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◆3話◆納得…してしまいました

☆☆☆


 目覚めたら、そこは宇宙船のあの部屋では有りませんでした。


 おや?

 ベッドの天涯が違う。

 柱の細工も違う。


 おお!

 お部屋も豪華。

 しかも趣味が良いと云うか品が有る。

 壁紙の金糸も、うっかりしたら成金趣味だけど、手前でグッと抑えて品の良さを失わない。


 ヨダレものです♪

 いえ別にチョロマカスつもりはナイですよ?

 ………いや。

 もはや「私」のモノでしたね………。


 どうやら腕輪のアレコレの間は気を失ってたと思うが、その間に目的地に着いて運ばれちゃったらしい。


 記憶を探れば「この部屋」が「私」のものだとも知れた。


――ううぬ。他人の記憶を「思い出す」のって気持ち悪っ。


 さて。

 ちょっと途方に暮れた。


 毎日お腹一杯食べる為に、私は倹約と金策を常に考えてました。

 毎日お腹一杯に食べ、我が家の栄華を復活させる為に、私は玉の輿を目指して自分を磨きました。

 今のこの私はお金持ちです。



 何を目的に生きたら良いのでしょうか?




☆☆☆


 解っちゃいたけど、凄いわあ。

 キラキラの洪水。

 建物もだけど………なんて云うか、人間が。


 正直引く。

 この世界も上流階級は美形の宝庫なんだな……ならば、この少女は大分生きるの苦労したのかしら。

 元は悪く無い筈だけど、磨き方も知らない色々と宝の持ち腐れ状態ですものね。


 パッと見がやたら地味だし。下手したらブスと云われ兼ねない。

 しかし記憶を探ればそうでも無かった。


――あら?モテてる?


 しかもキラキラの人達にモテモテ。

 この世界では「力」を持つ事が「美人」の条件らしく、この躯はかなりの「力」の持ち主らしく、だからかなり「美人」な訳だ。

 と云うか、力が有るなら美女な「筈」………と云うべきかな。


 美意識自体は特に向こうと変わらないからから、観念的な意味合いかな。それが罷り通るのが凄いけど。



「大丈夫なのか?」


 とキラキラ1号が云う。

 正直。この1号が諸悪の根源とも云えるから、私は恨んでも良いとおもうのだが。


「ええ。少し、楽になりました。」


 私は心配させない様に、笑顔を浮かべて見せた。

 うん。少し体調悪そうなフリでね。

 後は少しお茶飲んだら、俯いて黙ってればヨシ。

 ちょっと疲れた様にソファーの背に凭れるのも良し。


 正直この諸悪さんに気付く迄は、帰還方法を探す気満々だったんだけど。


 困った事に、気付いてしまったから仕方ない。


 別に、彼女が……と云うか今の私が、富豪だったからでは無いですよ?

 そんな理由は、………半分だけですとも。ええ。


 ついでにちょっと新たな、お商売考えついてワクワクしたのも、少ししか関係無いです。


 だって既にお金持ちですものねえ。


 全く。

 困ったものだ。


 何だかんだでモテモテだし。既に富豪とさえ云えるお金持ち。しかも家柄は特上。家族仲は良く。愛情たっぷり。

 既に存在する婚約者も、キラキラで家柄財力バッチリの爽やか青年。



 不自由も不満も何一つ無くて、故に何を目標に生きれば良いのか悩みます。


――あら、何て贅沢な悩みでしょう。


 お金持ちが優雅なのが解った気がする。

 でも「私」が富豪なのって、なんと「家」だけでなく、彼女自身が稼いだからなのよね。

 だったら私もちょっと稼いでも良いのよね?

 正直、絶対儲かると思うの。


 別に、有り過ぎて困るものでも無いものね♪


 うふふ。

 うっかり正体バレて追い出されたり、婚約解消されたりしても大丈夫なくらいは稼ぎたい。


 と、なれば。

 やはりこの身体も。


 キッチリ磨いて、魅惑の美女に成らなきゃだわね♪


 目的が有るって素晴らしい。

 それは。私が貧乏性だからかしら?



☆☆☆


 ベッドの上に起き上がると、私はゆっくり伸びをした。


――よく寝た。


 多分。

 あのキラキラ1号が運んだのだろう。

 総ての記憶をチェックした訳では無いが、船?が帰還したとき遭遇するだろう相手くらいは先に「思い出して」おいたのだ。


 ふと、気配を感じた。

 予兆、とでも云おうか?


 扉を見やれば、それがゆっくりと開くのが見えた。

 メイドのお仕着せを着た女が、俯き加減に入室して。

 私を見た。


「ミィル様。まあ起き上がって大丈夫なのですか?」


 心配そうな眼差しに、ちょっぴり心が痛みました。


 その心は良心と呼ぶのでしょう。






 そして。

 キラキラ達が報告を受けてやって来た。


「だっ」

「大丈夫なのミィル?ああ、まだ顔色が悪いわ。何か温かい物でも。」


 最初に、キラキラ3号美しい男性が心配そうに私に語りかけ………ようとして、押し退けられた。

 キラキラ2号美しい貴婦人が、3号を押し退けて私に駆け寄り、私の顔を両手に挟んで覗き込んだ。


「大丈夫。もう何ともないわ。」


 私は少し無理してます、みたいな笑顔を作り健気に告げた。


「ミィル。あんまり心配させないで頂戴。聞いた時には心臓が止まるかと思ったわ。」


 貴婦人が私を抱き締めた。

 そして、キラキラ2号の肩越しに、キラキラ1号が安堵した様に微笑んでいた。



 3号は父。

 2号は母。


 1号は兄。



 美しい兄は、旦那様と同じ顔をしていた。



――そりゃあ入れ代わりたいだろう。


 家族を「思い出し」た時と、同じ事を思った。


☆☆☆



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