◆3話◆納得…してしまいました
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目覚めたら、そこは宇宙船のあの部屋では有りませんでした。
おや?
ベッドの天涯が違う。
柱の細工も違う。
おお!
お部屋も豪華。
しかも趣味が良いと云うか品が有る。
壁紙の金糸も、うっかりしたら成金趣味だけど、手前でグッと抑えて品の良さを失わない。
ヨダレものです♪
いえ別にチョロマカスつもりはナイですよ?
………いや。
もはや「私」のモノでしたね………。
どうやら腕輪のアレコレの間は気を失ってたと思うが、その間に目的地に着いて運ばれちゃったらしい。
記憶を探れば「この部屋」が「私」のものだとも知れた。
――ううぬ。他人の記憶を「思い出す」のって気持ち悪っ。
さて。
ちょっと途方に暮れた。
毎日お腹一杯食べる為に、私は倹約と金策を常に考えてました。
毎日お腹一杯に食べ、我が家の栄華を復活させる為に、私は玉の輿を目指して自分を磨きました。
今のこの私はお金持ちです。
何を目的に生きたら良いのでしょうか?
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解っちゃいたけど、凄いわあ。
キラキラの洪水。
建物もだけど………なんて云うか、人間が。
正直引く。
この世界も上流階級は美形の宝庫なんだな……ならば、この少女は大分生きるの苦労したのかしら。
元は悪く無い筈だけど、磨き方も知らない色々と宝の持ち腐れ状態ですものね。
パッと見がやたら地味だし。下手したらブスと云われ兼ねない。
しかし記憶を探ればそうでも無かった。
――あら?モテてる?
しかもキラキラの人達にモテモテ。
この世界では「力」を持つ事が「美人」の条件らしく、この躯はかなりの「力」の持ち主らしく、だからかなり「美人」な訳だ。
と云うか、力が有るなら美女な「筈」………と云うべきかな。
美意識自体は特に向こうと変わらないからから、観念的な意味合いかな。それが罷り通るのが凄いけど。
「大丈夫なのか?」
とキラキラ1号が云う。
正直。この1号が諸悪の根源とも云えるから、私は恨んでも良いとおもうのだが。
「ええ。少し、楽になりました。」
私は心配させない様に、笑顔を浮かべて見せた。
うん。少し体調悪そうなフリでね。
後は少しお茶飲んだら、俯いて黙ってればヨシ。
ちょっと疲れた様にソファーの背に凭れるのも良し。
正直この諸悪さんに気付く迄は、帰還方法を探す気満々だったんだけど。
困った事に、気付いてしまったから仕方ない。
別に、彼女が……と云うか今の私が、富豪だったからでは無いですよ?
そんな理由は、………半分だけですとも。ええ。
ついでにちょっと新たな、お商売考えついてワクワクしたのも、少ししか関係無いです。
だって既にお金持ちですものねえ。
全く。
困ったものだ。
何だかんだでモテモテだし。既に富豪とさえ云えるお金持ち。しかも家柄は特上。家族仲は良く。愛情たっぷり。
既に存在する婚約者も、キラキラで家柄財力バッチリの爽やか青年。
不自由も不満も何一つ無くて、故に何を目標に生きれば良いのか悩みます。
――あら、何て贅沢な悩みでしょう。
お金持ちが優雅なのが解った気がする。
でも「私」が富豪なのって、なんと「家」だけでなく、彼女自身が稼いだからなのよね。
だったら私もちょっと稼いでも良いのよね?
正直、絶対儲かると思うの。
別に、有り過ぎて困るものでも無いものね♪
うふふ。
うっかり正体バレて追い出されたり、婚約解消されたりしても大丈夫なくらいは稼ぎたい。
と、なれば。
やはりこの身体も。
キッチリ磨いて、魅惑の美女に成らなきゃだわね♪
目的が有るって素晴らしい。
それは。私が貧乏性だからかしら?
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ベッドの上に起き上がると、私はゆっくり伸びをした。
――よく寝た。
多分。
あのキラキラ1号が運んだのだろう。
総ての記憶をチェックした訳では無いが、船?が帰還したとき遭遇するだろう相手くらいは先に「思い出して」おいたのだ。
ふと、気配を感じた。
予兆、とでも云おうか?
扉を見やれば、それがゆっくりと開くのが見えた。
メイドのお仕着せを着た女が、俯き加減に入室して。
私を見た。
「ミィル様。まあ起き上がって大丈夫なのですか?」
心配そうな眼差しに、ちょっぴり心が痛みました。
その心は良心と呼ぶのでしょう。
そして。
キラキラ達が報告を受けてやって来た。
「だっ」
「大丈夫なのミィル?ああ、まだ顔色が悪いわ。何か温かい物でも。」
最初に、キラキラ3号美しい男性が心配そうに私に語りかけ………ようとして、押し退けられた。
キラキラ2号美しい貴婦人が、3号を押し退けて私に駆け寄り、私の顔を両手に挟んで覗き込んだ。
「大丈夫。もう何ともないわ。」
私は少し無理してます、みたいな笑顔を作り健気に告げた。
「ミィル。あんまり心配させないで頂戴。聞いた時には心臓が止まるかと思ったわ。」
貴婦人が私を抱き締めた。
そして、キラキラ2号の肩越しに、キラキラ1号が安堵した様に微笑んでいた。
3号は父。
2号は母。
1号は兄。
美しい兄は、旦那様と同じ顔をしていた。
――そりゃあ入れ代わりたいだろう。
家族を「思い出し」た時と、同じ事を思った。
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