EP:3からっぽだろうと、カオスだろうと!①
「そりゃ今の目標よりしなきゃいけないことがあるなら、そっちを優先するのは当たり前」
「別に俺達はお前に従うしかないんだ、どんな道を行こうと止めることはないぞ」
「ありがとう、そうしてくれると気軽だよ」
路地裏を2人で雑談しながら歩いている時気づいた、自分は兄に救われたが、兄は弟である自分がこんな人生を送ることを許すのだろうか?
兄は最後のあの日だけは、常日頃身につけていた首飾りと杖を渡してくれて守り続けてくれた、だからこそ兄の真にして欲しいことは他にあるんじゃないのかと。
(ねぇ、フリティさん)
(?)
(僕の兄はいっつも周りに冷たかったんだけど、最後の日だけはなんでか優しくしてくれた、それって王族としての人生を真っ当に生きて欲しいからなんじゃないのかと思って)
(私はよく分からないけど、今まで王族としてのことを教えてくれてたなら王族として真っ当に生きて欲しいわけじゃないと思うの、きっと今までにも言われたんじゃない?自分の考えを優先しなさい!みたいなこと?)
それは頑張って思い出そうとしなくてもすぐに思い出した、能力を手に入れた初日に自分を一番に行動しろと、よく考えてみれば人としてよりも自分のしたいことを間違いだと思わせたくなかったのかもしれない。
そう考えればあの時言っていたことも行動も辻褄が合う、兄は常に先代の威厳ある者達を見ながら勉強や訓練をして、最後には大事な国や家族を守れるようにとそう願っていてもありえなくもない。
(……確かにね、本当に、まるで周りが自分を旅に誘っているみたいだ)
というよりかは、旅をしないと生きていけないような人生を送っているのだ、この2人だけが今自分の信用できる者である、2人以外の人間や生物は無関係だが今まで自分を騙して殺そうとしたり殺したり。
まるで自分は生きながらえてしまっただけの愚者同然なのかも、実際自分のことを少し知っているだけの人間からしたらそうなのだろう。
(いいんじゃない?今は私達がついてるし!ライムも自由に外出れるようになったからさ!)
なんだかこれだけ苦しくあれるはずの自分は少し微笑んだ、ライムは何故微笑んだか分からないがきっとフリティと分かり合ってくれたのか?と思いつられて微笑んだ。
表通りに出た、そこはとても賑やかで1人の老婆が手錠をかけられ暖の上に座らされていた。
「エネス、あれはなんだ?」
「貴族が命令した公開処刑、かな?」
それを聞くとエネスの手を握りながら群衆を無視して壇へと歩み、斧を持った兵士に問いかけた。
「これはいったいなんなんだ?」
そう言うが周りにいた兵士達がライフルを一斉にライムへ放った、今の世界では業務執行妨害でも死刑対象なのか、魔女狩りに手を貸したとしての死刑なのか。
魔力壁をエネスが張ろうとした、また誰かを失ってはたまったものではない。
するとライフルの弾全てが放たれた0.001秒の瞬間ライフル内で小さな爆発を起こした、兵士は負傷しなかったせいで皆が剣を構えた。
「も、もういいよライム!こんなのに関わって意味は」
「俺はこの兵士に聞いた、答えなければお前は恐ろしい目に遭うぞ」
だが兵士は一向に答えようとせず斧を振り翳した、その斧は転移魔法によりどこかへと消えてしまった。
ライムが老婆の手錠も転移魔法でどこかに飛ばし、老婆を逃した。
「斧の兵士、俺が誰か分かるか?」
「罪人だ!お前は国に逆らったのだぞ!今も周りの英雄達がお前を殺そうとライフルを向けて!」
自分はこの修羅場をどうしようかと考え込んだが、全く思いつかない。
「大罪人じゃないのか……まぁ、俺が罪人ならお前もだぞ?」
「また罪を重ねるのか?さすが愚かな罪人よ!」
兵士は笑うがライムは真剣な顔を崩さず言った。
「とりあえず、あの方が何をしたのかを教えてくれ」
「あいつは戦争を起こした魔女なのだよ!」
「そうか、つまりお前らは根拠もなく、ただの決めつけだけで殺そうとしたんだな?所詮英雄なんて口だけだ」
「っ!……それ以上侮辱させるか!貴様らぁ!!さっさと撃ち殺してしまえ!」
「逃げようよ!ライム!」
何度もライムは様々な箇所のスナイパーから撃たれているはずだが、全ての弾は銃身の中で小さな爆発を起こした。
「そうだな、犠牲も出ないで済んだのだからこれで終わりとするさ」
「逃げるか!やはり、皆よ!こやつは全ての攻撃を防ぐ時だけは攻撃ができないのだ!」
斧の兵士はそう伝えたが、弾の爆発はどう考えてもおかしい。
だがそれは周りも考えずに兵士の言葉を信じていた、ライムがエネスの手を握り直し階段を降りている時記者は写真を撮り何かを聞いてきていたが黙り続けた。
「ライム……あれはきっと魔女だよ?国の人達が見つけたのに」
「確信もなく人を殺すならそれは悪魔だ、無関係の人間を嘲笑い殺す者だけは誰であっても許しはしない」
「まぁ、言ってることは正しいけど、この国を敵に回したら勝ち目はないよ?」
「俺を知らないだけだろう?」
この場から離れるも、記者達は離れず付き纏ってきていた。
「ふふん、俺は人を殺さないだけでめちゃくちゃ強いんだぞ!昔は神話生物だったことも」
