アーレイスの霊廟
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ダンジョンスイーパーが崩れ落ちた奥に、妙に場違いなものがあった。
それは、白と金を基調とした豪華な扉。
重厚な彫刻に、風化ひとつない光沢。瘴気まみれの迷宮に、こんな扉があるなんて。
「……なんか、悪い夢でも見てんのか?」
「夢ならもっとマシな服着せてほしいねぇ。あたし、首ないし」
俺の隣で、リーゼロッテが冗談を言いつつも、目を細めてその扉を見つめていた。
扉には鍵がなかった。
それどころか、俺たちの気配に反応するように、ひとりでにギィィ……と開いていった。
中から流れ出す空気は、妙に澄んでいて――
瘴気も魔力も、まるで感じない。
「……ここ、ダンジョンの一部じゃないよな」
「うん。ここは特別だよ」
そう言って、リーゼロッテは先に足を踏み入れた。
⸻
中は――教会のようだった。
高い天井、整えられた白い石壁、そして……壁一面に広がる巨大なモザイク画。
描かれていたのは、黒い長髪の美女。
そして彼女が纏っていたのは――リーゼロッテと同じ意匠の、白金の騎士鎧だった。
「……なんて言うか、荘厳なところだな……」
「それが、そうでもないんだよね……」
俺の呟きに、リーゼロッテはどこか遠くを見るように応える。
視線の先には、石碑と、白く輝く祭壇。
その上には、リーゼロッテの鎧と揃いの“兜”が静かに置かれていた。
そして石碑には、こんな言葉が刻まれていた。
⸻
「大戦士アーレイス 又の名を 疾風のリーゼロッテ ここに眠る」
⸻
俺はゆっくりと振り返る。
そこには、さっきと変わらず、白と金の鎧を纏った“彼女”がいた。
「これって……」
「そ。バレちゃったね」
リーゼロッテは、照れたように“エヘヘ”と、両手を頬に添えるようなポーズを取った。
いや、首がないからほんとは表情ないんだけど、なんかそう見える。
「ここは私の墓なんだよね。
“大戦士アーレイス”ってのは、生前の活躍から私の死後付けられちゃった厳つい名前」
「リーゼロッテが……大戦士、アーレイス……?」
あまりにも唐突な真実に、頭が回らない。
「でも、じゃあ……なんで? そんなリーゼロッテが、魔物に……?」
「それはね──」
リーゼロッテは、拳をぐっと握った。
「邪悪な存在が、私の墓を荒らしてくれちゃったからだよ」
その声色には、確かな怒りがにじんでいた。
ガシャリ、と拳を打ち鳴らし、戦闘態勢に入る。
「……いるのは分かってるんだよ。さっさと出てきなさい!」
その瞬間、空気が変わった。
祭壇の上の“兜”から、黒く濃密な瘴気が溢れ出す。
ぐらり、と視界が歪む。
その瘴気は、今までのどの魔物とも桁違い。呼吸すら苦しいほどだった。
「ふあぁ〜……やっと来たかぁ、鎧ぃ〜……」
粘ついた声が、霊廟の奥から響いた。
それと同時に、瘴気が形を取りはじめる。
「……こいつ、今までと……全然違う」
俺の声が震えていた。
黒い霧の中から、それは、ゆっくりと姿を現した――
──つづく──
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