天敵との遭遇
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三日三晩に及ぶ“チクチク火傷作戦”で、ゴブリン一匹をようやく倒した俺は、今――天井の岩に頭をぶつけていた。
いや、正確にはぶつかってはいない。火の玉である俺は《物理無効》の効果で、地形や物体をすり抜けることができる。
それなのに、あえて“ぶつかるフリ”をしていた。
つまり、それほどに鬱憤がたまっていた。
(やばい。しんどい。なんだこの生活……!)
壁に潜り、先端だけ出して、火のチリチリ部分でゴブリンを焼き続ける。
三日三晩、ずっと、ただそれだけ。
もう少しこう……爽快なレベルアップとか、派手なスキル発動とか、**「成長してる感」**ってやつがほしいんだけど!
でも、現実はちがった。
鬼火は微弱、スキルは増えない、経験値は雀の涙、浮遊速度はのろのろ。
今日も今日とて、壁に潜って偵察して、火の先っぽだけを出してチマチマする毎日。
(もう少し強い敵に挑まないと、経験値も稼げない……)
そう思っていた矢先だった。
奥の通路から、ゴブリンたちのざわめきが聞こえてきた。
何かが近づいてくる気配。しかも、ちょっと今までと違う。
ぬるりとした気配でも、ゴブリン特有の下卑た匂いでもない。
足音。コツン、コツン、と軽く響く、爪の音。
暗闇の奥から姿を現したのは――
レッサーウルフ。
灰色の毛皮に身を包んだ、小型の狼型モンスター。
体格はゴブリンよりやや大きく、動きも速い。
このダンジョンでは“レアエネミー”扱いされており、出現率は低いが、報酬は高め。
(来た……!)
確かにゴブリンより強い。だが、それでも所詮は“レッサー”。
体感レベルでいえば、スライムのちょっと上くらいだ。
だが、問題はそこじゃなかった。
狼には――嗅覚がある。
火の玉の俺には“匂い”という概念がないと思っていた。
だが、どうやら《鬼火》の熱には、微細な“魔素のにおい”があるらしい。
それを、レッサーウルフが察知した。
「……!」
鼻をひくつかせ、まっすぐ俺の方向を見る。
しまった、潜るのが遅れた!
火の先端を引っ込め、全身を壁の中へと退避させる――
――ズドン!!
「うおっ!?(喋れないけど)」
壁の中を思いきり噛み砕くように、牙が突き刺さった。
もちろん、俺の体には当たらない。物理無効だ。
でも、怖い!!!!
(ダメだ、こいつ速いし、頭いい……!)
一度引っ込んだ場所の近くを重点的に狙ってきてる。
その場から離れようにも、俺の浮遊速度では撒けない。
完全に“マーク”された状態だった。
数分後――
俺は通路の先、横穴に繋がる岩の中へ逃げ込んでいた。
レッサーウルフは入口で待機。今にも中へ飛び込んできそうな雰囲気を醸し出している。
こっちは完全に袋の鼠。火の玉だけど。
(……どうする?)
真正面から当て続けても、ゴブリンより体力がある分、何日かかるか分からない。
でも、この狭い通路の地形――使える。
俺は岩壁の中をゆっくりと移動しながら、火の先端を地面に“チョン、チョン”と当てた。
そう、《鬼火》はろうそくのように“触れたものの表面温度を上げる”性質がある。
木や草ではなくても、岩肌の一部が熱を帯び、ジワジワと炙られていく。
(……やるしかない。ちょっとはゲーム知識、活かしてやる)
俺が作ったのは――熱罠。
火の玉で炙った岩のひびに、地面の泥がじわじわ染み込む。
泥が熱され、気泡が立ち、細かく“熱だまり”になる。見た目には分からないが、そこを踏めば――
「ガウッ!!?」
レッサーウルフが踏み抜いた。
次の瞬間、熱に驚いて飛び退き、通路を転がるように逃げていった。
(やった……!)
戦闘不能にはできなかったけど、退けた!
これなら――時間をかければ、倒せる!
喜びかけたその瞬間。
通路の奥、逃げたレッサーウルフの進行方向に、見慣れない“何か”が立っていた。
背は低い。だが、ゴブリンとは違う、異質な空気をまとっている。
手には杖のような骨、頭には奇妙な冠、背中には本のような石板。
ゴブリンメイジ。
このダンジョンにおける、唯一の“魔法職持ちモンスター”。
他のゴブリンとは違い、知性と魔力を持ち、物理無効の俺にダメージを通せる唯一の存在。
(やばい……!)
俺のことに気づいた様子はない。レッサーウルフを見て、呪文を詠唱している。
一歩間違えば、俺は一撃で昇天する。
(逃げよう……! 今はとにかく離れるしかない!)
火の玉のまま、壁の中を這うように、通路の逆方向へ全速力で退避。
ふよふよだけど本気で急いだ。
後ろでは、レッサーウルフの断末魔が響いた。
魔法の閃光と焦げる臭い――嗅覚はないけど、感じ取れる。
(あれが、このダンジョンの……天敵)
ゴブリンメイジ。
魔法を持つ存在。
物理無効だけでは、絶対に勝てない相手。
壁の中で息を潜めながら、俺は改めて思い知らされた。
この世界は、どれだけ慎重でも、いつ死ぬか分からない。
そして俺は――今のところ、まだ「ろうそくの火」より弱い存在だ。
でも、消えない火だってある。
壁の中、誰にも見られない場所で、火の玉はふっと、意志のように揺れた。
⸻
つづく
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