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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
踊り子の泉編

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来訪者

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挿絵(By みてみん) 


 躊躇いの沼地を越え、ようやく《誤りの森》の入り口が見えた。


 目の前に広がるのは、濃密な緑に覆われた森。木々はねじれ、葉は湿って重たく、どこか幻想的な雰囲気を漂わせている。


「ついに着いたな……誤りの森」


 俺が呟くと、隣でリーゼロッテが頷く。


「もう日が沈むね。今日は手前でキャンプして、明日の朝から森に入ろうか」


「賛成。さすがにこの森に夜中に入るのはごめんだ」


 俺たちは近くの平地に野営の準備をした。最後の夜だ。ガルデの戦士たち、そして商人のカロンとも、ここでお別れだ。


 焚き火を囲みながら、ベリルが笑いかけてくる。


「まさか、こんな形でまた会えるとはな。旅ってのは面白いもんだ」


「本当。今度また、どこかで鉢合わせる気がするよ」アリアも微笑む。


 バッツが笑いながら言った。


「そのときは今度こそ、一緒に冒険でもしようぜ、鎧のアネさん」


 リーゼロッテがグッと親指を立てる。


「ふふ、それは楽しみだね」


 そして、カロンまでもがしんみりとした表情で口を開いた。


「お前らさ、最初はマジでやべえやつらかと思ってたけど……なんだかんだ、悪くなかったぜ。また、いつかな」


 それぞれの健闘を祈り合い、夜は静かに更けていく。


 皆が寝静まったころ、俺とリーゼロッテは交代で見張りをしていた。眠らない俺たちは、焚き火の近くで座りながら、無言の時間を過ごす。


 ……と、ふと。


「……あれ?」


 気付けば、焚き火の明かりが消えている。

 周囲を見回すが、誰の姿もない。


「おーい、ベリル? アリア……? リーゼロッテ……?」


 返事は、ない。

 辺り一面、真っ暗な闇だけが広がっていた。


 そして、その闇の中──一人の男が、ゆっくりと歩いてくる。


「……誰だ?」


 姿が見えてきた。

 蔦を身体に巻きつけた、ほぼ全裸の美青年だった。

 その美貌は、性別を超えてどこか神秘的で、神々しさすらある……が。


「変態が出たァァァァァ!!」


 思わず叫んだ。


 青年は胸に手を当て、優雅に一礼した。


「ようこそ、旅人よ。僕の名はアフロディオン。美の英雄にして、この《誤りの森》の守護者さ」


 ミュージカル俳優かってくらい、キザで芝居がかった口調。

 だが、どこか威厳のようなものも感じさせる。


「君たちがここに来るのを、ずっと待っていたよ」


「待ってたって……なんでこんな状況に? みんなはどこ行ったんだよ!」


 問い詰める俺に、アフロディオンは微笑んで言った。


「安心して。皆、無事だよ。……まぁ、今はね? ただし、これから先は君の行動次第さ」


「……は?」


「この森の試練を乗り越え、中心にある《踊り子の泉》に辿り着いたとき──僕の加護を授けよう」


 アフロディオンは、ひらりと一回転して指を天に掲げる。


「だが、一つだけ覚えておいて。君は独りで挑戦することになる。森の中のどこを探しても、仲間の姿は見つからないよ。頼れるのは己の力、そして……美しき真実を見抜く審美眼だけさ」


 なんだよその試練、意味が分からない。


「……一人で、森に挑めってのか?」


 アフロディオンはウィンクしてみせた。


「そう、さあ──美と知性と勇気の旅へ、いざ踏み出すんだ、トオル」


「……くそ、なんか調子狂うな……」


 けれど、やるしかない。久しぶりのソロってことか。  俺は拳を握り、森の奥へ進む。


 仲間と再び会える日を信じて。


──つづく──


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