外の世界
ブックマーク、レビューとかしていただけるとやる気に繋がります!本当にお願いします!やる気にね、繋がるんですよ!やる気はやっぱね、出たほうがいいですからね!ぜひね!お願いしますね!!
ダンジョン《鬼の巣》の入口から、ひょこりと顔を出すようにして、俺は外の世界へと踏み出した。
いや、“顔”という概念は今の俺には存在しないんだけども——それは置いといて。
「……まぶしッ!?」
空、青い。
風、強い。
地面、乾いてる。
全体的に、情報量が多すぎる。
ここは、どうやら広大な荒野の一角らしい。地平線まで低木が生い茂り、その合間に巨岩や倒木が点在している。遠くには山のような影も見えるが、あまりに遠すぎて今の俺には関係ない。
「……ついに外の世界か。ま、俺くらいになると、そろそろ“火の玉”の殻を破る頃合いだよな」
などと虚勢を吐いていたのも束の間。
——ギャアアア!!
「!? なんの音っ——うわッ、でかッ!?」
眼前を飛び抜けていったのは、でかいハチだ。いや、ハチというより鎌を構えた空飛ぶモンスター。
名札を観察する余裕もなく、俺は全力で逃げた。木の陰に隠れ、葉っぱを盾にして震える火の玉。地味に苦行。
「……こ、これは“まだ”出てくるべき世界じゃなかったやつでは?」
ゴブリンの投石にビビっていた頃の俺が、急に懐かしくなる。
◇ ◇ ◇
翌日。
多少落ち着いた場所でふよふよと移動していた俺は、ついに人間と遭遇する。
岩陰から現れたのは、鉄くずみたいな装備をまとった若い冒険者の男だった。
こちらに気づいた彼は、眉をひそめながら足を止める。
「うわ、びっくりした。……ウィルオーザウィスプか。昼間に珍しいな」
「ちょ、ま、待って、違う、俺、ただの通りすがりの火の玉でして」
もちろん声は届かない。幽霊だからな。
彼は剣も抜かずに、鞄から何やら取り出す。小さな袋だ。
「……大して害もないが……塩でも撒いとけ」
——ザシュッ。
彼が軽く塩を投げた瞬間、俺の体のまわりにバチバチッと音を立てる白い閃光が走った。
「え、ちょ、ま、え、まって、まって——あっ、あっ、消える、これ消えるやつ!!」
体の輪郭がぼやけていく。
マジで今、人生(死後)最大の危機。
ただの塩で半霊体崩壊しかけるとか、どんだけデリケートなんだ俺。
その瞬間、目の前にステータスウィンドウが自動展開された。
⸻
【名前】しつこいトオル(ウィル・オー・ザ・ウィスプ)
【種族】霊体系モンスター
【レベル】7
【HP】3/10 ← ← ← ← ← ←
【状態異常】霊的干渉(弱)
⸻
「やべやべやべ!! 今の俺、魔法攻撃だけじゃなくて塩とかにも弱いってことか!? 物理だけ無効でも意味ねぇッ!!」
冒険者は、あくまで軽く塩を撒いただけで、こちらにはもはや興味をなくした様子で去っていった。
そして俺は、ふらふらとその場を漂いながら思う。
「……これ、全力で逃げた方がいいやつだ」
◇ ◇ ◇
昼下がり、今度は畑のそばをふらふらと移動していたところ、麦わら帽子をかぶったおばあさんと遭遇した。
「あらあらまぁ……憐れな魂が……」
そう言って、両手を合わせて拝むポーズ。
……その瞬間、俺の霊圧がまたしても落ちた。
「うそぉん!? なんで!? なんでお祈りだけでこんな致命傷級なの!? 成仏スイッチ軽すぎない!?」
再びステータスが表示される。
⸻
【HP】1/10
【状態異常】霊的干渉(中)
⸻
「え、これ死ぬの!? いやもう死んでるけど!! 死んでるのに死ぬの!?」
魂がぶれてるのか、画面もふにゃふにゃ揺れて見える。
あかん、本気で“成仏”させられる——ッ!!
必死に意識を集中して、火の玉の輪郭をなんとか保つ。
どうにか自己再構成に成功し、半透明状態からふらふらと離脱に成功。
「……もう、あのおばあちゃんがラスボスでいいよ……」
◇ ◇ ◇
数時間後。
地平線の端、岩場の陰にひっそりと開いたダンジョンの入口を見つけた。
冷たい空気が漂い、草木すら生えないその場所は、不自然なくらい静かだった。
けれど、不思議と懐かしいような気がした。
「……ここなら、誰にも祈られないし、塩も撒かれない……はず……」
入り口の上には、ボロボロの石碑が立っていた。そこには、薄れた魔法文字でこう記されている。
《ダンジョン:死霊の寝床》
「……よし。今日からここが俺の棲み処だ……!」
そう言って俺は、意を決して地下の闇へと身を投じた。
きっと、この先にも恐ろしい敵や理不尽は待っている。
けれど今はそれより、祈りが一番怖い。
—次回、「死霊の寝床」潜入編、開幕。
ブックマーク、レビューとかしていただけるとやる気に繋がります!本当にお願いします!やる気にね、繋がるんですよ!やる気はやっぱね、出たほうがいいですからね!ぜひね!お願いしますね!!