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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
元最強神・善なる素行

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45.「……どれいになる」

 奴隷堕ちなんて、自ら進んでなる者はそういない。なんせ、共通認識で伝わっているのは“奴隷になったら一生奴隷”なのだから。


 黙ってしまう二人を大きな瞳で見つめていた幼女が魔法紙に何かを書き始める。

 それはアレスさえ目を丸くする内容だった。


「正気か」


 アレスの低く短い言葉に、真顔のまま小さな頭を上下へ揺らす。

 ハッとした様子で覚醒するタレイアが、幼女を抱きしめた。


「駄目です! きっと、幼くて理解出来ていないんですよ……」


 タレイアの言うことも分かる。亜人種とはいえ、七歳の幼女が理解出来るか怪しい大人の話だ。

 一度で全ての人生が破滅する可能性のある奴隷。それらすべてを理解した上で、名乗りを上げたのか疑問は拭えない。


 タレイアは真顔の幼女に一から確認する。今までの旅で得た亜人種の扱いや奴隷について理解した上で、自分が適任だと思ったらしい。


 そんな幼女へ人魚が首を振る『幼子が他人の為に自らの人生を棒に振る行為は良くない』と。

 そこで意を決して奴隷に志願しようとする人魚の両手を幼女が握りしめる。


「でも、本当に駄目なんでしょうか……」

「貴様たちが持ってきた情報の通りなら、そうだろう」

 

 情報元の確認はしていない。ただ、聞いた話は【従属の首輪】をつけた上で、主の名を刻む必要がある。つまり、名目上アレスの奴隷になるということだ。


 『インパラーレ』や『亜人種と奴隷』の本を信じると、身や心も奴隷には染まらないということだったが、不安は拭えない。

 だからこそ、二人で旅をしてきた幼女ならアレスの奴隷になっても構わないという意思表示だった。

 ただ、もう一つ問題がある。


「情報元の信憑性もそうだが、実行する場合【従属の首輪】が必要だ」

「……それはそうでした。確か、魔法具店にしか置いてないんですよね? お店自体、大きな街にしかありません」


 肉体へ奴隷印を刻むことは論外だ。但し、奴隷印を刻むのは呪い師らしい。それらは通常の呪い師に頼めるはずもなく、以前軽く聞いた“呪いによる能力”を得る実験と同じだった。

 つまり、闇市と同じく闇医者のような存在がいる。


「此処から近い大きな街と言ったら王都しかありません。ですが、人間の足だと一週間かかります」

「……仕方ねぇ。前の町に戻るぞ」

「え? もしかして……『インパラーレ』ですか!?」


 『奴隷商』なら【従属の首輪】があってもおかしくない。寧ろ、ない方がおかしいだろう。ただ、八割の魔法具は使い捨て。【従属の首輪】も名前を刻まなくても使用した時点で使用済みとなり、今回のように封印の魔法使いへ解除してもらったら外れて壊れる。だから、出回っている数も限られて高級品だった。


 相手が真正売買の『奴隷商』であっても、魔法具店より高価かもしれない。


 明日の早朝、前の町へ戻ることを独断で決めたアレスだったが、下から馬の蹄が聞こえてきて窓から見慣れた馬車を見つける。


「――あれは、あの老人の……」

「え?」


 三人も近づいてきて窓から覗き込むと、丁度貴族の老人が馬車から出てきたところだった。

 老人に手を差し述べる少女の姿もある。


 一足先に動いたのはアレスじゃなく、まさかの幼女だった。

 しかも窓を開けて、ふわりと小さな体を浮かせて飛び降りる。


「えっ……!? ちょっ!」


 幼女だからとゆっくり降下することなく、重い音を響かせて衝撃で地面が割れていた。

 溜息を吐いてゆっくり立ち上がるアレスと違い、タレイアたちは走って部屋を出ていく。


 アレスが下へ降りたときには大体の話が済んでいたようで、杖を手にした老人と視線を交じ合わせた。


「話はこの娘さんから聞いたよ。詳しい話は、私の館で良いかな?」

「……ああ。貴様の家は此処にあったのか」

「いや、ここは別荘の館があるんだよ。案内しよう。すぐそこさ」


 老人と少女に連れられるまま町から少し外れた場所へ出る。宿からは近かったが、観光地の湖から距離もあることで閑散としていた。その中で、一際目立つ三階建ての館がある。手入れされた古い館は焦げ茶色の木造建て――。


 アレス以外の三人娘は呆気にとられて立ち尽くしている。良く見ると幼女だけは目を輝かせていた。

 そして革袋から取り出した絵本を見せてくる。


「――表紙の絵に似てるから興奮してるのか。単純だな」


 鼻息を荒くする幼女はアレスの言葉を気にせず、タレイアたちにも見せていた。


 大きな扉が開けられると、中から執事や侍女が頭を下げて出迎える。


「どうぞ。我が館へ」


 先を歩き出した老人は、赤いカーペットを踏んで中へ入ると、振り返って手招きをして微笑んだ。

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