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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
囁きの森編

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囁きと獣

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挿絵(By みてみん)


──森は、静かだった。


だがその静けさは、単なる音の無さとは違った。何かが、耳元で囁くような……そんな圧迫感のある沈黙。


「……“囁きの森”って名前、伊達じゃないな」


東の森をさらに進んでいたトオルは、ふと立ち止まり、周囲を見渡した。

木々の幹はどれもねじれ、霧がかすかに揺れている。

その時、風に混じって、かすかな“声”のようなものが聞こえた気がした。


──まもなく。


「……ん? 気のせいか?」


頭をふる。囁きの森に入ってから、何度も似たような“気のせい”に襲われている。

もちろん、敵意のある魔物の気配を感じたときとは違う。もっとこう……深く、どこか冷たい。


「……まあ、行ってみるしかないな」


トオルはふよふよと浮き直し、再び薄暗い道を進んだ。



ザッ──ザザッ。


草を踏みしめる音。

振り向くと、濃い緑色の毛並みがぬっと現れた。


「来たな……フォレストウルフ」


レッサーウルフよりも頭ひとつ大きい。目が鋭く、牙は太く、しっぽを大きく揺らして威嚇している。

その後ろから、もう二体。計三匹の群れでこちらを囲むようにしてきた。


「観察、っと……」


――――――――――

【名前】フォレストウルフ

【種族】獣系魔物

【レベル】6

【HP】28/28

【スキル】威嚇咆哮Lv2

――――――――――


「お、来た来た。《祟り》の実験にはちょうどいい」


トオルはそっと接近する。霊体の特性を活かし、音を立てずにじわじわと距離を詰める。


──発動。《祟り》。


じわり、と一体のフォレストウルフが動きを鈍らせた。

耳を伏せ、牙を食いしばり、唸り声をあげる。確かにダメージが通っているようだ。


「ふむ。やっぱ祟りは“意識のある生物”に対してよく効くな」


しかし、そのとき──


「グルルルル……ッ!」


別の一体が《威嚇咆哮》を放った。

空気が震え、視界がにじむ。


トオルの身体に一瞬、びりっとした違和感が走った。


《状態異常:鈍足》


「うおっ、まじか……! 威嚇系のデバフ、霊体でも効くのかよ……!」


急に移動速度が落ち、浮遊の軌道も重くなる。


「まずいな、祟りだけじゃ間に合わん。だったら──」


黒い球体を手から放る。


「《ダークボール》、設置!」


一体が突っ込んできた瞬間、ダークボールが炸裂。フォレストウルフが吹き飛ばされ、木に激突した。


【ダメージ:10】


「よし、まだ来るなら──もう一発だ!」


連続で設置し、祟りと組み合わせて体力を削る。


数分後、三体すべてのフォレストウルフが倒れ伏し、トオルの周囲には煙と息遣いだけが残った。


「……ふう。久々に動いたわ」


手を見る。鬼火の炎がゆらゆらと揺れている。


「祟りとダークボールの組み合わせ、やっぱ強いな……けど、威嚇系のデバフは無視できない。気を付けよう」



その後、トオルは森の東端近くまで探索し、小さな小川を発見した。

水は濁っており、腐葉土の匂いが強い。どうやら“静かの源泉”とは別物のようだ。


「東の森はこのくらいか……次は、西の森、だな」


そう呟いたとき、どこからともなく、またあの“囁き”が聞こえた。


──西の奥で、待っている。


「……今のは……幻聴、じゃないよな」


トオルは静かに身を翻し、東の森を後にした。


霧の濃さが、すこしだけ深まっていた。


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