44.「……きゅうしゅつさくせん」
犯人を捕まえるのも容易じゃない為、封書を送って貰うことにしたアレスたちは自警団の詰所へ足を運ぶ。
詰所で手紙を書いて賃金を払った。銀貨一枚と言う結構な高さに、タレイアは驚いて口をパクパクさせている。
人魚と幼女はお金を使ったことがなく、理解出来ていなかった。
その間、自警団以外からの情報を集めることにしたアレスはタレイアと別れて幼女と二人で片っ端から町人や観光客を捕まえる。
その中で耳を疑う話を聞いた。あくまで噂話、と釘を刺された上で路地裏の町人が聞いた話だ。
闇市で貴族や『奴隷商』の一部が一掃されたあと。知らない集団が町を出入りするようになった。ただ、商人と偽って潜伏していたらしく自警団にも怪しまれていない巧妙な手口で。
それが、湖の事件以降姿を消したと言う。商人なのだから、移動しただけも考えられたが町人は戸締まりをしていた際「闇市」と聞き慣れない言葉を聞いていた。
聞き間違えとかでないなら、性懲りなく闇市を開催しようとしていることになる。あんなことがあったのに、リスク以上の美味しい話でも出来たのか、すべては湖の事件以降に起きていた。
「――闇市か。まさかと思うが、あの娘も……」
頭に過ったのはタイミングの良いフウルの存在である。上司でもある騎士団長のユースと言う男はアレスですら侮れない曲者だ。
「――なんであれ調べるしかないか」
「じゃあ! 人魚さんの妹さん救出作戦ですね!」
握りこぶしを作るタレイアに釣られて喜んだ顔の人魚は両手を握りしめ祈るような仕草で感謝を表した。
とりあえず王都のときと同じく潜入するため情報を集めることにしたアレスは、幼女と町を徘徊する。
町の中で密かに『奴隷商』の関係者がいるのも把握していた。さすがに奴隷はいないだろうと思っていた矢先、路地裏から出てきた二人の男は怪しいくらい首元を隠した服装をしている。
「――あの二人をつけるぞ」
ただ、奴隷が主と一緒じゃなく行動しているのはおかしかった。真正売買じゃないのなら尚の事――。
表通りに出たかと思ったらすぐ反対側の路地裏へ消えていく姿を追った。
途中で立ち止まって何かを話している奴隷たちに気づき、一歩踏み出しかけた幼女の襟首を掴んで身を隠す。
隠れているアレスたちに気づいていない様子の怪しい男たちは、ひそひそ話し始めた。
「王都で人魚に逃げられて、代わりに僕達が酷い仕打ちを受けるなんて、あんまりだ」
「今度の人魚は小さい子らしいけど……。俺も痛いのは嫌だけど、やっぱり同情する」
『奴隷商』に関する不穏なことを路地裏とはいえ話す奴隷の二人へ違和感を覚えながら、一旦人魚たちと合流する。
アレスでも此処で話しかけて警戒されたら支障が出るからだ。
一度宿を取ることにしてアレスの泊まる部屋へ集まった。普段は、いつでも観光客で溢れかえり宿は満室らしい。今回の事件で当然、宿泊の取り消しが相次ぎ空室になったからだった。
二人部屋ということで、窓側の椅子へアレスが座り、タレイアたちはベッドに腰掛ける。
初めにアレスが確認したいことは一つだった。
「――貴様。本当に肉親なのか? 鱗だけで分かるのか」
質問される人魚は真面目な顔で魔法紙に文字を書いて見せてくる。
『人魚は親の遺伝子を正確に受け継いで、どちらかの特長があります。けれど、他の種族と異なり、血縁以外で同じ色の鱗を持つ者はいません』
帰らない姉を心配して安全地帯から出てきた可能性は大いにあった。
しかも、人魚が卵と共に捕まった場所もあの湖だ。
先ずは事件を解決することが優先事項。情報を整理するためタレイアたちが仕入れた内容の重要性に、アレスが待ったをかけた。
「それはどこで聞いた話だ」
「えっと……宿屋のご主人です。獣人の方だったので、忠告されまして……」
聞かされた話は驚くことだったが、アレスは平然としている。店主が人間のアレスには言わなかったこと。
“完全会員制”の闇市。
しかも、一人奴隷を連れて行ないと駄目な決まりまだとか……。
俯く人魚を揺るがない黒い瞳が覗く。
「――諦めろ。答えは決まっているはずだ」
「で、ですが……!」
「貴様たちは、妹のために“奴隷堕ち”するのか?」
冷たくも真実を語る言葉が二人の胸を突き刺した。
――――――――――――――
【お知らせ②】
11月〜の週間連載日時。
毎週土曜日の20時06分になります。また、第3章〜は章毎で完結しましたら毎日連載します!なので、第2章完結後はお待たせしてしまいますが再開をお待ち頂けましたら嬉しいです。
引き続き、元神アレスと幼女を宜しくお願いします。




