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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
旅人の辻編

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ニッグ

ブックマーク、レビューとかしていただけるとやる気に繋がります!本当にお願いします!やる気にね、繋がるんですよ!やる気はやっぱね、出たほうがいいですからね!ぜひね!お願いしますね!!


誰だ。


俺は木に背を預けたまま、その影を見つめた。

ぼろぼろのローブ。土気色の肌。錆びついた長剣。

ゾンビだ。間違いなく、ゾンビだ。


(でも……)


こちらを見ていない。

俺も、リーゼロッテも、見ていない。

その濁った眼は、ただ一点──ガルムだけを捉えていた。


ガルムも気づいた。

リーゼロッテを掴んだまま、静かに振り返る。


「……アンデッドか」


ガルムの声は穏やかだった。まるで天気の話でもするように。


「貴様も魔族の配下か? 見覚えはないが」


ニッグは答えなかった。

答えるかわりに──踏み込んだ。


一瞬だった。


さっきまでのぎしぎしとした動きが、消えた。

ぼろぼろのローブが翻り、錆びた長剣が唸りを上げた。


「──っ!?」


ガルムが初めて、後退した。


リーゼロッテを手放す。咄嗟に障壁を前面に集中させた。

しかしニッグの斬撃は止まらない。一撃、二撃、三撃。

連続して打ち込まれる剣が、障壁を殴り続ける。


音が変わった。

鈍い弾きの音が、少しずつ──きぃ、と軋む音に変わっていく。


(削れてる……!)


俺は体を起こした。足が震える。それでも立つ。


「リズ!」


「……わかってる」


リーゼロッテが鎧の軋みをものともせず立ち上がった。右腕のひびを左手で押さえながら、ガルムの横へと回り込む。


挟撃だ。


「はあっ!!」


リーゼロッテの左拳が障壁に叩き込まれる。ニッグの剣が正面から打ち続ける。

二方向からの圧力。ガルムが足を踏ん張る。


「……ッ!」


ガルムの表情が変わった。

初めて、焦りが滲んだ。


障壁の密度を上げようとする──しかしニッグの剣が、その間隙を突くように打ち込まれる。

リーゼロッテが怒号とともに拳を叩きつける。


ひび。

小さな、でも確かな、ひびが走った。


障壁の一点に、暗い亀裂が刻まれた。


(今だ──!)


俺は全力で跳んだ。


───────────────────

【スキル発動:《ソウルタッチ》】

【MP:82 → 62】

───────────────────


白いオーラが右手に集まる。

亀裂の一点に──全力で、叩き込んだ。


障壁が、割れた。


ガルムの体の奥に、確かな手応えがあった。

魂に触れる感覚。存在の核に、直接届く感覚。


「──ぐっ……!!」


ガルムが初めて、声を上げた。

黒い魔力が乱れる。障壁が霧散する。膝が折れる。


「これで──」


俺はもう一度、ソウルタッチを叩き込んだ。


───────────────────

【スキル発動:《ソウルタッチ》】

【MP:62 → 42】

───────────────────


ガルムの体が、静止した。


黒い霧のようなものが、全身から漏れ出す。

それはゆっくりと空気に溶けて──消えた。


沈黙。


ガルムは膝をついたまま、ゆっくりと頭を垂れた。


「……見事だ」


声は穏やかだった。怒りも、恨みも、なかった。


「魔王の下、この命を尽くした。それだけのことだ」


そのまま、静かに──崩れた。


黒い霧が空に散る。街道に、風が吹いた。


しばらく、誰も動かなかった。


───────────────────

【戦闘終了】

【HP:28 → 28】

【MP:42 → 42】

───────────────────


「……終わったか」


リーゼロッテが息を吐いた。鎧のひびに手を当てながら、ゆっくりと体重を落ち着かせる。


「うん」


俺はその場に座り込んだ。足に力が入らなかった。


(HP28……ギリギリだった)


正直に言えば、ニッグが来なければ終わっていた。


俺は視線を上げた。


ニッグが、まだそこに立っていた。


錆びた長剣を下ろしたまま、ぼんやりと空を見ている。戦闘前と変わらないように見える。しかし何かが──さっきまでと違う気がした。


さっきの動きを思い返す。


ぎしぎしとした日頃の動作が嘘のような、あの剣筋。

連続した打ち込み。障壁の亀裂を生んだ精密な斬撃。


ゾンビの動きじゃない。

あれは──剣士の動きだ。それも、相当な。


「……おい」


俺は声をかけた。


ニッグが振り返る。濁った眼が、こちらを見る。


「助かった。ありがとな」


ニッグはしばらく、俺を見ていた。

それから、ゆっくりと──長剣を鞘に収めた。


「ニ……」


「ああ、ニッグな。知ってる」


俺は苦笑した。


「でも……なんで助けてくれたんだ?」


ニッグはまた少し黙った。

それから、街道の先を指差した。


(……街道の先?)


村か、街か。人が住んでいる方向だった。


(人を守りたい、ってことか)


明確な言葉はない。でも、なんとなく伝わった。


「そうか」


俺は頷いた。


その時だった。


ぼとっ。


音がした。


ぼとっ、ぼとっ。


ニッグの両腕が、揃って地面に落ちた。


沈黙。


ニッグは自分の肩口を見下ろした。

腕がない。

次に地面を見た。

腕がある。


拾おうとした。


腕がないので、拾えなかった。


「…………」


俺は思わず固まった。


(まさか、コイツ……拾えないのか?)


ニッグはしばらく、地面の腕と自分の肩を交互に見ていた。

なんとかしようとしているのはわかる。でも、どうにもならない。


「……前に落ちた腕は、ちゃんとくっついてたんだけどな」


俺は呟いた。


リーゼロッテが近づいてきた。腕を組みながら、地面の腕と、ニッグを順番に見る。


「……全力で戦ったら腕が取れちゃうのか」


「そりゃまた難儀な……」


「うん、難儀だね」


リーゼロッテはため息をついて、しゃがんだ。

そして、ニッグの両腕をひょいひょいと拾い上げた。


ニッグがリーゼロッテを見た。

リーゼロッテはぶっきらぼうに、腕をニッグの肩口に押し当てた。


ぐちゅ、という音とともに、腕が戻った。右、左。


「……ありがとな、リズ」


「私じゃなくてこっちに言いなさい」


リーゼロッテに促されて、俺はニッグを見た。


ニッグは自分の両腕をぱたぱたと動かして、確認している。ちゃんとくっついているらしい。


「……良かったな、ニッグ」


「ニ……グ」


「そう、ニッグ」


俺は苦笑した。


「行くあてはあるのか?」


ニッグはしばらく黙って、街道の先を見た。

それから、こちらを見た。


(……一緒に来るか、ってことか)


明確な言葉はない。でも、なんとなく伝わった。


まあ、聞いてみるか。


「俺たちと来るか?」


ニッグは特に迷う様子もなく、俺たちの隣に並んだ。


「……なるほど」


リーゼロッテが呟いた。


こうして、仲間が一人増えた。

喋れないゾンビと、幽霊と、首なし騎士。


我ながら、とんでもない一行だった。


───────────────────

【執念深きトオル】

Lv:20

HP:28 → 32(自然回復)

MP:42 → 46(自然回復)

───────────────────


「さて」


俺は立ち上がった。足の震えが、少し落ち着いていた。


「次の霊廟に向かうか」


リーゼロッテが頷く。


ニッグが、特に反応もなく、ついてくる。


街道の先に、風が吹いた。


──つづく──

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