泣く幽霊
今回の挿し絵はちょっと悪意のある感じで入れてます。
気の迷いです。
ちょっとそういうの苦手な人だと怖いかも…ごめんね!
ダンジョン《死霊の寝床》──その最下層。
重たい霧が漂う静寂の空間を、俺はふよふよと浮遊して進んでいた。
「……なんか、空気がちょっと違うな……」
壁は中層よりも荒れていて、地面には無数の足跡と焼け焦げた痕跡が点在している。
スケルトンの骨、崩れた墓標……それらが無言で語ってくる。このフロアは、今までとは別格だ。
そして、最奥。
石造りの回廊の先に、一際広い空間があった。そこに、いた。
──ぽつん、と。
古びた石壇の上に、背を丸めて座り、両手で顔を覆って泣き続けている“人間の幽霊”。
真っ白なシャツ、くたびれた茶色のズボン。
痩せ細ったその姿は、異様なほどに生々しかった。
「……あれが……ユニーク個体、か……?」
俺は慎重に距離を取りながら《観察》スキルを発動する。
⸻
【観察】スキル発動
名前:悲しむジェンキンス
レベル:???
HP:???
スキル:???
⸻
「……やっぱり、名前は分かるんだな。悲しむ……ジェンキンス」
それは確かに、“名のある存在”。
なのに、彼はただ、泣いていた。
(敵意は……感じない。でも、あれがこのフロアのボスであることは間違いない)
俺は迷いながらも、ゆっくりと円を描くように移動し、その姿を観察し続けた。
──そのときだった。
「う……う、ぅ……!」
ジェンキンスがぴくりと肩を揺らす。
手をどけ、顔を上げる──その瞬間、世界が震えた。
「────ッ!」
空気が凍る。重い、見えない圧が襲いかかってくる。
咆哮。
だがそれは叫びではなく、**“悲鳴にも似た慟哭”**だった。
次の瞬間、彼の口から放たれた“霊気の衝撃波”が、扇状に広がった。
「っ、あぶねっ!」
反射的に浮遊しながら横に回避。
幸い、範囲の外だったため直撃は避けられた。
「……っ、なに今の……攻撃……?」
範囲型の咆哮攻撃──あれに巻き込まれてたら、即死だったかもしれない。
俺のHPは10しかない。観察でも確認済みの事実だ。
「今のままじゃ、戦うのは無理だ……あの範囲、避ける術がねぇ」
ダークボールは遅すぎて届かない。祟りも、ここまでのアンデッドには通じてこなかった。
(あれが本気じゃないとしたら……今ここでやりあったら、終わる)
それでも──
「……また来るさ。メソメソするなよ、少年……」
その言葉が、頭の中でリフレインした。
(……なんで、そんな言葉が……)
初めて見るはずのジェンキンス。なのに、なぜか既視感のような何かが、心をざわつかせる。
「……来るなら、準備してからにするさ。今は、まだ……」
俺は静かにその場を後にした。
もう一度、挑むその時まで──
ブックマーク、レビューとかしていただけるとやる気に繋がります!本当にお願いします!やる気にね、繋がるんですよ!やる気はやっぱね、出たほうがいいですからね!ぜひね!お願いしますね!!