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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
追放された✦元最強神

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21.「……ふぇりちゃん」

 哀しみに暮れる双眸と下から見上げる瑠璃色に光る黒い瞳が重なり合う。絵面的には幼女が馬乗りとなっている状態だ。優男は真剣な表情で告げる。


「――()()()()()を助けたことで、一つ呪いが解けたのさ……ついでに僕の呪いもね?」

「――貴様、誰だ」


 羽根へ触れたはずの小鳥を探してもどこにもいない。代わりに現れた優男。丸い眼鏡をかけて、いかにも胡散臭そうで飄々としている。どこか態度もでかい。


 頭に浮かんだのは、態度もデカくて煩かった小鳥の姿。白髪(はくはつ)の頭が小鳥の腹部分で、青い瞳は頭から羽根を覆っていたとしたら、似ているかもしれない。


 いや、この優男が自分のことを「フェリちゃん」と呼んでいたのならシュールすぎる。笑いすら起きない現状に、優男が大きな咳払いをした。先ほどの飄々とした態度から、目線を泳がす姿は滑稽である。


 幼女を振り落とすように上半身を起こすアレスは、何事もなかった様子で立ち上がって埃を払った。当然、アレスの動作で床へ転がった幼女から鈍い音がして頭から、くの字に曲がって倒れている。


「……フェリちゃん」

「――やめてくれる……無表情で黒歴史を掘り起こそうとするの」


 両手で顔を覆い隠す優男は、明らかに恥ずかしがっていた。マイスターの称号は国王に認められた呪い師だけが持てるもの。そして、優男の首には白金で出来たプレートが彩り『マイスター』と掘られている。目の前にいる優男は、紛れもなくアレスの探し求めていた人物で間違いなかった。


 周囲に散らばった魔法紙や資料を片付けながら、優男は申し訳無さ程度の経緯を話す。ちなみに『フェリちゃん』と名乗りながら、片言で話をしていたのは可愛らしさの表現と雰囲気らしい……。


 あらかた片付いて、予備の椅子を二つ運んできた優男が座るよう促してきた。自分は長机にある背の高い椅子へ座り軽く腕を組む。


「――改めて自己紹介させてもらうよ。僕の名前は、クラトス・マルディシオン。君の探していたマイスターの称号を持つ“呪い師”さ」

「――フェリちゃん……」

「……いつまで引きずるのさ⁉ ――分かったよ、フェリちゃんの設定についても話すから……やめてくれ」


 綺麗な顔で他人の黒歴史を弄ぶアレス()は、妖艶にも感じられる表情を浮かべていた。


 フェリという名前は、幸せの象徴とされる小鳥『フェリックス』から借りたらしい。まさか人間に狙われるとは思っていなかったようで、偶然見つけたアレスたちを少しの間観察していて、王都を目指していることを知り、連れて行ってもらおうと考えたらしい。


 クラトスが実験に失敗して、小鳥の姿へ変身した呪いを解くには並大抵のことじゃ駄目らしく、両手を組んだまま深く腰を落とす。


「最初に言ったけど、僕の呪いが解けたのは君の慈愛さ」

「――捻り潰されたいのか?」

「……申し訳ない。つ、つまり……君が利益なく僕を助けようとしてくれたってことさ」


 もっと深く説明するクラトス曰く、旅をしている間、アレスは小鳥を見返りなど求めず大切にしていたということらしい。少しでも邪心があると呪いは解けないという。それは幼女の呪いにも言えることらしい。

 確実に言えることは、もしも小鳥が正体をばらしていたら呪いは解けず、幼女の解呪方法も分からないままだった。


 だが、そこでアレスは門番とのやり取りを思い出す。あのときは小鳥――改めクラトスの助けがあって突破出来た。そのとき、アレスは完全にクラトスをだしに使っている。

 邪心と言える行動だ。


「ああ、アレかい? 本心と建前……。本音じゃなかった判定かな。呪い師である僕も恥ずかしながら呪いのことをすべて分かって使っているわけじゃない。魔法は精霊の能力を封じた【魔法録】へ触れることで知識を得ている。だけど、どうして精霊は魔法を使えるんだ? ってあるだろう。それと同じさ」


 哲学的なことを口にするクラトスだが、本人も分からないからこそ実験をして失敗したらしい。本人曰く、自分の任務はいかにアレスと心を通わせられて、邪心でない感情を呼び起こせるかだったという。

 つまり、無事に呪いが解けたクラトスの実験は成功したのだ。


 クラトスのことは理解出来たが、幼女も同じように不運の呪いが解けたのなら話は別である。


「――まさか、貴様が(わらべ)に呪いを付与したんじゃないだろうな」

「へ……?」


 思い立った答えは同じ解呪方法だったクラトスが、幼女を呪った呪い師という解釈だった。

 思考が停止したクラトスは覚醒すると首をブンブン横へ振る。


「ちょっ……待って、誤解だよ! 僕の呪いは、僕に対しての気持ち……感情なんだ。だけど、彼女は違う」

「……どう違うか説明しろ」

「えっと、彼女に掛けられた呪いを解く方法は一つだけさ……。君が心の底から良い行いをして、()()()()()()から感謝されることだよ」


 思いがけない言葉にいつも余裕だったアレスは面食らった表情をした。今回、幼女の不運の呪いも解けたのは小鳥だったクラトスが、アレスに感謝の気持ちが芽生えたからということ。

 人間に戻してもらう前から、なんだかんだ言っても見捨てず王都まで届けてくれたことへの感謝だった。


 ただ『心の底から良いこと』というのは、「助けたいから助けた」など幻想に近い。いままで好き勝手、世界を壊してきたアレスにとっては……。

 『他者からの感謝』に関しては、自分がして欲しいことを無償でしてくれた相手へ思うこと。まぁ、二割の悪人や自己主張や評価が高い者は認めないなどいるが。そんな人間はアレスが相手にしないか、滅ぼすタイプである。実際にアレスが壊してきた世界は、戦争ばかりしたり、いずれ滅亡するところしかなかった。破壊した世界の数が多すぎて他の神はもちろん、父神ですら把握出来ていない。


 無言のアレスに自分へ会いに来た目的を問う。一つは提示した幼女の呪いを解く方法だ。共に旅をしてきてアレスが把握出来ているだろう呪いはクラトスも分かっている。


 冷静さを取り戻したアレスは、指を五本立ててから反対の手で三本立てた。

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