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EP:1 意味のない真実は悪意のようで

ある時世界が言葉通りにぐちゃぐちゃになってしまう世界融合が起きてから数百年経った時、僕はある王家の息子として生まれた。


自分は生まれた時から勝ち組であり絶対的に崩れることのない勝者であることも実感している、いや、実感できるはずだった。


僕は今日6歳になり祝福を得た、簡単に言うと能力でありランクなどはつけられていなく様々なものがある、その中で自分は大罪の加護を引いてしまった。


その能力の名は不死、何があっても歳をとること以外で死ぬことはできないし運が悪ければ軍に捕まって実験材料。


自分は王家の生まれなのでそんなことがないのは分かってたが絶望した理由は他にある、親からあれだけ期待されていたのに力は努力でしか育たないし兄のようなネクロマンサーなどの強い能力を得られなかったことだ。


これを親や兄に言えばどうなることかーーー


「不死ってあの……?」

「よぉエネス、誕生日おめでとう!」

「に、兄様か……」

「それで?能力はどうだった?」


こんな弱い能力言えるわけがなかった、勝手に期待されていたとは言えここで反抗なんてしたら何が待ち構えてるかだってわからない。



「能力?えーっとね、実はまだ手に入れてなくて」

「まぁ今日中には手に入れるさ!」

「だよね!……」


嘘をついたのはこれが初めてだった、嘘をついて1秒でも長く期待をしてもらわなければ落ちこぼれ扱いなんだと、すると兄はそう考える自分の頭を撫でた。


「能力を今日手にするお前に伝えよう、誰かに期待されてもそれに応えようと頑張らなくていいんだ、人生に正解も何も存在しないからな!」

「僕にはまだ難しいけど、元気は出たよありがとう!」


兄はそう言い励ましてくれたがこんな能力誰にも言えない、せっかくこんなに励ましてくれた兄弟にさえ絶対に言えない隠し事はある。


「本当はお前が一番期待をかけてるくせによく言う」


ずっと気づかなかったがエネスの部屋の棚の中から長男の声がした、長男は今までも優しい雰囲気すら感じず冷徹という言葉がよく似合う人だ。



「ふん……いいかエネス、こいつの言うことも一理あるがしかし、まずは自分を第一に考えて動くんだな」

「は、はい」


次男はよく会うが長男の顔は久しぶりに見た、自分のために軍から帰ってきたのか?と考えてみたがそれはないはずだ。


自分なんかが兄に期待されるはずもないのなんてとっくに分かってる、なんで少しでも自分は兄に思ってくれてると思ったんだろうか。


「今回はなぜ城に?」

「気まぐれだ、お前は部屋に帰ってろ」


次男は長男に逆らえないので心配そうにしながらも部屋から出た、すると長男が懐から紙を取り出した。


「後ろを向け」

「え、なんでですか?」

「……」


長男の不穏な雰囲気が何かを物語っていた、覚悟を決めた時の人の顔をしていて一体何をされるか分からないがとりあえず後ろを向いた。



「さっき俺はああやって言ったが……あれは忘れてくれ、もしも俺が壊れた羅針盤でなければどれだけ良かったか」


首に冷たい何かが当たったがそれは危険なものではなくただの首飾りであった


「これは誕生日プレゼントだ、それといきなりですまないが私についてきてくれ」


頷き部屋の外に出た長男について行くと、廊下にいた兵士たちはその光景に驚いていた。


「あの、いったいどこへ?」

「さぁな」


ついた場所は知らぬ部屋でその中に無理やり入れられる、部屋の中は少し異様で最高レベルの封印魔法、それも外からの攻撃さえも無力化する封印魔法の刻まれた部屋に投げ入れられると鍵を閉められた。


こういう時は下手に何かをしないほうがいいのは分かってるがこのスピード感についていけなかった、いきなりあんな扱いをされて納得いくはずもない。


「どういうこと!」

「静かにしてろ!その部屋にいるスライムとでも喋っているんだ」


一喝され静かになるといつの間にか隣にスライムがいた、そのスライムは大きいわけでもなく特別強そうな感じでもなかった。


「私はライム・リン……俺はライムだ!」


最初のはなんだよと思いつつもお辞儀をするとそれを返してきて知能のある魔物だと分かった、属性は無さそうだし魔力も少ししか滲み出ていないのできっと大丈夫だろうと話をすることにした。


