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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
詩人の湖畔・狩人の水面編

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詩人の湖畔

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5層への階段を下りた瞬間、息が止まった。

広い。

広い、という言葉では足りなかった。

天井がない。空がある。本物の空ではないとわかっていても、そう見えた。どこまでも高く、青く、澄んでいる。その中央に、巨大な天球が浮いていた。レールのようなものが走っていて、太陽と月のシンボルがゆっくりと動いている。

足元には、湖があった。

鏡のように静かな水面が、天球の光を映して揺れている。水の色は透き通った青で、底まで見えそうなくらい綺麗だった。

湖の縁には、木々が並んでいた。白い花、黄金色の実、深い緑の葉。異様なほど鮮やかで、異様なほど美しい。

「……すげえ」

思わず呟いた。

「うん」

リーゼロッテも、珍しく言葉を失っていた。

ニッグは無言だったが、立ち止まっていた。それだけで十分だった。

───────────────────

視線を動かすと、湖畔の縁に、それはいた。

巨大だった。

骸骨の馬に、全身鎧を纏った骸骨の騎士が跨っていた。馬も騎士も、白骨が剥き出しのまま。それでいて、異様な威圧感があった。微動だにせず、湖を守るように佇んでいる。生きているのか死んでいるのかもわからない。ただそこにいる、という圧だけがあった。

「……あれが番人か」

「触らない方がいいね、今は」

リーゼロッテが静かに言った。

木陰に、人の気配があった。

笑い声が聞こえてくる。賑やかで、明るい声だった。

近づいていくと、女がいた。

美しかった。眩しいくらいに。長い金色の髪、白い肌、ゆったりとした薄布の衣。木陰に腰を下ろして、周りを美男美女に囲まれながら、果物を口に運んでいた。さながらパーティーの主役のような佇まいだった。

「あら」

近づいた俺たちに気づいて、女が顔を上げた。

目が合った瞬間、満開の花が咲くような笑顔になった。

「お客さん! 久しぶり! ねえみんな、お客さんよ!」

周りの美男美女がわっと沸いた。歓声が木陰に広がる。

(なんだこれは)

俺は少し圧倒されながら、一歩前に出た。

「……アポーニア、か」

「そう! 正解!」

アポーニアが立ち上がった。すらりと背が高い。笑顔のまま、こちらをじろじろと見た。

「えっと……幽霊、デュラハン、ゾンビ。変わった三人組ねえ」

「まあ、そうだな」

「面白い! 気に入った! で、何しに来たの?」

「試練を受けに来た。この先に進みたい」

「あー、そっちね」

アポーニアがぽんと手を叩いた。

「じゃあ簡単。アルタスを連れてきて。それだけ」

「アルタスは……どこにいる」

「さあ?」

「さあ、って」

「知らない。でもまあ——」

アポーニアが空を見上げた。

天球のレールの上で、太陽のシンボルがゆっくりと動いていた。地平線に、差し掛かっていた。

「今からわかると思うわよ」

その言葉と同時に、太陽のシンボルが——沈んだ。

ゴゴゴゴ、という音が、地の底から響いた。

光が、消えていく。

あっという間だった。天球の光が落ちて、周りが暗くなる。木々の輪郭が溶けていく。アポーニアの周りにいた美男美女も、光の中にかき消えていった。

アポーニア自身も——気づいたら、いなかった。

シン、と静まり返った。

暗闇の中で、俺たちは立っていた。

それから。

ポウ、と頭上に光が滲んだ。

月のシンボルだった。冷たくて、静かな光が、湖畔をゆっくりと照らしていく。

対岸が、見えてきた。

大きな岩があった。月明かりに照らされた、白い岩。

その岩の上に——人が座っていた。

静かに、弓矢を携えて。

月光の中で、その輪郭がゆっくりと浮かび上がってくる。

美しい顔立ちの、男だった。

「……あれが」

俺は息を飲んだ。

隣でリーゼロッテが、静かに言った。

「アルタスね」

──つづく──

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