修業時代(2)
渡辺は作戦通り清掃員のふりをして基地に侵入することにし、清掃員らしく見せるために掃除機のような叫び声をあげながらほうきを掃いて米軍基地へと向かっていった。
何人かは(掃除機を買えなくて頭がおかしくなった人だな)と思ったが大多数は自分の上司と勘違いしたので侵入を許してしまった。
無事侵入できたが、どこに核兵器があるかはわからない。基地内の兵隊に聞いてみよう。渡辺は適当な兵隊に声をかけた。
「クイズに答えてくれませんか。正解したらあなたはIQ180です。」「いいだろう。」「『あっち向いてホイ』って10回言ってください。」
「あっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイあっち向いてホイ」
「核兵器の場所は?」「あっち」と言って間抜けな兵士は指をさした。
「ありがとうございます。あなたはIQ200です。」「そうだろうそうだろう」
渡辺が米兵の指さした方向に向かうとエレベーターがあったので降りて行った。エレベーターから降りると警備兵が銃を向けてきた。
「出たな!怪盗侍・クソ・ジャパン!手を挙げろ!」渡辺は水を纏うと細い水のビームを大量に発射し、兵隊を蹴散らした。これが「自調」の成果だ。部屋の奥には核兵器がある。あれを東側諸国に売って儲けよう。船を操れば簡単に運べるはずだ。そうすれば働かなくてよくなり修行に時間をさける。
すると、急に寒気を感じた。まさか。そう思って瞬きをしたら、目の前には赤城直人がいた。渡辺は慌てずに言った。
「この建物は『自調自考』の力により既に私が掌握している。それに比べて君の『国際人としての資質』や『高い倫理感』とやらはどうだ。きみを危険な状況に追い込んでいるだけじゃないか。どちらの方が『三哲』の素質がるかは明らかだ。」
「君は『一哲』も習得できやしない。」「寝ぼけているのか?」
渡辺は部屋の床の、赤城が立っている部分を上にへこませて赤城を打ち上げた。そして天井にぶつかるときに天井を下にへこませて赤城を叩き落す。無限ループの完成だ。
しかし、彼は空中で体勢を立て直すと急降下し、地面を思いっきり殴りつけた。その衝撃で渡辺は軽く吹き飛ばされた。渡辺はすぐに水を纏うと大量の水のビームを発射した。赤城はそれを手刀で捌く。
狙いは別にあった。水で赤城の視界が奪われている間に建物の壁や床の一部を剝がしていき、赤城に向かって様々な方向から突撃させた。このまま潰そうとしたが抜け出されそうだ。しかしどちらにせよ奴は終わりだ。
渡辺は水を最大限に圧縮し、高圧のビームを発射した。ビームは直撃し、赤城は壁に頭を強打した。彼は動かなくなった。死んだのだろうか。渡辺は赤城のもとへ駆けよっていった。すぐそこまで近寄ると、赤城は急に起き上がり渡辺をぶん殴った。しまった。死んだふりだった。
渡辺は飛ばされながら水を纏って衝撃を軽減した。さあ、これからどうしようと思ったその時、赤城は空気を思い切り吸うとそれを空気弾にして発射してきた。纏っていた水がはがされてしまう。相手も強くなっている。こうなったら崩落や核の誤爆のリスクはあるが、部屋の壁や床を最大限に活用するしかない。まずはさっき剥がしたやつを引き寄せて盾にしよう。
しかし、もたもたしている間に二発目の空気弾が飛んできて、きれいに当たってしまった。渡辺はやけくそになり、余っていた力で爆弾を召喚すると、「これで核兵器を爆発させてやる!道連れだ!」と叫んだが、すぐに近づいてきた赤城に爆弾を奪われると渡辺はわきに抱えられ、赤城のワープに巻き込まれた。
ワープ先は空中であった。赤城は「反省しろ。」と言って渡辺をぶん投げた。彼は「今年のおみくじは大吉だったもんねええええええええええええええええ」と叫びながら放物線を描いて落ちて行った。
後日、赤城直人の身の上について調べてみた。彼は両親を失い、祖母が一人で育てていたが、ひょんなことから私の父親の目に留まって気に入られ、学費を出してもらっていたんだそうだ。そして彼もまた父の経営する学校で働くという。
また一緒かよ。渡辺は頭を抱えた。だが考えてみると、今回はだいぶ赤城直人を追い詰めることができていた。的確な判断ができていればこちらが勝っていたに違いない。やはり「自調自考」を磨く方向でよさそうだ。次は必ず倒してやる。




