか!?」
「この町のどこかにいるのは確かよ。
でも、残念ながら、詳しい場所は私では特定出来ない。」
「だが・・・。私になら出来る・・・。」
「ええ、ねぇ?一つ頼んでもいいかしら?
私は貴女の心に潜む、そして貴女は蝶亡を探す。
蝶亡を見つけたら蝶亡に、
“赤い服の人が来た、私の心に潜んでな?”とでも言ってくれないかしら?」
「何故、私がそんな訳のわからない頼みを聞くと思う?」
「貴女も蝶亡を探す気になっているから。」
・・・!?
私の考えを読まれている!?
コイツ・・・。本当に只者じゃない・・・!
・・・。何故か、コイツには絶対勝てない気がする・・・。
負けるはずなんてないのに・・・。勝てない訳が・・・・!!
「あぁ、もう、いいわ。
返答を待つのも飽きた。ので・・・。
何が何でも無理やりとり憑く事にしまーす!!」
「は!!?」
女は突然、ため息をわざとらしくつくと、
私の腕を掴む。
痛いッ・・・!なんていう力だ・・・!
手首を捻りちぎられそうだ・・・!!
そして・・・。フッと・・・。
女は消える・・・。
え・・・?
「パーバション様・・・!?」
「エヴ、何故、さっさと助けに来なかった!!?」
「申し訳ありません・・・。
身体が全く動こうとしなかったのです・・・。」
「・・・。あの女の力か・・・?」
「解りません、ですが、パーバション様が銃口を突きつけた
その瞬間、身体が動かなくなったので恐らく、そうなのでしょう。」
「一体、何だったんだ・・・。
あの女は・・・。」
謎の女との遭遇は間違いなく、
完璧な想定外。
だが、その女との遭遇のおかげで私は蝶亡の手がかりを得た。
この古く妖気満ちた町のどこかに・・・。
蝶亡がいる・・・・!!
相変わらず最初辺りは腑に落ちない部分が目立ちますが、
次第に分かっていく使用です・・・!
そして、分かる人には分かるでしょうからぶっちゃけます。
紅ドレスの女はラルーです。やはりラルーが深く関与いたします。