掃討戦
サラグモが南に逃げてから少し経って、配下の部下達は北側に逃げた。
「サラグモ様の覚悟を無駄にしない為にも、必ず生き抜いて脱出するぞ!」
「「おおっ!」」
5人の上忍とも呼べる使い手達は、音もなく駆け出した。まだ空は夕焼けで赤かったが、日は落ちかけていた。森からでると遮蔽物は少なく、見通しは良かったが、所々に木々が生えており隠れる場所はありそうだった。
「このまま闇に紛れて隠れながら逃げれば───」
先頭を走っていた者は何かに気付き立ち止まった。
シュタタタタッ!!!!
足元に手裏剣が刺さった。
「ビンゴね。ハルさんの読み通りだわ。安心して?貴女達の様に毒は塗ってないから」
目の前にはメイド服を着た10人ほどのメイド達が立ち塞がった。
シオンの王妃宮に派遣されている名も無い春夏秋冬の予備軍である。
「諦めさない!あなた達は包囲されている!南に行ったのが囮だと言うことはわかっているのよ!」
!?
「チッ、だが…………」
作戦がバレていても自分たちは生き残るよう指示されているのだ。
常闇の蜘蛛のメンバーは視線をお互いに交互させると、バッと5人が一斉にバラバラに逃げ出した。
それを読んでいたかの様に、春夏秋冬は二人で組を作り追撃した。
『よし、同業者のようだが、二人ほどであれば、サラグモ様の精鋭部隊の我々なら殺れる!』
少し走って各メンバーと距離がでると常闇の蜘蛛のメンバーは急に方向転換をして、追っていたメイドに襲い掛かった。
!?
「くっ!?」
ガギンッ!??
間一髪で大型ナイフで一撃を防いだ。
敵はニヤついた。
一撃で自分の力量の方が上だとわかったからだ。
襲ってくる敵に、メイドは二人で協力してなんとか防ぎながら後退した。
敵が引いたのを見て敵はそのまま走り去っていった。
『クククッ、私の勝ちだ。これで闇に紛れて逃げれば───』
ザンッ!
その常闇のメンバーは首を飛ばされ意識を手放した。
「ふっ、最初に包囲されていると聞いたでしょうに。あの見習い達は時間稼ぎに過ぎなかったのよ?」
戦闘においての会話は相手にプレッシャーを掛けるには最適な手段である。
包囲していると聞いて、ブラフなのか、本当なのか、相手にとってわからない。
本当だと思えば、後方を気にしないといけないので、目の前の敵に集中できない。
ブラフだと思えば、後ろからの援軍に攻撃されて狩られると言う訳である。
首を飛ばされた常闇の蜘蛛は、幸いだったのか、不幸だったのか、【メイド長】に殺された。
メイド長は手際がいいので痛みはほとんど無かっただろう。ハルの指示で一定間隔にメンバーを配置しており、敵を誘い込んだり、待ち伏せしていたメンバーと挟撃できるようになる配置だった。
実力の劣っているメイド達は時間稼ぎをして、一番近い春夏秋冬のメインメンバーが来るのを待っていたのだ。
さらに、戦闘に参加しないメンバーを置いて、狼煙で敵の場所を知らせていた。
「まったくこの程度の敵に遅れを取るなんて、アキにはさらに厳しい訓練をさせないとね」
【バカな子ほど可愛い】と良く言ったもので、アキはメイド長のお気に入りなのだ。
故に厳しくして死なないようにしていた。
まぁ、アキには、たまったものではないだろうが。
バカな子ほど可愛いとは、シオンにも言える事なのだが、それはまた今度紹介したいと思う。
そして、他の逃げた4人もハルを筆頭に狩られて生存者はゼロであった。
しかし、これは襲撃に参加したメンバーであり、サラグモにはジョロウグモから受け渡された、高級遊郭に待機させているサブメンバー約20人は無事である。
───同時刻───
その待機しているサブメンバーの所にジョロウグモの【遣い】がやってきていた。
「サラグモは戻ってくる事はない。早急にここを畳んで北部に逃げるように」
その連絡を受けて待機メンバーは動揺した。
「死にたいならここに残るといい。しかし、我が常闇の蜘蛛は、少数精鋭の組織である。まだ半人前とはいえ、ここにいるメンバーもすでに並の暗殺者より実力は上だ。組織にとっても大切な仲間だと思っている。無事に脱出したあかつきにはジョロウグモ様の部下に加わってもらう」
部屋がザワッとした。
「サラグモに恩を感じているなら死なない事を選んで欲しい。生きて力を蓄えれば、いずれ復讐のチャンスも訪れよう」
その言葉が決めてとなり、待機組は指示通り帝国を脱出するのであった。
『ふふふっ、サラグモはんは【教育】は得意でしたからなぁ~半人前とはいえ、兵隊を丸々頂けたのはようございましたわ~』
ジョロウグモは闇の中で嗤うのだった。
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