それでも、いいね
『それでも、いいね』
できると思う事が現実に及ばないとしたら?私は高校を卒業して、実家を継いだ。世界一安くて美味かったと看板を傾けた。
彼氏は大学へ行く。いい暮らしをしたら終わりかなと思った。たまにたこ焼きを食べに車で通う。三台駐車場がある。一番入りやすい所は「乗客禁止」と書いてある。まだ誰も突っ込みを入れる輩はいないから。
10人店に入れる。バイト代として14才でたこ焼きを焼いていた。鯛焼きは作れるけど。
私はいい加減にたこ焼きを休憩したいが、父親は腹情死、母親は熱心に宗教の勧誘に精を出して、何故かパリへと二号店を出していった。
「私が彼氏作れないじゃん」
「たこ焼きを食べていればいいじゃん」
そう言って、私は一人になった。
彼氏がその事で爆笑していた。
「パリで腹情死か」
「私だけが一人淋しく死にそう」
「客、ナンパすればいいじゃん」
そう言いながら、大学の話を聞いた。この店畳んで、大学に行こうかなと思い始めた。毎朝、腹情死した父親がまとわりついている気がする。親戚には心臓発作とは言っていた。
私は結局父親直伝のたこ焼きを食う。
この大学生と関係は途切れたり、離れたり。男って、そんなものかなって思った。
母親が凱旋した。
「ベンツ買ってやるぞ」
「成功したんだ」
「フランスの土地成金と再婚したんだ。アンタはしっかり店を守るのよ。ジャパニーズと結婚したいフランス人なんて一杯いるし、何より宗教活動は順調よ。パリ郊外には」
「宗教『腹情死』なんて流行るわけないじゃん。いつまでも父さんを馬鹿にして」
「妊娠しちゃった」
「たこ焼きをフランス人の夫に教えたら、意外と私より上手いのよ。だから、母さんは結婚しました」
「まあ、たこ焼きは誰でも作れるの?」
「まあ、大阪人ならね。父さん、大阪の人だったらしいよ」
「修行したの?」
「サラリーマンで、昼飯でたこ焼き食っているぐらいだから」
「何で名古屋に来たの?」
「名古屋なら、味の違いが分からないだろうと思って」
「どこで知り合ったの?」
「名古屋駅」
そうして、またフランスに旅立った。私の苦労を察して、彼氏らしき大学生は
「大学でたら、たこ焼き焼きを教えてよ」と言ってくれた。
「喜んで」
そうして、結婚できるかもね。そう思うようになる。そして、それが現実になった。
二人でたこ焼きを作るようになった。物覚えが良く、そのうち店長になるかもねと思った。