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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
元最強神・善なる素行

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57.「……いっぱいいる」

「シレーナ様! ご無事で、何よりでございます」


 半球体が弾けて中から現れたのは、人魚姉妹と同じく耳がヒレの形をした半魚人だった。良くある顔が魚や下半身とかじゃない。頭から縦に半分が魚だった。

 パクパクする人魚は、急いで水の中へ飛び込む。そして、先程と同じ姿に変身して水面から顔を出した。


「じいや⁉ その乗り物」

「はい、濁り水が透明になったことを知りまして、急遽作らせました。この膜で覆った物はすべて見えなくなります」

「え? それって、僕と同じ……。犯人とも同じだし、透視の魔法使いって実は多いの?」


 硝子かと思ったものは魚のヌルヌルした膜らしい。

 騒がしくしていて人が集まるかもしれないと、外へ出るじいやに説明した人魚のシレーナは、アレスたち三人を強引に乗り物へ押し込める。

 幼女はシレーナの妹に手を引かれて水中へ飛び込んでいた。


 濁り水は水面だけじゃなく内部まで白濁のように水中で生息しているだろう全てを隠している。

 膜に覆われた乗り物はゆっくり沈んでいき、内部へ水が入ってくることもなく息もできた。膜以外の部分は、貝殻を繋ぎ合わせて作ったらしい。器用なものだと感心するアレスと裏腹に、二人は顔を強張らせている。


「こ、これ……沈まないですよね⁉ 息続かない距離って」

「ははっ……きっと大丈夫だよ。何かあったらすぐ水を出して人工呼吸して貰えたら……」


 最悪の未来を語るクラトスに怯えるタレイアを煩わしく思っているアレスは、濁り水から暗闇へ変化した海底を見据えていた。

 さすがに暗闇で閉ざされた深海じゃないだろうと考えた結果、洞窟内を通っていることへ気づく。

 濁り水は洞窟を隠す目的を担っていたのだと。


 アレスの予想が的中したようで、青く透き通って見える海底が視界を照らした。


「また新しい世界を見たな」


 鮮やかな色合いの魚が泳ぎ、少し遠目に見える巨大な貝殻や珊瑚などで作られた都が見えてくる。

 いくつも世界を見て回っていたアレスでも、海底は初めての体験だった。


 都には人型に近い亜人種の姿があり、アレスたちを珍しがって近寄ってくる。さながら見世物のような形で、珊瑚礁に囲まれた一つの巨大な巻き貝へ入り込んだ。半分くらい進んだところで、水中から浮き上がり覆っていた膜が開かれる。


「ひぃ……!」


 最初に声を上げたのはタレイアで、空気があることにホッと息を吐きだしていた。一番に地面へ降り立ったアレスは貝殻らしい音をさせる床を眺める。

 巻き貝の中だからか、壁や床すべて白くて硬い音をさせた。

 水面から出たはずなのに後からやってきたシレーナたち人魚は人間じゃなく素のままで、水のない場所を泳いでいる。


「此処は少し特殊なんです。魚や人魚も泳げて、地上と同じく空気もあって人間も活動出来るので、安心してください」

「思ったよりも退屈しなさそうだ」


 巻き貝だけあって通路は曲がりくねっていて、シレーナに案内されるまま上の方へ向かう。

 訪問してすぐだったが、これから宴をするらしい。その前に両親へ挨拶して欲しいと言われた。

 他の貝殻よりも厳かな雰囲気からして、アレスは嫌な予感を覚えている。確実に面倒くさい案件だと。


「此方です! そして、父と母です」


 なぜか専用の袋から大事な卵も取り出して両手で大事そうに抱いている人魚から、紹介された人物へ視線を向ける。

 明らかに綺羅びやかな服装で、厳かな冠を被っていた。アレスは小さく息を吐き無言のままで、困惑するシレーナを見て代わりに苦労性のクラトスがぎこちない笑顔を向ける。


「は、初めまして……僕はクラトスって言います。えっと……濁り水を元に戻した者です。それから、こっちがアレス……彼女たちを奴隷商から救い出して、此処まで送り届けました」

