シンガポール留学時代(1)
渡辺陽斗はシンガポールの大学で学ぶうちに自分にはやはり「三哲」の資質が備わっているのではないか、と思うようになってきた。
ある日彼は港のほうへ散歩していた時にカラフルなクルーズ船を目にした。近づいて確かめてみると「平和クルーズ」といって平和を訴えながら世界を一周する船だと分かった。
これは自分に「三哲」、特に「国際人としての資質」が備わっているがどうかを知るチャンスだ。彼は乗船することにした。
いくつかの国で成功を収めた後、平和クルーズは海峡を越えとある中東の国にたどり着いた。
ところが、何らかの手違いで事前に許可を取っていないまま領海内に入ってしまった。沿岸警備隊がやってきた。そして警告を発したが、船内はパーティーの最中で聞こえない。
無視されたと受け取った警備隊は発砲した。パーティーでは人生ゲーム大会が開かれていたが、人生ゲームは銃弾で吹き飛ばされた。パーティーは阿鼻叫喚の嵐になった。
渡辺陽斗は沿岸警備隊の誤解を解く役を引き受けることにし、乗客の熱烈な声援を受けて沿岸警備隊の船に乗り移った。
彼はアラブ人からの印象をよくするために頭にターバンを巻こうと思っていたが、当然そんなものはなかったので、代わりにトイレットペーパーを巻き付けていた。
艦長らしき人物が出てきた。そして不機嫌そうな顔で彼を見ると「(アラビア語で)貴様ら、いったい何のつもりだ!言え!」と言った。
渡辺陽斗は自分はアラビア語が分からないことに気付いた。いや、でもアラビアにも犬はいるはずだ。犬語で話せばいいんじゃないか。
彼は「(犬語で)ワン。」と返事をした。「(アラビア語で)真面目に答えねえとぶっ殺すぞ!」「(犬語で)クゥ~ン」「(アラビア語で)キエエエエエエ」
渡辺陽斗は本能的に恐怖を感じ、水に飛び込んだ。すぐに周囲の水に自分を守らせた。
案の定銃を撃ちかけてきたので深く潜り、クルーズ船に戻っていったが、戻る途中で、どんな顔をして戻ればいいのだろうか、いっそのことクルーズ船を沈めてしまえばいい。そして沿岸警備隊の船に戻ってきて「自分はあのクルーズ船で洗脳されていたが、あなたに一喝されて目が覚めたのです。」みたいな口上を述べればいい。(彼は自分がアラビア語を話せないことを忘れている。)成功すれば「国際人」だ。
彼は船の近くまで接近した。船を沈める方法としては水を操るか船を直接操る(できるかどうかはわからない)と言う方法が考えられるが、自分がやったことの証明にはならないだろう。ここは内部に侵入して船底を破壊するべきだ。
彼は頭に巻き付けていたトイレットペーパーを口元に巻き付けて変装するとこっそり船に戻り、できるだけ下に降りた。素手で船を破壊することはできないだろう。爆弾は使えないだろうか。彼が強く念じると懐かしい雰囲気の爆弾が現れた。
その時だった。赤城直人が目の前に現れた。




