囁きの森、決着。
今回ちょっと長いかも・・・
矢が──飛んだ。
一閃。
フォレストウルフの一体が、胸を射抜かれて倒れた。
(うそ、だろ……?)
木々の合間から姿を現した弓使いの傭兵。
弦を引く音すら聞こえなかった。
それほどまでに、正確で、静かな殺意だった。
斧使いの男も並ぶように前に出てくる。
その巨体からは想像もつかないほど素早い。
残る二体のフォレストウルフが唸り声を上げて弓使いへと飛びかかろうとした。
だが、斧使いが真正面から立ちふさがる。
(このままだと、ジリ貧……!)
俺のMPも、少しずつ減ってる。
なら──仕掛けるしかない!
俺は一瞬の隙を突き、《影移動》を発動。
視界が闇に包まれ──次に現れたのは、弓使いの背後。
(あとは、撹乱だ──!)
瘴気の霧の中、俺はわざと小さく動いたり気配を見せたりして、弓使いの注意を引く。
それが功を奏した。
「っち、なんだ!? どこから──っ」
錯乱した弓使いが放った矢。
それは──横にいた斧使いの肩に突き刺さった。
「がっ……! てめぇ……どこ撃ってやがる!」
怒号と共に動きが乱れた。
その瞬間を、フォレストウルフたちが見逃すはずがない。
俺も、続いた。
「──祟り、発動!」
じわじわと、体力と精神を削る。
弓使いは悲鳴を上げ、体をよじらせるが、フォレストウルフの鋭い牙と爪が、それを容赦なく切り裂く。
弓使い──沈黙。
だが、戦いは終わっていなかった。
傭兵二人とフォレストウルフたち、俺。
全員が一箇所に固まりすぎていた。
その様子を、ダントンが見逃すはずもなかった。
「まとめて消し飛べ! 瘴気放射ァ!!」
瘴気の錫杖が地面に突き立てられ、紫の霧が爆発するように広がった。
射線上には、斧使いの姿。
「当たるぞ、避けろ!」
叫びが響いた、その瞬間──
マタンゴが、ノソノソと駆けつけた。
瘴気の圧にびびったのか、全身をぷるぷると震わせ──
「ぷしゅぅぅぅう!!」
しびれガス、大・放・出。
「うおっ!? おい、何だ今の──ぐあっ……」
斧使いがふらつき、フォレストウルフも足を取られる。
そして、紫の霧に包まれ──
斧使い、フォレストウルフ、崩れ落ちる。
……沈黙。
俺以外、全滅。
「おいおいおいおい!! 何やってくれてんだマタンゴォ!!」
ツッコミは誰にも届かない。
──だが、戦いはまだ終わっていない。
俺はすでに瘴気を避け《影移動》していた。
ダントンの背後へと移動する。
こうして、森の静寂の中。
俺とダントン──二人だけが残された。
「残ったか……ふん。雑草どもは焼けたが、貴様だけはしぶといな、ゴースト」
ダントンが杖を構える。
俺も浮遊しながらにらみ返す。
(なら、一騎打ちだ……!)
「《祟り》──!」
――――――――――
【MP:38 → 36】
――――――――――
黒い霧がまとわりつき、ダントンの呼吸が乱れる。
ダントンは杖を掲げたまま、紫の煙を噴出する。
「瘴気よ、腐らせよ……」
二人が、互いにダメージを重ねる。
が──
(……くっ、俺の方が削れるの早い……!)
明らかに差がある。耐久でも、威力でも、向こうが上。
(……なら、追加ダメージだ!)
「《鬼火ハンド》!」
――――――――――
【MP:36 → 32】
――――――――――
燃える手が現れ、ダントンに触れようとする。
しかし──
「……ふん。ワシは呪術師、魔法耐性が高いでのう」
バチッ、と火がはじけて消えた。
「消えろ、目障りな化け物め!」
ダントンが杖を振り下ろそうとした、その瞬間。
俺は、ニヤリと笑う。
「──魔法耐性が高い奴は、こっちにもいるぜ」
「……なっ──」
マタンゴが、ノソノソと現れた。
「ぷしゅぅぅぅぅぅ!!」
マタンゴが毒を吹きかける。
今度はダントンの顔面に直撃。
瘴気は、あの杖から出る魔法属性の攻撃。
そしてマタンゴは──《鬼火》すら通じなかった、筋金入りの魔法耐性持ち。
「削りが足りない時は、もう一丁削りを追加する。元気なゴブロに学んだことさ!まぁ、幽霊の俺の声なんておっさんには届いてないだろうけどな。」
ダントンが悲鳴を上げる。
「おのれぇぇぇぇぇぇっ!!」
血を吐き、崩れ落ちる──
削り合いの勝負。
最後に立っていたのは、俺と──
ボヨボヨと揺れる、マタンゴだった。
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