しつこいトオル
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▼地味の極致、ここに極まれり
ダンジョン「鬼の巣」。しょぼいゴブリンと、たまにレッサーウルフ。ちょっとだけホブゴブリン。
かつては震えながら壁の中に潜り、鬼火で3日かけて倒してた俺、ウィル・オー・ザ・ウィスプの玉森透。
今やどうだ。
「よし、また1匹炙れた……! 次!」
ゴブリン:10分で焼ける。
レッサーウルフ:追いつかれても鬼火で削り落とせる。
ホブゴブリン:祟りと鬼火の合わせ技で2日で処理可能。
もはやこの鬼の巣で、俺を脅かす存在は誰もいない。
▼レベルアップ、そして……
《レベルが7に到達しました》
《ユニーク個体認定:「しつこいトオル」》
「……えっ?」
表示された通知に、思わず声が出た。
「“しつこいトオル”? それ……俺のこと……?」
ダンジョンで炙り続け、張りつき続け、ゴブリン1体に3日、ホブゴブリンに4日、ゴブロに5日。
──その粘着ぶりが、とうとう公式に認められたようです。
「……なんで進化じゃなくて、まず称号がつくんだよ!!」
思わず壁の中でジタバタする火の玉(俺)。
でも、嬉しくないこともない。
誰も気づいてくれなかった俺の地味な戦いが、この世界にちょっとだけ刻まれた気がした。
▼成長の天井
だけど、ここまでだった。
鬼の巣。しょぼい初級ダンジョン。
ゴブリンもホブも、もう経験値が雀の涙しか入らない。
何十体倒しても、バーが1ミリも動かない。
祟りも鬼火も、今やこの場所ではオーバースペック。
俺、もしかしてここでは“俺YOEEEけどTUEEE”状態なのでは……?
「……よし、そろそろ出るか」
俺は壁の中から、そっと天井を見上げた。
▼外へ、次なる成長のために
成長したい。
進化して、もっと自分に近づきたい。
まだ人間だったころの“何か”を取り戻したい。
記憶の断片だけが、時々ぼんやりと脳裏に浮かぶ。
誰かに笑われた記憶。
信じていた誰かの背中。
火に焼かれるような、痛み。
全部は思い出せない。でも、何かを掴むには、ここじゃもう足りない。
「行くか……“死霊の寝床”へ」
――って、え? なんで俺、その名前を知ってる?
誰かに聞いたわけでもない。地図を見たわけでもない。
でも、ふとした瞬間に浮かんだんだ。“次に行くべき場所”として。
まるで、知ってて当然だとでも言うように。
……やっぱり、俺……この世界のこと、どこかで知ってた?
いや、そんなはず……でも……
胸の奥に残る、言葉にならない既視感が、どうしても引っかかって離れない。
それは、鬼の巣の外――
人間の世界との境界線を越えた先にある、墓地型のダンジョン。
アンデッドが蔓延るという噂のある、ちょっと不気味なエリアだ。
俺にとっては……むしろ居心地がいいかもしれない。
▼火の玉、旅立つ
その日。
ダンジョン「鬼の巣」に一つの火の玉がふわりと浮かび上がり、出入り口の薄暗いトンネルをすーっと通り抜けていった。
それに気づいたゴブリンが1匹、指をさしてつぶやいた。
「ア……アノ、ホノオ、ヨクミル……ホント、ウザカッタ……」
その隣のホブゴブリンが、うなずきながらぼそり。
「ホント、シツコイヤツ……アイツ、ニガテ……」
小さな火の玉は、それを聞いていたかどうかは分からないが、トンネルの先へと軽やかに進んでいった。
──次なる地味な無双の舞台へ。
つづく
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