「奴隷商⁉ なんてことでしょう……」

「それは誠か。まさか、人魚を奴隷にしようなどと愚かな人間が」

「あれぇ……僕、余計なこと口走った?」


 挨拶しにきたはずが、クラトスの余計な一言で両親の顔は恐ろしい形相へ変わってしまった。

 まだ話をしていなかったようで、慌てるシレーナが二人の前に卵を掲げて見せる。すると、怖い形相は穏やかなものへ変わり、母親が大事そうに卵を抱き寄せた。

 そして、詳しい説明を聞いた両親は深く息を吐きだして柔らかい笑みを向けてくる。


「そうか。私はこの都を治めている……人間で言うところの国王だ。娘たちを救ってくれたこと、感謝する」

「え……? ていうことは……まさか、人魚ちゃん……」

「大変申し遅れました。(わたくし)、シレーナと申します。人魚の国の第一王女をしております。あの卵は、第一王子でした……」


 事実を聞いた二人は凍りつく。但し、アレスと幼女は表情を変えない。幼女なんて物珍しさから話すら聞かず、仕事をして泳ぐ魚に対して目を輝かせて見ていた。

 アレスも大体予想していたようで、話すこともなく宴に招かれるまま席へつく。

 緊張して貧乏神のように震える二人と違って、幼女の様子を気にしていた。


「おい、感謝はされたが(わらべ)の呪いに変化はあったのか?」

「え……もしかして、キミ。そのことしか頭になかったの……」

「当然だ。なんのために面倒事へ首を突っ込んだと思っている」

「うわー……そのブレないところを見習いたいよ。これは王者の貫禄以上だな」


 皮肉にも近い言葉すら気にしていないアレスは、クラトスへ幼女を調べさせる。隣ではお酒をもらってまた酔っているタレイアを幼女とシレーナが介護していた。

 少しして顔を赤らめる幼女がアレスの組んでいた片膝へ頭から倒れ込む。

 幼女から微かに酒の匂いが漂ってきた。酒豪だったはずの幼女が酔うとは思えず、退かそうと試みて変化に気づく。


「……こいつ。寝ていないか?」

「え? あー……僕もいま見てみたんだけど。二つの呪いが解呪されているみたいだよ」

「一つは不寝(ふしん)の呪いか……。もう一つはなんだ?」


 答えを聞く前にすぐ近くから「ぐぅぅぅう」と盛大な音で横のクラトスが笑いを堪らえていた。

 まさかの不感の呪いまで解けたらしい。八つの呪いという大きな数字が、四つにまで減ったのはアレスにとって願ってもないことだった。


「あーでも、いつ誰がは分からないからね。多分、僕の予想としては人魚の二人……だと思うけど」

「貴様の予想通りなら、此処に来たのは無駄骨だったわけか」

「はは……って、怒らないでよ⁉ 人との交流はキミにとっても大事だからね」


 アレスが静かなのを好むことを知っているシレーナも、話しかけることなく視線だけが刺さっている。

 一人だけ孤立したようなアレスのもとへ思いがけない人物が歩み寄ってきた。


「すまない。貴殿だけ楽しんでいない様子だったからな。娘たちから聞くに、報酬なども不要とのこと。但し、この世界で重要な情報なら貴殿にとっても悪くない話ではと思ってな」

「――重要な情報か。それは、情報として価値のあるものなのか?」

「亜人種以外の人間にとっては、それなりかと思っている。それから、この都にも関わるため、他の者へ話すのも初めてだ」


 二人の間だけ時間が止まったかように流れる空気は変わり、幼女をクラトスへ任せ重い腰をあげたアレスは微笑して応えた。

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