大詰め
シオン達は帝国国内の最後の大掃除をしようと帝国兵を引かせた。
「敵の数はわかる?」
秋桜が答えた。
「はっ!約30人ほどかと」
「まだそこそこいるわね。でもハルとアキ、そして秋桜がいるから大丈夫よね?」
三人は視線を交わすと頷いた。
「秋桜ねぇさんがいるなら百人力です!」
「久しぶりに三人で戦えるのね」
少し年上の秋桜はハル、アキの姉貴分なのだ。怪我で戦闘は避けて諜報活動に勤しんでいた。
しかしすでに怪我も癒えて、戦線復帰と言う訳だ。
「それにゼノンやゼファー伯爵、ブルーネット公爵もいるのよ?主要人が前線にいるせいでエリスも部隊の指揮を頑張っている。負けられないわね!」
集まったメンバーは頷くと屋敷の正面入口に向かった。
「チッ!また誰か来やがったぞっ!!!」
見張の声が聞こえた。
シオンは大きく息をすると大声で言った。声に風魔法を乗せたので遠くまで響いた。
「私はシオン・オリオン!今度、王妃になる者よ!帝国の膿を出すべく、裏稼業の組織を潰して回っていたのは、この私よ!私を殺せるものなら殺してみなさい!」
!?
屋敷にいた裏稼業の者達の殺気が膨れ上がるのがわかった。
「全く、うちの嫁さんは自分を追い込むのが好きだな。だが、それは許さない」
ゼノンはシオンの後に叫んだ。
「聞けっ!オレは帝国の皇帝ゼノンだ!かつての皇帝だった奴らの負の遺産を精算するつもりで、オレが指示を出した!新たな帝国には貴様らは不要だ!さっさと逃げていれば死なずに済んだものを。これより帝国に仇なす者として殲滅する!!!!」
シオンが城門を魔法でぶち破った!
ドーーーーーーーーーン!!!!!!!!
「さて、行きますか!」
シオン達はゆっくりと屋敷の敷地内に入ると、屋敷の前には大きな庭があり入口でメイゲン伯爵が脂汗を掻きながらシオン達を睨みつけていた。
「貴様ら!?こんなことをしてタダですむと思うなよ!ワシには北の国との繋がりがあるのだ!ワシに手を出せば戦争になるぞ!それが嫌ならさっさと皇帝陛下に進言しに戻るがいい!!!!」
あら?
だいぶんお疲れね。今の声が聞こえて無かったのかしら?
視線をゼノンに向けるとゼノンは愉快そうにメイゲン伯爵に言った。
「おいおい、オレの顔を忘れたか?少し前にも街の城壁であったばかりだろう?」
「誰だ!きさ───!?」
!?
メイゲン伯爵はようやくゼノン皇帝に気付いた。目に認識はしていたが、まさか皇帝がこんな前線に出てきているとは思ってもみなかった為、脳が認識しなかったのだ。
「ゼノン皇帝陛下!?」
「メイゲン伯爵、残念だ。もう捕まえる段階は過ぎている。貴様が北の国から、禁制の毒薬を仕入れていたのも調べがついている」
メイゲン伯爵は目を開いて驚いていた。
「ゼノン、禁制の毒薬ってなに?」
「いわゆる媚薬の一種だ。皇帝ともなると、今まで毎日別の妃を抱かないといけなかった。それ故に精力剤が必要だったらしい。だが、メイゲン伯爵が用意した媚薬は中毒性が高く、常用すると思考が麻痺して、常に酩酊しているような状態になり、快楽の事しか考えられなくなる薬だった。歴代の皇帝に飲ませて思考を無くさせ、傀儡にしていたのだ!」
!?
「しかも貴様は各妃にそれを渡して皇帝に服用させた。流石の歴代の皇帝も寵愛の薄い妃の物は口にしなかったが、寵愛をしている妃からの物は口にしていただろう。全ての妃達が裏では手を結んでいた訳だ。そして貴様は政治からは一歩引いたところから、各妃の実家などの弱みを握り、今まで金だけ巻き上げていたのだ!それが歴代のメイゲン伯爵家の裏の顔だ」
「なんておぞましい!」
「今まで最初は聡明な皇帝いたが、帝位について妃を娶るとだんだん政治に無関心になっていたのはそんな理由があったのか………」
ゼノンは腰の剣を抜いて突きつけた。
「潔く腹を切れ!貴様には毒杯など生ぬるい!」
ブルブル震えていたメイゲン伯爵は顔をあげると般若のような恐ろしい顔で言い放った!
「もはやこれまで!出会えい!出会えい!!!!この狼藉者達を斬り捨てろ!!!貴様達も恨みがあるだろう!思い知らすのだ!!!!ここを切り抜けたら北の城門から脱出する!!!!!」
ザザザッッッ!!!!!
隠れていた裏稼業の敵が四方八方から現れた。
「囲まれましたね」
「この程度、問題ない」
「さっきは良いところを見せれなかったから頑張ります!」
シオン達は最後の大掃除に入るのだった。
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