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大誤算……

サラグモは折れたアバラを抑えながら隠し通路から逃げていた。


「クソッ!?まさか帝国の騎士団が何百人も捜索に駆り出されるとは……」


人海戦術はバカにできないのだ。

常闇の蜘蛛も少数精鋭部隊のため、数はそんなに多くはないのもあったが、サラグモは帝国軍まで動くとは思っていなかったのだ。

サラグモはジグモやジョロウグモの言葉を思い出していた。


「おっかない王妃が攻めてくると言っていたが、本人ではなく、その後ろ盾の私兵が来るという意味だったのか?」


これは誤解があるが、シオンを慕っている私兵が怒り狂って襲ってきているという点では間違いではない。

折れた骨は一週間ほどでは治らない。包帯でキツく縛ってあるが動くたびに痛みが襲ってきていた。


はぁはぁ、これはヤバいな。いくら帝国兵が雑魚だと言っても、この怪我で数百人規模の包囲を逃げれられる訳がない。

サラグモは今の最善策を考えていた。この隠れ家でしばらく身を潜めるつもりが、早々に帝国軍がやってきて廃村を調べてきたのだ。食料の備蓄は数ヶ月は持つが、怪我を負ったままでは逃げることもできず、少しでも傷を癒す事に専念していた。しかし、一部の秘密の隠し部屋が見つかると、隠し通路から逃げる事を選択したのだった。

孤児だったサラグモは生きる術を教えてくれた組織に忠誠を誓っている。死ぬのも怖くはない。

しかし、自分の配下の者は生きて脱出させたかった。


「お前達、一つ命令する」

「「はっ!」」


訓練されている配下の部下は膝をついて指示を待った。


「俺はこの怪我では逃げられん。俺が囮になる。お前達は逃げろ」


!?


「そんなっ!?」

「わかっているだろう?今は逃げて奴らの情報を持ち帰るのが最重要任務だ」


5人残った配下の者は俯いて続きを待った。


「北部に行けばジグモの配下が脱出ルートを確保している。1人でも多く生き残れ」

「か、かしこまりました!」


サラグモはギリギリまで待って夜になるのを待った。

しかし、夕暮れ近くに隠し通路が見つかり脱出せざる負えない状況になった。


「ついに見つかったか。俺は南に逃げる。後から出て北にいけ!」


サラグモは痛み止めを飲んで、少しは動ける様になっていた。

小さな森にでたサラグモはそのまま黒いフードで顔を隠しながら逃げた。

運よく?小隊に見つかったがすぐに帝国兵を殺すと、馬を奪いそのまま南に逃げた。


少しして笛の音が聞こえてきた。


「仲間が殺された!近くに敵がいるぞ!!!」

「探せ!単独で行動するな!小隊規模で動け!!!!」

「南だ!正体不明の馬が南に走って行ったぞ!」


この知らせに春夏秋冬は、すぐに行動に移した。


「来たよ!敵の大部分は北に逃げる!南に行ったのは、おそらく怪我をして逃げきれないと悟った囮よ!」


手負ならば帝国兵でも大丈夫だろうとハルを筆頭に春夏秋冬のメンバーは北に向かった。

しかし、サラグモは強かった。手負でも並の騎士が向かっても犠牲者が増えるだけだった。

そこで弓に変更し、馬を射止めた。


「敵は強いぞ!弓で遠距離攻撃をしろ!!!!!」


その頃には日も落ちており、松明の明かりだけになっていた。


『はぁはぁ、これは逃げれるか?』


真っ黒なフードを被ったサラグモに、暗くなってからは遠距離の弓矢は狙いがつけれず命中しなかった。

サラグモも僅かな希望を見出した時、それは起こった。


「勇猛なる帝国騎士が情けないぞ!帝都に戻ったら訓練のやり直しだ!!!」


サラグモを中心に周囲が円を描きながら凍った!


「なに!?」


逃げ出そうにも足が凍って動けなくなっていた。


「貴様、常闇の蜘蛛のメンバーだな?」


ゼノン皇帝は余り大きな声では言わないようサラグモに近づきながら言った。


「貴様は何者だっ!」


組織の名前を知る者は限られてくる。サラグモは静かに腕を後ろに隠した。


「おいおい、この氷の魔法をみて気付かないのか?俺の妻が世話になったな。その御礼をさせて貰うぞ」


そこでサラグモは目の前の人物に気付くのだった。


「貴様、皇帝か!?」


サラグモは後ろに隠していた大型のナイフを取り出すと地面に叩きつけ、足の呪縛を破った。


『ヤバい!どうする!?』


皇帝を殺すのは難しくない。だが殺した後は帝国の威信をかけて組織を潰しにくるだろう。

それはサラグモの意図する所ではないので、逃げるしかないのだ。

しかし、サラグモは気づいてなかった。


シオンを狙った時点で帝国は威信を賭けて組織を潰しにきている事に、


『最後まで』気付くことはなかった。


ナイフを地面に叩きつけた所までは良かったが、ゼノン皇帝はサラグモの意識があるままに、全身を氷付かせていた事に、サラグモ自身が気づいていなかったのだ。


気づけば、すでに全身が凍ってオブジェとなっていた。


「宰相閣下の命令は自分がしなくとも皇帝陛下が完遂してしまったな」


宰相から密命を受けていた騎士団長は少しホッとため息を吐くのだった。


「しまった。名前だけでも聞いておくのだったな。末端の兵なのか、幹部クラスなのか確認しておけば良かった」


皇帝は呟くように言うと、後の事を兵士に任せて先に戻るのだった。







最後までお読み頂きありがとうございます!

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