「ここから出ることはできる?」

「無理だね」

「じゃ、じゃあ僕の閉じ込められた理由は?」

「は?聞いてないの?」


スライムのくせに生意気でよく見ても自分に対してそんな口を言えるはずがない、そんな立場の魔物ならここにいないはず。


「でもあいつがお前を殺さなかったのもなんかおかしいな、もしかしてお前は」


そう言いかけるとどこからか轟音が鳴り響き床の埃が揺れていた、轟音の中に混ざった大きな鳴き声はとても生物が出せるような音量ではなかった。


「何が!?僕も行かせて!」

「そう言うことか……お前は殺されなかったんじゃなくて殺さなかったのか!」

「今それどころじゃないでしょ!本当に何が起きてるの?」


焦りのせいで今の現状に対して恐れより怒りが来てしまった、ライムもそれを察したのか少し考えて諦めたような表情になりこう言うが、本当のことを言うとは限らない。


「君には関係のないことだ、ここでじっとしてればいい」

「本当?まぁ、僕に危害がなければ」

「やっぱなしだ、王家の坊ちゃんは自分のことしか考えられないのか?」

「そうじゃないけど」


実際のところ何が起きているか分からないし、自分は戦闘要員でもないのにここからわざわざ出たって殺されるだけだ。


「本当のことを知りたいなら世界をひっくり返すくらいスゲェ英雄になる覚悟がないとダメだぜ?」

「どうせ無理だし覚悟なんて僕に必要はないよ、覚悟なんかなくたって生まれた時からこうなる予感はしてたし」

「ハハ!生まれた時から英雄気取りか、いいぞ出してやる」


確かにエネスは生まれた時から自分は王族だが三男の身で、そういう子は大抵旅に出て英雄扱いだ。


でもそれとは少し違ってもっと他の妄想を膨らませすぎた人間のような、自分が無双する想像しかしてこなかったやつだし覚悟はいらないのかもしれない。


「でもどうやって出るの?最初は無理だって」

「この城にいるやつじゃ無理だろ……俺を除いて」


扉は上級封印魔法でガッチガチに固められていたと言うのにそれを飲み込んでしまった、よくよく考えたらこんな空間にいたら死ぬはずのスライムが何故生きているのだろう。


「開いたぞ!殺せぇ!!」


蛮族や盗賊にしては衣装的にも違うだろうし、どちらかと言うと崇央教のサイレント装備に似ていたし手にはリボルバーを持っていた、これはもう崇央教で間違いない。


「ひっ!」


縮こまる寸前目の前に敵はいなくなっていた、理由は兄が置いた簡易魔法陣用紙による効果で今頃牢屋の中だろう。


(兄様は私がここから出れないのを知っているはず……それにあんな見え見えの位置で置くはずがない)


徐々にあの音の正体と全貌へと近づくエネスだが考える余地もなかった、下の城門で例え用のない音が鳴り響き続いているからだった。


「俺について来い」


おどおどして辺りを見渡しているといつの間にかライムの姿は別人と入れ替わったかのようになっていた、その姿は白いロングコートに血を浴びて鼻血を出した人で不気味の具現だった。


と言っても顔はイケメンというに相応しく、メガネもしていてきっとこの城にいたら一番のモテ男だったろう。


「誰?」

「別に今はいいだろ、さっさとついて来い」


言われた通り後ろを歩いていくと音のする方、城門へと向かい少しずつ見えてきたその光景はとても悍ましいものだった。


「兄……」


それは仮面を被った集団が短剣を持ちこちらを仮面の覗き穴から睨むように視線を向けていた、ことよりもまず目がいったのは次男が腹を何度も刺され大量出血で倒れていた。


「マジか、これじゃ宗教と国が戦争関係になっちまうんじゃ」


この光景に絶句していると後ろから何やら足音が聞こえる、それはとても重く感じるほどの魔力を帯びていて後ろを向くことすらできない恐怖に圧倒され混乱してきた、こんな状況に耐えられる人間はそう少ないわけじゃない。


「私の弟に手を出したな、教徒の分際で!!!」


エネスを押し除け硬直している教徒達を1人ずつ剣で刺し殺していく、これじゃどちらが悪かぱっと見では分からないような酷い光景である。


「貴様がこれを仕向けた黒幕か?」


仮面をつけていた1人の小さな教徒が仮面を飲み込んだ、これは本で読んだ暴食の大悪魔から加護を得た2等教徒と呼ばれる少し強くなっただけの怪物だ。


人としての理性があると書かれていたが歴史の中でこいつらは戦争をわざわざ起こし、魔王を作り出す実験を成功させてしまったりなどとさまざまな厄介ごとを作り出す者だ。


「それはどうでしょう、これをして利益があるかもわかりません」

「じゃあただの虐殺趣味の薄汚い連中か?」

「それはリーダーに聞いてくれ、今夜また訪れるよ」


敵は皆二等教徒に触れると融合していき最後には一体となるが転移魔法でどこかに消えてしまった。


長男は次男に駆け寄る姿は見せず生死の確認もせず城の外へ出て行き、エネスは階段で次男を見つめるだけだった。


「気の毒だがあいつはきっと生きてる、あとは使いに任せておけばいい」

(兄様が負ける?……そんなことは、こうなったらせめて非戦闘員を逃さないと)


