修業時代(1)
渡辺陽斗は大学を卒業し、父の経営する大学で働くことにした。二度も国外追放された人間を雇う企業なんて存在しないからだ。
仕事が始まる日まではしばらく休みなので彼は赤城直人を倒す方法を考え、それが可能か調べてみることにした。
まず赤城直人についてだが、ワープが使えることから「国際人としての資質」を備えており、こちらの悪事がバレたことから「高い倫理感」も備えていると考えられる。あの耐久力と運動能力に関してはよくわからないが、「三哲」のうちのどれかではあるだろう。
本題である倒し方だが、恐らく不意打ちは寝込みを襲ったとしても通用しない。「高い倫理感」と身体能力に阻まれる可能性が高いからだ。
汚名を着せて社会的に倒そうにも奴はかなりの人気者であり、こちらが返り討ちに遭うのが目に見えている。奴を倒すには「自調自考」を強化するしかなさそうだ。
彼は修行に出かけることにした。最近「米軍基地に核兵器が持ち込まれたらしい」と水が言っていた。行き先はそこである。
渡辺は日本某所、つまり徳島県松原町の巨大米軍基地にたどり着いた。作戦は練ってある。まずは情報の真偽を確かめよう。彼は一枚の紙きれを米軍基地に放り込んだ。
「予告状:溺れ沈みゆく者が自由の悪魔から授かりし黒き呪いをいただきにあがります。 怪盗侍・クソ・ジャパンより」
翌日、日本は騒がしくなった。米軍基地の前には警備のためにやってきた警察が群がり、「出てこい核泥棒!」、「核兵器万歳!」、「俺たちが核兵器を守ってみせる!」などと口々に叫ぶので、米軍はそれを必死に静止していた。デモ騒ぎやら議会国会での乱闘やら日米首脳会談やらが一日中続いた後、日米両首脳が記者会見に臨んだ。
彼らはどちらが今回の件を説明するかでもめた。決闘で決めることになった。二人は刀を抜いた。流派は異なっていた。
大統領は刀をあらかじめ懐に忍ばせておいた銃に素早く持ち替える「ジェニファー流」、首相は刀をリサイクルボックスに入れ銃を作り出す「リチャード流」であった。
決闘が始まった。首相はリサイクルボックスを探し始めた。大統領が銃を撃った。死んだ。決闘は終わった。
大統領が発言を始めた。「真実を話しましょう。なぜ、いま核兵器が大事なのか。それはあの時の核攻撃で誕生した原爆ドームにとどめを刺すためです。そのためには何千何万何億もの核兵器が必要なのです。今回の件についてですが、あれは日本にも活躍の場を与えようというほぼ私の独断でやったようなことでして…非常に反省しております。」
怒った記者が叫んだ。「デタラメを言うんじゃない!それにあなたはアメリカ中に原爆ドームを建設し、それでノーベル平和賞を受賞していたではないですか!矛盾しています!」
「いや、あれは“正”の原爆ドームです。あれをたくさん建設することで”負“の原爆ドームの力を抑えようとしているのです。…東西冷戦は激しくなるばかりです。私は”負“の原爆ドームが世界を蝕んでいるとみています。もし、世界平和を望むのなら、どうか私の話を信じてもらえないでしょうか。」
記者たちは呆れかえってしまった。




