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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
狂乱の酒宴編

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気配

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・応援・感想、全部作者の栄養になっています。よろしければぽちっとしていただけると泣いて喜びます。それではお楽しみください!


棍棒が、顔面に迫っていた。

《霊体化》。

風切り音だけが耳を掠めて、棍棒は俺の頭をすり抜けた。コボルトが勢い余って前のめりになる。その後頭部に、ダークボールを叩き込んだ。

───────────────────

【スキル発動:《ダークボール(Lv7)》】

【MP:117 → 114】

───────────────────

どさり、と倒れる。

《実体化》。着地した足の裏に、苔の湿った感触がある。

「まだいるぞ!」

リーゼロッテの声が飛んだ。

茂みが、左右から同時に割れた。四体。いや、五体。錆びた短剣、骨で作ったような棍棒、中には槍を持った個体まで混じっている。バラバラに吠えながら、こちらへ向かってくる。

(統率が取れてない……でも、数がある)

リーゼロッテが正面から二体を迎え撃つ。鎧の拳がコボルトの胴体に炸裂して、一体が木の幹に叩きつけられた。もう一体が短剣を振るう——リーゼロッテがそれを腕で受けて、そのまま地面に叩き落とす。

ニッグが右の二体へ向かった。剣を抜く。ぎしぎしとした普段の動きが、刃が鞘を離れた瞬間に消えた。流れるような一閃が、二体をまとめて薙いだ。

残りの一体が、ニッグの背後へ回り込もうとしていた。

(死角だ)

俺は右手を構えた。狙いを定める。コボルトは速い。動いている相手の急所を——

(喉)

───────────────────

【スキル発動:《マジックアロー》】

【MP:114 → 108】

───────────────────

青白い矢が指先から飛んだ。ダークボールとは比べ物にならない速さだった。矢はニッグの肩口をすり抜けて、コボルトの喉を正確に貫いた。

コボルトが声も出さずに倒れる。

ニッグが振り返った。地面のコボルトを見て、それから俺を見た。

「……ナイスタイミングだろ」

ニッグは何も言わなかった。ただ前を向いて、剣を構え直した。

───────────────────

【執念深きトオル】

Lv:20

HP:60/60

MP:108/120

───────────────────

静寂が戻った。

木々の合間に、獣の死臭が漂う。俺は周囲を見渡しながら、息を整えた。

「……これで何体目だ」

「十四」

リーゼロッテが短く答えた。鎧の表面に引っかき傷がついている。

「にしても、おかしくないか」

「何が」

「コボルトって、もっとこそこそ逃げるだろ。こんなに正面から突っ込んでくるか?」

リーゼロッテが鎧の肩をわずかに動かした。

「……言われてみれば」

俺は倒れたコボルトを見た。

死に際まで、吠えていた。こちらを警戒しているというより——何かから必死に逃げようとしているような、そんな目をしていた気がした。

(追い立てられてる?)

「この森、何かいるな」

「いるね」

リーゼロッテが静かに言った。

「コボルトが逃げ出すくらいの何かが、奥にいる」

ニッグが、森の奥を見た。濁った眼が、じっと闇の方向を向いている。

風が吹いた。木々が揺れる。葉の擦れる音に混じって、遠くから何かの気配がする。獣の唸り声ではない。もっと、重い。

俺は《鑑定》を走らせた。

何も引っかからない。遠すぎる。

(……でも、確かにいる)

「急ごう」

リーゼロッテが先頭に立った。

「狂乱の酒宴は、この森を抜けた先か?」

「たぶんね」

「たぶん、って」

「地図だとそうなってる。でも、この森が普通の森かどうかは……」

リーゼロッテが足を止めずに続けた。

「着いてみないと分からない」

俺は木々を見上げた。

空が見えない。昼間なのに、光が届かない。苔の張りついた幹が、どこまでも続いている。

(嫌な森だ)

「ニッグ、腕は大丈夫か」

ニッグが両腕をぱたぱたと動かして確認する。

「ニ……グ」

「そうか」

三人で、また歩き出した。

足元の苔が、ぐちゃりと音を立てる。

遠くで、また何かが動いた気がした。


──つづく──

最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やコメントをいただけると、続きを書く力になります。ブックマーク・応援もとても励みになっていますので、よろしければぜひ。また次回お会いしましょう!

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