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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
元最強神・善なる素行

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50.「……もえてる」

 獣化の呪いは、幼女の体で獣化出来る便利なものじゃなかった。どこかに待機していたユースの部下によって全員が捕縛され、奴隷たちも保護されすべてが終わってホッとした瞬間。焦点が合わなくなった幼女は眠ったように意識を失った。

 不寝(ふしん)の呪いは継続されているため嫌な予感を覚えたアレスが警戒したのも束の間、意識を失ったはずの幼女が思い切り息を吸い込む。


「おい……止まれ」


 一瞬だけ【従属の首輪】が反応して動きを止めた幼女は、一歩遅れて口から炎を吹き出した。明らかな暴走。

 以前、獣化で暴走する者がいると言っていたことを思い出す。『獣化の呪い』の効果は、有り余った力の暴走だ。


 裏方で部下へ指示を飛ばしていたユースも異変に気づいて戻って来る。


「ちょっと……これは、どういうこと?」

「……オレが知りたい。いや、見たままの暴走だ」

「……なるほどね。暴走した亜人種の止め方は習ってないよ」


 さすがに笑顔を崩す男へ思わず口元は緩んでしまった。フウルも慌てた声を上げ、切羽詰まる中でアレスだけは平然としている。


 幼女が放った炎は作られた空間を破壊して地下水路への穴を開けた。【従属の首輪】による支配さえ凌駕する『獣化の呪い』を止める方法は浮かばない。


 獣のように暴れ回る幼女は見る影もなく、見境なしで牙を剥く。


「何か良い方法はないのかい?」

「あったらしているだろう」


 正論にぐうの音も出ないユースは部下を非難させ始めた。【従属の首輪】で能力を封じられていたフウルも、今だけ主であるユースの命令で馬鹿力を発揮して幼女の止め役をしている。


 疲れ知らずなのか、一向に収まる気配のない幼女を見てアレスは一つだけ思いついた。


「あの娘に、(わらべ)をこちらへけしかけさせろ」

「え……君、自滅したい性格かい?」

「貴様の目は節穴か……。オレが、あんな獣の成り損ないの子供に殺されるわけないだろう」


 フウルに指示を出したユースの意図する行動で、幼女が標的を変える。

 アレスは眼鏡を外してユースへ投げると、獲物としての魅力が上がったのか獣の形相で襲いかかる幼女が口を開いた。


 炎を吐く動きは把握しているアレスが幼女より先に動く。距離の近くなった幼女は慌てた様子をしたが、一歩早くアレスは自らの拳を口の中へ押し込んだ。


 背後にいたユースや正面のフウルも目を見張る。口を塞がれて幼女が取る行動は一つだけ――。


 鋭い牙が薄い皮膚へ刺さる生々しい音に、ポタポタと鮮血が垂れる。


「――この、問題児が……」


 一瞬だけ顔を歪ませるアレスを見た気絶しているはずの幼女が飛び退くように口を離した。

 幼女の中であのときの光景が思い浮かんだのか、頭を押さえながら出ない声を上げる。実際は、叫んでいるつもりで天井に向けて口を大きく開いているだけ……。


 そして、溢れる感情と共に機能を停止したようで一瞬だけアレスへ視線を向けた幼女は倒れ込む。


 身を挺して幼女の暴走を止めたアレスの拳からは血が噴き出していた。握っていた拳を開こうとしても痛みで動かない。

 すぐにユースが救護班を呼んで血止めや包帯で処置してもらう。

 気絶した幼女はフウルが代わりに面倒を見ていた。


 保護された妹人魚も人型になったのか、心配して駆け寄ってくる。

 そのとき、状況を知らずに実況見分ということで大人しくしていた主催者が連れてこられた。ユースは事情を説明し、一旦持ち帰るよう話をしている。


 はたから見たら幼女の威圧とユースの圧で萎縮した中年男だったが、痛み止めを打たれたアレスは少しずつ妹人魚と距離を近づけていることへ気づいた。

 団員へ気づかれない位置を保って、おかしな動きをして見える男。僅かに足先が動いている。


 そして、団員が一瞬目を離したときだった。


「――実刑を食らって死ぬ運命なら、お前も地獄へ道連れだ!」


 一瞬のうちに錠の鎖が伸びるギリギリまで走り込み、主催者の男は妹人魚の首輪へ触れようと手を伸ばす。男に魔力を込められて契約の呪文を唱えられたら詰みだった。


 妹人魚は男の顔を見て恐怖して石のように固まって動かない。


「糞が」

 

 アレスも怪我をしていない利き腕を無心で伸ばし、ほぼ同時に首輪へ触れた。

 信頼関係がまったくない状況。だけど『奴隷商』の男に渡すわけにはいかない。


「謝罪はしない……“従属せよ”」


 『奴隷商』の男と同時に契約(のろい)の言葉を告げる。

 一瞬だけ、時間が止まったようにすら感じられる状況下で、ユースが男を捕らえ木の板へ顔をめり込ませていた。


 その場にいた全員が息を呑む。


 どちらの契約が有効になったのか――。


 二人の者が同時に同じ魔法具を使った場合、権限は魔力の量で決まる。


 【従属の首輪】に刻まれた名前は――獣の主()()()……。


 一瞬だけ肩を揺らす妹人魚は首輪に触れてキョロキョロと辺りを見回していた。これと言った変化はなかった様子で、周りからは短い呼吸音が聞こえてくる。


「こちらの落ち度だ……申し訳ない」


 妹人魚も人型のため話すことは出来ない。ユースの謝罪に対して首を振る姿は、人魚と共通して感じられた。


「君には話していなかったけど、奴隷契約をした場合。主が放棄しない限り、封印の魔法でも解除出来ないんだよ」

「……それで、あの悪足掻きか」


 再び拘束された男は顔を突っ伏したまま悔しそうに喚き散らしている。

 今回ばかりは気を揉んだアレスも短く息を吐いて、痛む掌を撫でた。

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