真っ当な考え、まず他人を助けなければという王族としての責務を果たそうと考えているがそう上手くいくことではない、父が混乱してこの状況を一番丸く収めるため民に注意喚起をする前にまず城の防御を固めてしまうはずだ。


「やっぱお前みたいなチビにこれは早すぎるよな」


ライムが睡眠誘発魔法をかけてきたが成功率はとても低いはず、なのに何故か眠ってしまい目を覚ますとそこはあの時自分を閉じ込めていた部屋だ。


「起きたか」

「兄様がここに?これより重要なことが」

「なぁ弟」


エネスの言葉を遮るように無理やりに呼びかけてきた、いったい何を話されるのだろう。


「お前の能力は確かに世界から見たら醜いものだ、きっと自分自身もそう思っているんだろ?だが世間である私からしたらそうは思えない」

「?」

「まぁ何を思おうと自由だ、全く……この現状を思い出すだけでイライラしてくる」


きっと世間から見たらこうだろうと思う自分に対して、世間の一部である兄はその不死の能力は醜いものではないと言ってくれたのだろう。


「感情はコントロールしないとダメですよ」

「それをお前や周りの者、さらにはそこのお前らができると確信しているか?」


かなり痛いところを突いてきた、もしかしたら皆も一度は感情をコントロールした方がいいと人に言うかもしれないが、自分自身はいかにそれができているのか、それをよく思い知らせる一言だった。


「こんな考え、人として駄目なのかもしれないな……お前は俺みたいにならず生きるんだぞ」

「今日はおかしいですよ?」

「だな、最後に話もできたし悔いはないよ……俺はそろそろ帰るとする」

「早いですね、急用ですか?」


いつもなら3日は滞在するはずだがやけに早い、まだ1日も経っていないのにこうも早く帰ることがあるか?


「確かにまだ早いな、おっと!渡しものがあと一つあるんだった」


首飾りの次はいったいなんだろうと、こんなに優しくなった長男は久しぶりだ。


「この杖をエネスに、絶対無くすんじゃないぞ?」

「もちろんです」


もらったのは重さも晴れてる感覚も伝わらない羽ペンのような杖だ、これは長男がどんな時も肌身離さず一緒に人生を歩んできたものだが何故今さら?


「さて……そろそろ行ってくるよ」


立ち上がった時の長男の背中は何か名残惜しそうでどうしても止めたかったが、それとともに何らかの決意も感じた。


部屋の外に長男が出て行って10秒後に勢いよく扉が開いた、そこにはライムがいた。


「よぉ!俺だよ俺俺!」

「あぁ」


結局のところこいつがスライムなのか人間なのか分からないが、とにかく深掘りするのは危険だと帝国精鋭兵が言っていたのでまだ正体を聞くつもりはない。


「今日だけ俺はエネスの守り人ってやつになる」

「急だな、護衛になるんだったら少し僕の質問に答えてくれる?」

「いいとも」


ここで今まで起きていた事や疑問の数々を知ることができるなら何だって聞くことにした。


「あなたは何者で、兄様は本当はどこへ向かった?」

「俺はライム・リンワット、お前の兄はきっと怠惰の加護を得た信者と戦ってるだろうよ」

「勇者の名を語るのは構わないけど、世界には2人しかいないはずだよ?」


エネスは兄なら信者にも敵うだろうと思い置いといて、まずライム・リンワットというな名についておかしさに気づく。


それは魔王を倒し戦争も終わらせ醜いものの全てを終焉へと向かわせた勇者の名だ、だが国民達は魔王はともかく戦争なんかは始まる前に止められたんじゃないのか?と疑念を持ち始める。


国民は暴力を正当化させることに成功してライムの家族や友人を悪魔と見做し皆殺しにした、世界中から憎まれる中でも全ての国民の悪事を許したが偽善者と呼ばれ最終的には、親友を殺されてからは大悪魔を作り出し自分は自殺したと書かれていた。


「勇者って認められてないんだろうな……別にそこは構わないがもう一つの方は心配しなくていいのか?」

「兄様なら圧勝だ」

「雑兵ですらお前より強いんだぞ、少し見に行くんだ」

「それもそうか」

(もしも戦況が危うければ援助くらいならできるだろう)


1人で部屋から出て階段は降りず上から城門をこっそり見てみた、そこには右腕を完成体の異形に貪り食われながらも無力だろうと抵抗する長男の姿が見えた。


「私を食っても力など得られないだろう!?」

「それがどうした?」


この光景は幻影であるはずなのに全くあり得ると感じている、異形との戦いはあまり慣れていないのだからそれもそうなのだが目も当てられないほど生々しい。


右腕を曲げられても悲鳴一つあげない兄―――

これを見てからこれは幻影ではないとわかった、だからこそ援助したいが魔法を打てば必ず兄に当たる。


(このままじゃ……いや、兄様が負けるはずない!)


