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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
元最強神・善なる素行

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53.「……みかいたくち」

 アレスが話を聞かなかった魔物は新種らしく、この土地にはいない遺跡から溢れ出た魔物だった。

 一度宿へ戻ろうと振り返ったところで、騎士団員に馬車へ乗せられる亜人種たちを目撃する。その横には、馬車のような大きな檻へ入れられた罪人たちの姿もあった。


 軽く手のひらを揺らして近づいてくるユースたちは関係ない依頼のため、捕らえた闇市関係者や行き場のない売物だった亜人種を連れて王都へ戻ると話しかけられる。


「今回は本当に助かったよ。御礼に協力したいところだけど、この人数だからねぇ。それに彼女も護衛しなきゃだから、ごめんね?」

「す、すみません……! 行きは……クラトスさんもいて……安心、だったんですが!」

「皆さんが無事に任務を終えられるのを願ってます!」


 それだけ言ってユースたちは颯爽と町を出て行った。宿屋へ戻ったアレスは、タレイアとクラトスに確認する。

 未開拓地で戦力として使えるかどうかの――。


 タレイアの武器はエルフらしく弓だ。この世界では魔法が精霊による贈り物のようなものであるため、魔力量の多さだけ。実力については女で百年以上一人旅をしていることだった。さすが、長命種は時間の感覚が違う。


 対してクラトスは透視魔法使いの呪い師だが、王都でマイスターの称号を得てから旅をしていないらしい。実力差は明白だ。


「分かった。貴様は人魚娘の護衛だ。素材採取は俺と(わらべ)、タレイアで行く」

「へ……? わ、わたしですか⁉ 未開拓地でお役に立てるでしょうか……」

「基本的には(わらべ)が前線で戦う。貴様は後方担当だ。逃げる際に、種族の能力を存分に活かせ」

「分かりました……!」


 各自一旦部屋へ戻って軽く準備をしていると、扉を叩く音で中断する。開けた先にいたのはタレイアだった。両手には革の袋を二つ手にしている。

 小ぶりなサイズと大きめな物。良く見ると、アレスと幼女が手にしている物に似ている。


「あ、あの……。これ、前にアレスさんが言っていた収納バッグです! 時間があったので作りました」

「ほう……。どのくらい収納出来るんだ?」

「こちらは十キロくらいです!」


 何も言わないアレスに代わって歩み寄ってきた幼女が『ありがとう、おねえさん』と魔法紙を見せてタレイアの涙腺を崩壊させていた。

 幼女に抱きついて泣きながら頭を撫でるタレイアを放置して、アレスは荷造りを再開する。


 少しして準備が終わると、下の酒場へ集合した。クラトスと人魚も面識があるため問題はなさそうで、妹も紹介した後だった。


「それじゃあ、僕らは大人しく宿の部屋で待機してるから。気をつけてね」

「ああ、すぐに戻る」

「行ってきます……!」


 終始ぎこちないタレイアを放置して、アレスは先頭の幼女へ指示を出す。

 クラトスから貰った地図を手に、町から出て森へ入った。森を抜けた先に、未開拓地の道があるらしい。


 歩き始めた森は比較に高い木も少なくて空を一望出来る。町の人間も木の実や山菜、キノコなどを採りに来ているらしく、靴で踏みしめられた道をしていた。

 森を歩いている間にタレイアも落ち着きを取り戻して鼻歌を歌っている。さすがエルフと言うべきか……森の動物たちが集まってきていた。


 アレスが周りを見ながら考えていると、先頭を歩いていた幼女が足を止める。

 明らかに安全な森と、危険への入口のような境界線があった。


「ふむ。あっちには、看板まであるようだな」

「ですね……。此処から、ドキドキ体験の始まりですか……何も居ませんように!」


 少し先が本来の入口なのか、木の板で出来た大きな看板に『未開拓地。自己責任』と書かれている。簡単で分かりやすい。

 立ち止まった幼女は次の指示を待っているようで、短い尻尾が左右に揺れて鼻息を荒くしていた。

 さすが竜人の血と言うべきか、子供ながら戦うことは嫌いじゃないらしい。


「此処からが本番だ。貴様は、周囲を警戒しながら現れた魔物は始末しろ」


 ビシッと敬礼する幼女は誰かの真似をしている。

 二つ目の呪いである無匂(むこう)が解けたことで、竜人本来の匂いで敵を嗅ぎ分けることも可能になった。

 タレイアは見た目の愛らしさと、強さの相違に当てられているようで天を仰いでいる。


 再び歩き出した幼女の後をついていくと、一歩踏み出しただけで肌で感じる空気が変わった。森よりも空が開けて明るいはずなのに、静寂の中で誰かの視線を感じる。


 それも、複数の――。


「――油断するなよ」


 体で理解しているだろう幼女に一言発破をかける。振り返らずに強く頷く幼女は、先ほどよりも重く地面を踏み締めて歩き出した。

 未開拓地の先は草木の少ない平坦な場所。見晴らしは良くて、魔物に先手を取られる心配がなく見える。

 但し、枝しかない異様な細い木に、温泉地で見た魔鳥の姿があった。見た目は紫がかった黒で艶のある大柄の鳥だ。

 幼女の頭くらいはある大きさで、主に死骸へ群がるのだが、食欲に飢えているときは赤子を狙って丸呑みにすると『初心者向け野宿Ⅱ』で書いてある。


 初心者に向けて書く文言じゃない。但し、人間じゃないアレスは全く気にしていなかった。


 しかし、先へ進むにつれて一羽一羽と増えていく。人間の中で一番強い竜人も、魔物からしたら獲物なのかもしれない。


 ふと魔鳥が一斉に横を向く。カサっと言う草が揺れる音で、同じ方を見据えた。

 枝のように細い手足。その先端に細長い若葉のような何かが付いた亜人種でもない奇妙な姿。首から上は無く、少しだけカマキリに似ているかもしれない。


 但し、全長は二メートルを超えている。その奇妙な容姿に恐怖を覚えたタレイアが一歩後ろへ下がった。

 僅かな音がして、ゆっくりと動いていた魔物の足が止まる。頭がないことで前後どちらを向いているかも分からない魔物は、僅かな音を拾ったように視線を変える隙すら与えない。


 それは瞬きをした、一瞬の出来事だった。


 まぶたを開いたときには、アレスとタレイアの間へ魔物がそびえ立っていた――。

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