「はいはい、そもそも神話生物ってところからして嘘くさいよ」
(ちょっと強いだけの不老って感じだよね)
2人はライムを否定した、まぁ分からないところの方が多いのが一番だしそこまでの実力じゃない、そんなに強い人間こそ今でも人を殺す覚悟はあるはずだろうし。
「信用してくれても良くない?」
「僕だってあんなふうに堂々と人を守った人のことは信用してるよ」
「おぉ!ありがとぉぉ!」
本当にあれを見てからは心の底から信用している、始めは不思議でなんの役にも立たないウザいやつって感じだったが今では全く変わったものだ。
「あの、失礼ですがあなたは開祖の……」
せっかくの2人の時間に昔っからうざったい記者が話しかけてきて手で軽く突き飛ばそうとライムが手を伸ばした、だが手には大量の魔力が帯びているのが分かりエネスが軽く押した。
「記者の皆さん、帰ってくれませんか……?」
「じゃあ何級の冒険者なのか、どの国出身なのかなどを教えていただきたく!」
「は?無理無理、あっ!でも1銀貨くれるならいいぜ」
さっきまで顔に怒っているような表情が出ていたのに一瞬で笑顔になり手を出した、これには記者も笑顔になり1銀貨をすぐに渡した。
「で、ではまず」
「だが俺が答えるのは二つだけだ、それと答える内容によっては俺はそこの宿泊まっちまうからな」
記者はなぜ1銀貨だけなのか疑問を持っていたが、それが狙いだったのかと内心少し怒っていそうだったが考えながらもやっと声を出した。
「年齢と名前を」
「名前は無理だ」
「なら、年齢と職業を」
「年齢はそこまで気にしてないからうろ覚えだけど1億歳よりちょい上かな?職業はそこまで必要ないからこれの付添人をしてる、それじゃ良い1日を」
宿の中にエネスも連れ込み素早く宿のオーナーに銀貨を渡して、2階の部屋の3つのうち2番目の部屋だ。
すぐにその部屋に2人は入り鍵を閉めた、やっと静かになったと思ったらオーナーに記者が泊まりたいと言うが部屋が二つしかなく、さっきよりも記者は増えて数十人くらいが押しかけてきた。
「困ってるなw」(小声)
「壁越しに盗聴でもするのかもね」
(現世はこんなに賑やかなのね……)
3人は少し楽しそうに部屋の中から外の音を聞いていると、予想にもしない言葉が聞こえた。
「半分の人間が1号室に泊まってもう半分が3号室に泊まれば解決じゃ?」
「それがあったか!まるで合宿だなw」
「それじゃあ半分に並べた列の人から1号室に行ってね、自分が払いますよオーナー」
なんでこんなあっさり決まっちゃうのさ!と思いながらもさすがにこれだけ熱心になっている姿を見ると感心すらあった。
ドタバタと両方の部屋から音が聞こえ、機材を置いて談笑する声や窓からこちらを覗こうとして落ちる音が聞こえた。
「……」
「……」
(……)
(なんだこれ?)
3人がこの混沌とした状況を今更謎すぎることに気づいた、こんな両方の部屋から修学旅行のみんなで部屋で話すような内容が聞こえ続けるとは思わなかった、ましてやあいつらはたまに現場で会うだけの記者達だろうに。
「思ったんです僕、記者達皆んな部屋の中にいるならこのまま外に出ちゃえば付き纏われずに済むって」
「あ、確かに、なら試しにやってみるか」
少し作戦を話し合って静かに扉を開け階段を降りる、記者達も頭が悪いのか外から様子を伺うことは考えなかったのか誰もいなく、オーナーに一礼して外へこっそりと出た。
「ほ、本当に行けるとはね」
「まぁこの状況から逃げただけじゃどこに行くにも困難だろうな」
(そりゃエネス、今自国の兵士に追われてるんでしょ?)
「でもこっちまで情報が行くはずないよ、まして敵国に言うなんて」
国に追われてはいるが戦争中で、自国の情報なんて教えるはずがない。
だが情報なんてのは薄い紙の上や人の頭の中に書かれたものであり、それはすぐに外へと出ていってしまうものだ。
「進むしかないんだ、ここから北に向かう」
「北?そこにリンワットが?」
「もちろん、あー、でも……」
「どうした?」
「戦争を終わらせたいんだ」
(ファーw)
ライムはいたって真剣に言うがフリティはそれを、馬鹿だなこいつと思っているようだ。
まぁ自分だっていきなりこんなこと言われても無理だろとしか言いようがないし、ましてや自国をこんなにされて戦争を止める?この国を滅ぼすなら自分も賛成していたが……
(耳を貸すだけ時間の無駄だね)
「俺が悪かった、ましてやエネスの前でこんなこと言うなんて」
「まぁ自分は国とかどうでもいいんだよね、ただ兄様が戦争で殺された事もあるし少し賛成はしたい」
(だからさ、無理だよ?二つの国が関わってる事だしそもそも私達がこの世界で特別強いわけでもない)
(悪いとは思ってる、でも誰しも終わりがあるなら自分はこの旅で終わっていいと思ってる)
この世界で言う王族は魔力が強いわけでもないただの一般人のようなものだ、そこら辺の少し強いだけの人間にも負けるしライム以外は世界を全く知らない、そんなパーティーで戦争を終わらせる?
(はぁ……ならライムに戦い方でも教わってからにした方がいいよ)
(そんな強いの?)
(そりゃ崇央教の開祖だし)
(……)




