火の玉だけど、策はある。
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ゴブリンメイジ。
それは、このしょぼダンジョン「鬼の巣」における唯一の“魔法使い”にして――
今の俺にとっては、最大最悪の天敵だった。
魔法。
それは俺の《物理無効》をすり抜ける唯一の攻撃手段。
つまり、火の玉である今の俺にとって、ゴブリンメイジの魔法は――即死級の脅威なのだ。
あのフードをかぶった、妙にヒョロい個体。
見た目はしょぼくて、他のゴブリンと大して変わらない。
けれど、手にした骨のような杖と、杖の先から発された紫の閃光は――まぎれもなく“本物”だった。
(……魔法を連発してたけど、やっぱり詠唱のあとに隙ができるな)
観察してわかったことがいくつかある。
•魔法は強力だが、連発できる回数には限りがある
•詠唱中は集中していて、周囲が見えていない
•魔法を撃つと、微かに“魔素”が空間に漂う(つまりMP消費)
(……つまり、あいつのMPを削れれば、俺にも勝ち目がある)
でも、直接挑発して撃たせるなんて真似は、さすがに自殺行為だ。
ヒットアンドアウェイとか、浮遊速度が“遅”の俺には無理。
だから俺は考えた。
もっとずっと安全で、確実な方法――
他人を利用する。
▼作戦名:他力本願魔力枯渇誘導作戦
俺が狙ったのは、“ゴブリンメイジの魔法ヘイト管理”。
要するに――他のモンスターをゴブリンメイジのところに誘導して、
そいつらに魔法を撃たせるという、超セコい間接攻撃戦法だ。
もちろん、成功率は低いし、うまく立ち回らないと俺も巻き込まれる。
でも、これしかない。
(まずは……ターゲット集め)
壁の中をふよふよと移動しながら、ゴブリンの単体、レッサーウルフの巡回コースをチェック。
行動範囲を見極め、できるだけ“複数の魔物”が一堂に会するポイントを探す。
数時間の観察ののち、俺はひとつの作戦区域を選定した。
広めのホール状になったエリア。
ゴブリン数体、レッサーウルフ1体が滞在している。
そしてそこに、俺は――火の玉で接触した。
ぺちっ。
「ギャア! アチッ!」
はい一匹釣れました。
すかさず壁の中に逃げ、今度は別のやつの足元にチリッ。
「ガウッ!」
はいもう一匹。
続けて、チマチマ、火傷レベルの接触を繰り返し――ついに、
「ギギャアアァァァ!!」
敵、ブチギレる。
あらゆる方向に暴走した結果、**俺の逃げた方向(=ゴブリンメイジのエリア)**へ。
俺は壁の中で先回りし、誘導通路に“火の先端”をチラチラと出しながらあおり続けた。
完全に俺を敵認定したモンスターたちが、俺の残り香(魔素の痕跡)を追い、ゴブリンメイジの棲む通路へ殺到。
そして――
「ギギギャッ!? ギャアアァ!!」
ゴブリンメイジ、警戒。杖を構える。
「ギジジッ!! ギャオオ!」
レッサーウルフ、突撃。ゴブリン、巻き添え。大混戦。
魔法が発動。空気が焦げ、火花が散る。
「ビギャアアアアア!!」
敵も味方も関係なし。敵意を感じた相手に、ゴブリンメイジは片っ端から魔法を連発。
俺は壁の中から、そのすべてを“隠れて”見ていた。
魔力が放たれるたび、空気中に残る魔素の余波。
それが、だんだんと弱く、薄く、乱れていく。
(……MP、減ってる)
わかる。感覚的に、はっきりと。
魔力の波が細くなってきている。
やがて――
「ギ、ギ……」
詠唱が止まる。杖が震える。
もう魔法が、撃てない。
そして俺は、静かに壁の中から近づいて――
チリッ。
先端だけを出して、ぺちっ。
「ギャアッ!?」
反応はあるが、もう攻撃はしてこない。
杖を振り回すが、空振り。詠唱を試みても、魔素が集まらない。
完全にMP切れだ。
それに加え、さっきの乱戦で――
ゴブリンメイジはすでにいくつもの裂傷と打撲を負っていた。
呼吸は荒く、片足を引きずり、杖を杖としてしか使えないただの個体。
あとは俺のターンだ。
《鬼火》は、相変わらず火力はない。
ただし、当て続ければ確実に“焼けていく”。
俺は壁の中から、ひたすらじわじわと火の先端を近づけては当て、また引っ込める。
そして、また当てて、離れ、待つ。
その作業を、俺は半日かけて繰り返した。
合計で300回は火の先をチリッと当てたかもしれない。
途中、ゴブリンメイジが気を失ったり、のたうったり、死んだかと思えば呻き出したりして、何度もフェイントを食らった。
だが――
最後の一撃を当てた瞬間、ゴブリンメイジの体がバサリと崩れた。
こんがり焼けたローブの端から、黒い煙が上がっていた。
(…………やった)
まるで、蝿すら寄ってこない“終わった命”だった。
俺は、進化もせず、魔法も持たず、
“火の玉”のままで、このダンジョン最強格のモンスターを倒した。
それはきっと、経験値以上の成果だった。
この火は、確かに小さいけれど、
どこまでも――消えずに、生きている。
⸻
つづく
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