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【第二章完結】堕神アレスと竜人の幼女 〜無垢な竜人幼女と神へ返り咲く!ゆる旅、解呪ファンタジー〜  作者: くれは
追放された✦元最強神

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16.「……どきどきする」

 キノコ頭の男と双眸が重なる。明らかにアレスのことを異物だと疑っている瞳。アレスを危険視する目は初めてで、感心して微笑する。


 再び、一人一人並ばされる人の中、一番後ろへ回った。前の方からは小さな悲鳴が上がっている。門番と話をしていた旅人が言っていた血を吸い出す行為によるものだろうか。だが、世界を破壊ばかりしていたアレスも馬鹿じゃない。

 血のような赤い刻印に、微量の魔力も素材で使われていることは気づいていた。


 順番に何かの魔法具を使って行われる行為は、血が媒介だからか、キノコ頭の隣に医療班ぽい服装の女もいる。


 ついに順番が回ってくる頃には、アレスの後ろも人で溢れていた。先ほどの大惨事が嘘のように……。


「次、貴様。名は」

「……アレスだ」

「ふむ……貴族のような身なりで、下の名前はなしか。それでは、此処に利き手を乗せろ」


 簡単な説明すらなく、指示してくるキノコ頭へ一瞬だけ視線を向けたあと、言いたいことを飲み込んで四角い金属板に利き手を乗せる。

 同じ材質の腕輪で固定されたあと、キノコ頭は指輪を取り出した。魔法文字が刻まれた指輪型の魔法具は自在に形を変え、アレスの指へ収まるとすぐ淡く光りだす。魔力に反応したのか、軽い音を出してから一瞬の痛みが走った。この世界へ落とされて初めて味わう痛みだったが、声を上げるほどではなく首を傾げる。

 それからすぐに手の甲へ赤い刻印が浮かび上がった。


 疑っていたキノコ頭も、人だと分かった途端興味が失せた様子で「次!」とアレスへ背を向ける。医療班の女に軽い医療行為を施されると、怪しまれることなく町の中へ入った。


 中にいた門番も怪しむ様子はなく、すぐに二人の待つ路地裏へ向かう。


 町の中は平和で変わらない。他の町もそうだが、家屋との間が空いていて路地裏に逃げやすくなっている。要塞と言われるだけあって重要な場所に間違いない。いくつも渡り歩いてきた町とは違い、分かることも貴族の支配下にあることだけで、仕組みは不明だ。

 町人も何かに怯えたり徴収されている顔色じゃない。純粋に亜人種を差別的な目で見ているだけ……。


 町の中心までは表通りから歩いていき、横道に入って路地裏へ向かった。

 先ほどの会話から、この世界の貴族は家名持ちだと読み取れる。あの男は名乗らなかったが、言動や身なりからして貴族だろう。


「おい。大丈夫か?」


 壁と一体化しているかの如く、身を縮こませローブに包まれた幼女へ声をかけた。

 低く透き通った声を聞いた幼女はバッとフードを取り去って、勢い余ってアレスに抱きつく。


 普段そこまで顔色を変えないアレスも、幼女の行動で一瞬だけ目を大きく見開いた。予想しなかった行動と、布越しから感じる幼女の子供らしい温もり。いままでも、何かしらで抱き起こしたり、崖では肩に担いで降りたりもしたにも関わらず。


 幼女も自分の行動に気づいた様子で、小動物のような動きで離れて物陰に頭から突っ込んだ。


「……貴様は何をしているんだ。長居は無用だ……行くぞ」


 何事もなかったように声をかけ、幼女も頷いて再びフードをぐるぐる巻きにする。慎重に路地裏を駆けていくと、出口までたどり着いた。本番は此処からである。


 まず、アレスが門番の二人を引きつけながら門を開かせて、その間に幼女が外へ出るという単純な作戦だ。

 門番や行き交う町人の様子をうかがう中、疑問が浮かぶ。


 亜人種を分断させていると言っても過言じゃない町の目的はなんなのか。

 強力な能力を持つ亜人種なら、崖の上にある山や森を超えられるだろう。

 ただ、隠れやすい場所には必ずと言っていいほど魔物がいた。今回は運良く遭遇しなかっただけで、前回のように上位の魔物もいる。


「……捕らえられた亜人種は、どんな種族だったか……」


 ほんの少しだけ、興味を持ったアレスだったが、捕らえられたはずの亜人種はもちろん。そのために割いているだろう衛兵の姿もなかった。


 沈静化して並んでいる間に連れて行かれたのかは分からない。それよりも、いまは町から脱出することが先決だ。


 いま一度幼女と小鳥に説明してから、アレスは自然な足取りで門番へ近づいていく。門番は二人で突っ立っているが、談笑などもしていない真面目さだ。

 門番の一人がアレスに気づくと、なぜか姿勢を正す。頭から顔まで隠した甲冑姿のため、表情はまったく分からない。


「……ま、町の者じゃないな。刻印を見せ――て下さい……」


 上擦った声から漏れる緊張と、アレスの容姿に対する高揚――。頭から爪先まで確認してくるような目線で察したアレスは綺麗な顔で威圧した。

 圧倒される衛兵は甲冑特有の音を鳴らし、上の人間に話すような口調となる。もう一人の衛兵も近づいてくると、同じく背筋を正した。


 言われるまま左手を見せると、先ほど付けられた赤い刻印が刻まれている。

 マジマジと見ている二人は「問題ありません」と言って門に触れたことで、門の開閉機能が作動して人一人分通れる道が開かれた。


 ここからがアレスの本領発揮である。コソコソと大きなローブを被った幼女が物陰で待機しているのを確認してから、アレスはおもむろに門へ触れて振り返った。


「――そうだった。貴様たちに聞きたいことがある。刻印は町の外へ出たら消えるということだが、それはどういう仕組みなんだ? 痕も残らないのか?」


 必要以上は喋らないアレスの口から滝のように言葉が出てくる。先ほどまで寡黙だった男が急に捲し立てるような言葉を投げかけてきたことで、衛兵は動揺していた。此処ぞとばかりに、気づかれないよう幼女へ視線を投げる。

 そして、釘付けになるようなアレスの顔から目を離せない衛兵たちは、その隙を逃さず町の外へ出て行った幼女に気づかなかった。


「……なるほど。貴様たちでも分からないことを聞いたようだ」


 感謝に近い言葉を投げかけると、うっとりするような衛兵たちから頭を下げられたまま町を出る。すぐに閉まる門を前に、アレスは不敵な笑みを浮かべていた。草木の陰に隠れていた幼女が飛び出してくると、被っていたローブを回収する。

 なんとか無事に町から脱出することが出来た二人と一匹は、黄昏(たそがれ)に染まり始めた空を見上げた。


 この先は、山や森と比べ物にならない未開拓地を進むため、町までの距離は大分遠い。そこを超えたら王都まで残りわずかなため、アレスは気持ちを切り替えて歩き出した。

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