エネスはこれに関わりたくないから半分言い訳のようなことを考えていた、人を助けたくてもこんな言い訳を続けていたら誰1人として助けることはできない。


その時自分は目を離さなかったはずだ、なのに兄の姿はなく、足4本手2本頭は大きなスライムのような顔でできた異形がこちらを向いていた。


「ひっ!……」


距離はそれなりにあったはずだし、どれだけ足が早くてもそう数秒でたどり着く距離じゃないはずなのに、いつの間にか自分は痛みも感じず滅多刺しにされて殺されていた。


だが不死の能力で蘇生すると異形は顔を顰めた、きっと同じ類の加護を持つ自分を見て仲間だと思い始めたのだろう。


「ごめんなさい……無礼許して」

(似た加護を持つから仲間だとでも?馬鹿にしてくれるな)


少し後退りするといつの間にか目の前に異形がいた、ちなみに二等信徒が異形へと名前を変えたのは人を1人でも殺した時からそう呼ばれるようになる。


「ついてきてください!」

「兄様は?」

「?」


兄はどこかと聞くが訳が分からないようだ、まぁさっき戦っていて突然消えた存在だなんて分かりはしないだろう、そう思っていたのだが。


(そりゃそうか、誰かも分からないだろうし)

「あー、あれね?人はマズイけど王家の血はまだ食べたことないから食ってみたよ」

(暴食?いや怠惰だと言っていたはず……待て、混乱しているな)


今の状況をなるべく理解するために一旦頭の中をリセットしたが、どうしてもあいつに食われたとしか思えなくなってきて余計に混乱してきてしまった。


「アッハハ!君はこちら側にもなり得そうだーね!いいよねぇ、怒るだけの人は」

「……兄様をどうしたかって聞いてるんだ!!」

「僕が何かしたから分かってるんだろ?そこまできてるなら自分で考える前に察してたろうにねぇ?」


この異形の言うことはいちいち腹が立つ、人として何かが欠けていると言うか逆に人のことを熟知したかのような子供への嫌悪感が出てくる、だから宗教には関わりたくないんだ。


「キッヒヒ、図星を突かれたやつを見るのは何世紀と変わっても気持ちがいいもんだねぇ!」

「二等……いや、すでに異形だからもっと」

「歴史の勉強でもしたのかい?残念だったねぇ、欲望の化身1人にこの国を堕とされるなんてねぇ!!」


この異形は神話に出てくるような魔力を帯びている、そもそも異形になったら理性は保てても言葉を喋ることは不可能になるはずだ、それほど何度も異形になっては人に戻っての繰り返し、オーバーロードをしてきたのか?


「お願いだ、兄様を返してくれ」

「君は僕を殺したい?」

「当たり前だろ」

「敵を殺したいのはみんな同じ、分かるよね?エネス君」


この状況を見てられなくなったのかライムが神速で異形を真っ二つに切った、目に追えないどころの速度ではなかったが問題はそこではない。


「兄様はどこなの?」

「え、そりゃこいつが半分魔物になる前に……な?」


言うのが気まずいことだってわかるがここは何も言わないでもらいたかった、我儘でここまでくると察せよとも思ってしまうほどにこれに関してはライムが悪い。


「王族の命は極端に短い者もいるらしいが…これがその例か」

(僕はいつも泣くことができない、この時こそは泣くのかと思ったのに、兄の愛なんて気にもせず今もこうして)


自分がいつものように泣けないことに怒りを感じて本当に最低だと思う、最後まであぁやって接してくれてあぁやって能力のことまで慰めてもらったのに。


「後のことは国に任せる、そんじゃ頑張れよ」

「いや、護衛なんでしょ、もう少し」


この状況に頭が追いついていなく情報をもっと得ようとしたが強制的に魔法で眠らされてしまった、今回の件について分かったことはまず崇央教によって王都リベラルの城は大きな被害を被ったこと、兄は殺されたこと。


目を覚ますとそこは全く知らない場所で、同じくらいの歳をしていそうな子供が自分を覗き込んでいた。

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