THE WORLD
フィクションです。
「ダンッ。」
銃声が聞こえる。
「ダダンッ。」
また聞こえる。
ここまでそう遠くないな。僕は頭の、どこか遠くの方で、そんな事を思いながら、ふらふらと高いマンションの間の狭い路地を歩いていく。
時は2315年。
5年前に終結した
「第三次世界大戦。」
あれから世界はおかしな方向を向いてしまっているらしい。
僕が通う私立中学で習ったんだけど、サバンナとかいうジャングルは、潤いを、木々を、全てを人々にとられて、砂漠になってしまったらしい。
まぁ、とにかく世界は荒んでるのさ。
僕?
僕は今年の十月で十四歳の、私立なんかに通ってるお坊ちゃま。夏川 信二。
そして、これから僕は死にに行く。
先程、銃声のした辺りへ行くと、男が二人、一人は頭を、一人は胸を撃たれて死んでいた。
別になんとも思わないよ。こんなの、もう当たり前だから。
大人達は、欲に負けた。
その結果がコレ。僕はそんな大人たちを、星の数程見て来た。
そんな大人になりたくないから、僕は、今日こそ死にたいのさ。
生まれ変わったら、星になりたいなぁ、なんて思いながら、僕はそこにたたずんでいた。
カラスが鳴きだして、僕は正気に戻った。
気が付くと、目の前には僕に向かって銃口を向ける男がいた。
僕は両手を広げて、受け入れる準備をした。
「死んだらよ、」
突然の男の声に、僕はそこに直って男を見た。「死んだらよ、何にも残んねぇぞ?あんた、それでもいいのかい?」
ぼそぼそと掠れた声で、話し出した。
「こいつらだって、生きたかったんだよ。きっと。生まれ変わったらなんていうけどな、生まれ変わるのには時間がかかるのさ。そんなのもったいないだろ」
銃口は突き付けられたまま。でも、僕は一歩前に踏み込んで少し大きな声で、
「どうして知ってるの?」
って聞いた。
誰にも話した事ないのに。
「わかるさ。そういうもんだ」
含み笑いされた。
それでも僕は
「早く撃って下さい。あなたには関係ないんだから」
とまた両手を広げた。
現実なんて、どうせ腐ってるだろ?腐った世の中で腐って生きて、腐って死ぬのなら。
若さを、心を忘れないうちに。
ズダァアン。
銃声が頭に響いて、遠くなっていった。
気が付いたら、僕は自宅のベットで寝ていた。
「また死ねなかったのか」
部屋の天井をぼんやりと眺めて、僕はそんな事を言っていた。
ズダァアン。
撃たれた。はずだけど。
僕はよけていた。銃弾を。すかさず懐の護身銃で男を撃った。
倒れる男。
何度も、何度も。
僕は男を撃ち続けた。
ああ。僕はもうとっくの間に頭がおかしくなってたのか。
ひょっとしたら、大人だけじゃなくてさ、僕ら人間自体、みんなおかしいのかもね。自嘲気味に笑って目を閉じて、僕は自分の頭を撃った。
ベットから出て、窓を開けた。また朝が来たのか。どうせなんにもないくせに。
遠くに見える町並みをみて僕は呟いた。
「ああ、世界は荒んでる」