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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
元最強神・善なる素行

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48.「……たすけたい」

 始まってすぐ、王都での闇市と決定的に違う部分が垣間見える。始まりから、勿体ぶることなく奴隷候補の人間が連れて来られたからだ。

 今までなら最初は貴重な魔法具や骨董品などから始まる。これも、闇市へ来た人間の選別かもしれないが……。現に王都の闇市では、後ろの席へ座っていた数人は帰っていた。

 これが完全会員制の力だろう。


 最初に出てきたのは半獣化した少年だった。王都でしか経験のないアレスだったが、奴隷堕ちしているのは九割――この会場を見渡しても男の奴隷など一人もいない。男の奴隷は見世物じゃなく労働として使われるため、連れ歩く人間がいないからだろう。


 但し、商品として出された半獣化した少年は見た目の推定年齢が十代前半。獣化しているのは下半身で、白馬のような肢体をしている。そして、シーンと静まり返った会場で客の目が向くのは綺麗な顔立ちだった。

 アレスは男性的な魅力のある美形だが、少年は美少女のような作りをしている。


 様々な世界を行き来したアレスは知っていた。極稀に、同性へ性的興奮を覚える人間がいることを……。勿論、女が少女をなんてこともある。現に少数の女会員が十代後半くらいの少女を連れていた。


 静かに異様な眼差しを向けられる少年は体を小刻みに震わせている。少年からしたら会場内にいる人間すべてが、ギラついた獣の光る目でしかない。

 ユースの話しだと、救えるものなら売り買いされる奴隷候補は救いたいと話していた。ただ、現実的には難しいらしい。なぜなら、完全会員制の特徴が()()()()()()だからだ。


 王都の闇市では、すべての商品を売りに出して、売れたものは終了後、内々で支払いから奴隷契約まで至る。

 ユースがぶち壊したお陰でその現場に立ち会うことはなかったが。


「――あの少年は、救えないな」


 無情なアレスの独り言が幼女の肩を揺らす。購入する意思表示の札を握りしめている変態男が数人いた。どれも皆、少女を連れているが男もいけるのだろう。

 しかも、大半の会員が連れている少女の表情はまだ分かるが、変態男たちの奴隷は目が死んでいた。絶望に染まった輝きのない瞳。

 ユースの計画通り会員も根こそぎ捕縛出来たとしても彼女たちの日常は戻ってこないだろう。


 アレスの視線を追って変態男たちの連れている少女を目視した幼女は魔法紙に何か書き出した。


『あのこを、すくいたい。これからでてくるこも』


 現実的じゃない幼女の言葉がアレスの胸へ刺さるはずもなく、代わりにため息を漏らす。


「この会場にいる奴隷と同じだ。一掃することに変わりはない。一度“奴隷堕ち”するだけだ」


 『インパラーレ』では“一生奴隷じゃない”と幼女も聞いていた。但し、八割以上の『奴隷商』ではそれが当てはまるだろう。アレスが幼女へ施したように“従属せよ”の一言で、絶望して精神崩壊を起こすかもしれない。それほど、此処にいる連中は外道だ。


 王都のような歓喜もなく静かに獲物を吟味している目は恐怖でしかない。そんな人間に買われて、奴隷契約されたら……そのあとに救われても心は蝕まれたあとだ。

 見た目では分からない契約の縛り。幼女は何も感じなかったらしく、ユースに二度目の奴隷契約をされたフウルは喜んで涙していた。

 興味本位で聞いてみたら「邪心が一切なくて温かかったから」らしい。人間の曖昧な表現もまだ理解に乏しいアレスだったが、絶望を味わったからこその涙だったのだろうと解釈した。


 つまり、何かしら精神を侵す作用はあるだろう。


「貴様は精神が死んだら肉体も終わると言いたいのか?」


 幼女には難しかったようで首を傾げたが「奴隷化によって肉体の死」と教えたら何度も強く頷いた。

 少しずつ呪いが解けていく過程で、アレス以上に他人の影響を受けている幼子は感情が表へ出始めて面倒だとため息をつく。


 しかも大人の定義を嵌め込めない。元神であるアレスすら、今ではすっかり人間の常識を身につけてきている。


 しかも、アレスが「救えない」理由はもう一つあった。アレスたちの潜入目的は人魚の姉妹だろう少女の救出である。

 それがユースの話しだと、会場にお披露目されるまで裏じゃなく別な場所で保管されているらしい。用意周到と言うべきか、万一を想定しているのは悪党ながら頭が切れるとアレスも褒めるほどだ。


「今から居場所を突き止めるのは現実的じゃない。諦めろ」


 現在は少年について説明をする時間が設けられているが、もうすぐ競りは始まってしまう。

 競りが始まったら十分もしないで決着はついていた。金を持っているかいないか……どこまで出せるかだけ。絶望の時間はとても短い。

 それでも竜人として力があるせいか納得できない様子の幼女へ大人として意地悪な宣告をする。


「貴様を可愛がってくれている人魚の涙を見たいのか」


 この少年を助けたことで次の奴隷候補が人魚の姉妹じゃなかった場合。最悪なのは逃亡されること。そうなったら少数精鋭で当たったユースとフウルだけじゃ見つけ出すことは難しいだろう。


 思わず顔を青くする幼女は呪いのせいで涙は流さない。苦しそうだが、精神的な痛みを感じている顔もしなかった。

 それに獣化出来る亜人種も限られているため、価値は見た目だけじゃない。確実に目玉商品は人魚だろう。


「王都の件を鑑みて、人身売買のみでも最低三人……多くて四人はいるだろう」


 つまり、目玉商品の人魚はまだ会場内にいないことを意味していた――。

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